プロジェクトマジック:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) プロジェクトマジック

あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

 
 
★自分の仕事のできなさに衝撃を受ける
僕が社会人として仕事を始めた時の感想は「おいおい、俺ってすげー仕事ができないな」というもの。

僕はプログラマーとしてキャリアを始めた。
プログラミングについては全く未経験だったので、新卒で入った会社で一から教えてもらった。それでも、自分では比較的早く理解できたつもりで、結構自信をもって仕事を始めた訳です。

ところがいざプロジェクトに配属されると、実に低レベルな事ができない。
・敬語が使えない
・人の話を誤解なく聞き取ることができない
・上司に逐一指示されたことができない
・決まった手順をキチンとやる事ができない(客先へのプログラムリリースなど)
・充分考えたつもりなのに、設計は穴だらけ
・もちろん書いたコードはバグだらけ

実際にこんな感じだったので、
「そうか、僕は当たり前のこと、単純な作業をキチンとできないんだ」
という、残念な認識に至るしかなかった。
それは単に慣れていないから仕事ができない、というよりも「根本的に無能・馬鹿」という、ヒドイ自己認識だった。
しょうがない、こっから始めるか、と腹を括ったというか。
 
 
僕は元々とても大雑把な人間なのだが、そのままでは仕事にならない事が分かったので、
・何事もキチンとメモをとる
・何かをやる時には手順書を作る
・何かを考える時には、全て紙に書きだす
などなど、仕事については手堅く手堅く、というスタイルに全面的に切り替えた。
それくらい、「当たり前のことすらできない自分」というのが衝撃だったのだ。
 
 
 
★実は、僕だけじゃない?
そうして半年くらいたち、周りを見回す余裕ができてきた。
すると、お客さんを含めて、僕ほどまどろっこしい手順を踏んでいる人は少ない。「七面倒臭いことしなくても仕事ができるのは羨ましいなぁ」と思っていた。
 
 
だが、もう少し観察を続けると、キチンとした手順を踏んでいない人は、最初の頃の僕がそうであったように、やっぱりくだらないミスが多い。結果として品質が悪く、生産性が低い。
そういう丁寧な仕事をしなくても品質が高い人なんて、ほんの一握りしかいない。

社会人2年生の頃、お客さんに「白川さんは石橋を叩いて渡る主義なんですね」と言われた事がある。僕の両親は生まれた時から僕の性格を知っているから、それを聞いて爆笑していたが、僕だって好きでそんな仕事の仕方をしているんじゃない。
そうしないと仕事が上手くいかないから、仕方なくそうしているんだ。
そんなこと言ってるお客さん、あなただって石橋を叩かずに良く失敗してるじゃないですか・・。
 
 
「ああ、無能なのは僕だけではないんだ。人間、みんなが思っているほど賢くないんだ」
というのが、仕事を初めて2番目にしみじみ思ったことだ。
それからもう17年経つが、僕がモノを考える時の土台にはいつも「人間そんなに賢くない」がある。

一例を挙げよう。
僕は何かを議論したり考える時は必ず、「議題」を最初にノートやホワイトボードに書く。
「今日の会議で何を合意したいのか?」
「いま、お客さんのプロジェクトマネージャーに何を伝えたいのか?」
「A案とB案のメリット/デメリット比較」
など。
特に新入社員に「こういう事について考えてみて」と言っても、大抵は、1番大事な「議題、テーマ」をどこにも書かずに考え始める。そうして、最初のお題からずれた事について語りはじめる事が実に多い。
「自分が何について考えるべきか」を書き留めずに、考えを集中できるほど、たぶん人間は賢くない。
 
 
 
★基本を身につける
「定石」「型」を身につけるというのは、大事なことだ。
それらを身につけずにミスなく仕事が出来るほど、僕らは有能ではないからだ。
こういう事を書くと、自分がおじさんになったなぁという感じがしてアレなのだが、やらないと仕事が上手くいかないのだから仕方がない。

・定石を学び、真似る
・準備に時間をかける
・一つ一つ記録を取る
・理解できているか、お互いに確認する
・なんでもドキュメント化する
といった仕事の基本を身につけること。
まずはそこからだと思ったほうがいい。

正直言って、今の僕は、定石を意図的に破る事を目指している。だからといって、定石が大事ではない、という訳ではない。

前回のブログ記事で書いたような「自分の問いを持ち、答えを模索する」は仕事を自分のものにするためには、本当に大事なことだ。
だが、今日書いた基本が身に付いていないと、そもそも仕事が成り立たない。
スタートラインにつけないのだ。

健闘を祈る。
 
 
SHIRA_cambridge

Special

- PR -
コメント
張彰元 2013/04/11 15:16

はじめまして。まったく同感の至りです。
とくに「確実に聞き取る」ことのできない人が多いように思います。ほめたら逆ギレされた、などという理不尽なことが何回かありました。どこかで単語、文脈を誤解しているのでしょう。
また、二つのことを言ったら、多くの人は聞き漏らします。だから大事なことは一つだけ言うようにしています。
あなたがすばらしいのは、自己を愚かと認識し、改善する能力を立派に発揮していることです。賢い人ほど自分を省みる力を持っていますね。
多くの人は自分は賢いと信じきっています。とくに愚かな人ほどその傾向が強く、だから人に指摘されるのを死ぬほどの侮辱と感じるようです。
以上、自分の愚かさを横において、賛同の気持を申し述べさせていただきました。ありがとうございます。

Ifreeta 2013/04/11 17:09

仕事が、1から始まり10で終わりとする。

順番に1,2,3,4,5,6,7,8,9,10とこなして行く人と中抜きをする人がいます。

10の結果を見たときに評価を行うのですが、出来(その時点の見た目)が同じだとします。

時間を掛けなかった人が一時的には評価されますが、その評価物を修正しようとした場合に評価が分かれることがあります。

掛ける時間と手間は、結構難しいバランスの上に成り立っていると思います。仕事の質にも寄りますので、同じやり方がいつも正しいとはいきませんよね。

ardbeg32 2013/04/12 08:59

問題は、品質の高いホンの一握りの人でもない、さして賢くもない人が、自分は「一生懸命仕事をしてる」から評価されてしかるべきだと思ってること。
一生懸命仕事をするのは当たり前で、むしろ一生懸命にならなくても求められた品質の結果を楽に出してくれたほうが工数的にも嬉しい。
一生懸命は手段であって目的ではないのだ。
そのあたりど勘違いしてる有象無象が、手抜きの結果品質が劣っている状況を指摘されて、ふてくされたり、落ち込んでたこつぼに入って出て来なかったり・・・・

なんのために今この仕事をやってるの?あなたの所属している部署の職務分掌は何?
もしこれが壊れたらどうなるの?きちんと手当できてる?

そういうことを自力の経験でわかる頃には、随分人生無駄にしてるので、叶うことならば先輩が後輩にきちんと伝えてあげられれば。

白川 2013/04/13 15:44

張彰元さん、Ifreetaさん、ardbeg32さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

Ifreetaさんが言うような「中抜きをする」ことを、要領が良くっていいことだと思っていました。
ですが、この記事で書いたように、キャリアの早い段階で気づいて、とてもラッキーでした。(気づかざるをえないほど酷かったので)

ardbeg32さんが書かれている様に、本当は先輩たちが「バカ!中抜きしているせいで品質悪いぞ」とキチンと指摘あげるべきですよね。でも、結構難しいです。要領が良い人を否定するのは。


コメントを投稿する
メールアドレス(必須):
URL:
コメント:
トラックバック

http://app.blogs.itmedia.co.jp/t/trackback/77444/31383733

トラックバック・ポリシー


» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

白川 克

白川 克

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタント
ファシリテーションを使ってプロジェクトを成功させるのが得意。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のコメント
最近のトラックバック
カレンダー
2013年4月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ