中国武術用語の基礎知識


ようこそ、中国武術の世界へ!〜初歩からの中国武術〜

「中国武術、拳法を習いたい!」と思いたっても、初心者や門外漢にはなかなか敷居が高いのが現実。
どんな種類があるのか、どういう系統で成り立っているのか、はたまた漢字名の読み方すら見当がつかない……。
こういった悩みの尽きない方々のために、より中国武術に親しんでいただくための用語集をご用意しました。
これらの基礎知識をひととおり頭に叩き込めば、貴方も立派な中国武術愛好家(別名:うーしゅいすと)の仲間入り。
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思い思いのやり方で、さらなる中国武術の深淵を目指し、納得いくまで邁進してみてください。



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中国武術の種類について 中国武術の重要語句(対語) 中国拳法の門派について 中国武術のキーワード



 中国武術の種類について
  
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 中国武術は、素手で行なう「徒手武術」と武器を持って行なう「器械武術」の二つに 大別することができる。このうち「徒手武術」は拳術、シュアイジャオ、擒拿術(きんだじゅつ)の三つに、そして「器械武術」は長兵、短兵、軟兵、暗器の四つに分けられる。
(*おおまかな分類については、下記の表を参照してください。)



中国武術 徒手武術 拳術
  (北派、南派に分類される)
北派
  (長打、短打に分類される)
長打
短打
南派
  (長橋大馬、短橋狭馬に分類される)
長橋大馬
短橋狭馬
シュアイジャオ
擒拿術(きんだじゅつ)
器械武術 長兵
短兵
軟兵
暗器


徒手武術について
拳術●日本では一般に“拳法”と呼ばれているが、中国では“拳術”、“拳”などと呼ばれている。また、時代や地方によっては、技撃、手搏(しゅばく)、白打(はくだ)、拳勇(けんゆう)、把式(はしき)、功夫(こうふ)、拳頭(けんとう)などと称されている。拳術は拳や足、その他の身体各部を用いて、相手に打撃による攻撃、すなわち突き、打ち、蹴り、当て身などの攻撃を行なうものである。

北派と南派●長江(楊子江)を境として、それより北方の地方、特に黄河流域で行なわれた拳法を北派拳術、長江より南方の珠江流域を中心に行なわれた拳法を南派拳術と呼ぶ。南船北馬という言葉があるように、昔の中国では、北方での交通機関には主に馬が、南方では船が多く用いられていたが、これにより、南派拳術では船上で櫓(ろ)を漕ぐような立ち方が多く、北派拳術では馬に乗ったときの姿勢(馬歩)が基本になっている。また、北派と南派の違いを象徴的に言い表わしたものに“南拳北腿”という言葉がある。これは、北派拳術のほうが、腿法が多く、縦横無尽に動き回って、のびのびと技を用いるのに対し、南派拳術では、両足を踏ん張った姿勢から手技を用いることが多いことからこのようにいわれている。

長打と短打●“長打”とは、遠い距離から、伸びやかな蹴り技や突き技を用いて闘う拳法のことで、長拳、遠攻などともいう。代表的なものに、長拳、査拳、華拳などがある。これに対して“短打”とは、小さく鋭い技を用い、接近戦を得意とする拳法で、肘や肩を用いる技が多いのが特徴。八極拳は代表的な短打拳術である。(*なお、長拳、ここでいうところの長打拳=長拳は、遠い間合いでの戦い得意とする拳法のことを指すが、一般的に長拳という場合には、査拳、砲拳、太祖拳、洪拳、華拳、少林拳などの総称であり、その套路(空手道における型)が長いことから、この名称がついている。また、ひとくちに長打、短打といっても、すべてが長打、あるいは短打のみという拳法はない。短打の型の中にも長打の技法が含まれ、逆に長打にも短打の技が含まれ、それぞれ補い合って、一つの拳法を形づくっている。したがって、この長打、短打の分類は、拳法の套路に含まれているそれぞれの割合できまる。一般には短打と長打を合わせて学ぶものである。)

長橋大馬と短橋狭馬●「長橋大馬」において“橋”は腕のことを指し、“馬”は立ち方のことを指す。したがって、読んで字のごとく腕を長く伸ばしたのびのびとした突きを、歩幅の広い立ち方で行なう拳法で、代表的なものに南派太祖拳がある。そして、「短橋狭馬」とは、歩幅を狭くとって立ち、腕を伸ばし切らない突きを打つ拳法で、代表的なものに、詠春拳(えいしゅんけん)、白鶴拳(はっかくけん)などがある。


シュアイジャオ●角抵(かくてい)、角力(かくりき)、相撲とも呼ばれる、投げ技を主体とした武術。漢民族の手によって生み出された、素早く動き、テクニカルな技を用いて倒す保定シュアイジャオ、満州族の間で開発された、動作が比較的緩慢で技より力を重視する北平シュアイジャオ、その中間の荒々しく剛猛な天津シュアイジャオの三つの流派がある。このうち保定シュアイジャオは河北省の保定、北平シュアイジャオは北京、天津シュアイジャオは天津を中心にそれぞれ行なわれている。


擒拿術(きんだじゅつ)●関節や経穴(急所、ツボ)を攻めるもので、相手の関節をはずしたり、ツボや急所を突いて体を痺れさせたり、気絶させたりするもので、日本の古流柔術の逆手術に似ている。擒拿術は、一般的には拳法の別伝として学ぶもので、程度の差こそあれ各派の拳法の型の中に含まれている。また、棍・刀・槍などの兵器を持っている者に素手で対する“空手奪器”も擒拿術に含まれる。



器械武術について
 中国武術では武器のことを“兵器”、“器械”と呼ぶ。現代の中国の全国的な競技会である「全国武術比賽」の種目分類では、兵器は@短器械、A長器械、B伝統器械の三つに分けられており、短器械は刀術と剣術、長器械は棍術と槍術、伝統器械は単器械、双器械、軟器械の各種目において得点が競われる。このうち単器械とは刀、剣、棍、槍などのひとつの武器を扱うもので、双器械とは双刀や双剣、あるいは刀と九節鞭などのように二つの武器を用いるものである。そして、この伝統器械の部の刀、剣、棍、槍は、伝統的な套路による表演で風格が重んじられるのに対し、短器械の部と長器械の部では、自選の套路によるもので、スポーツ的な難度の高い動作が要求されるという違いがある。

長兵●柄のついた長い兵器。槍、棍、大刀、戟(げき)、矛(ほこ)、鉞(えつ)、机(はつ)、槊(さく)、杵(しょう)などがある。

短兵●片手に持ってあつかう短い兵器。剣、刀、斧、錘(すい)、鞭(べん)、鉤(こう)、輪(りん)など。なお、刀と剣は日本では混同されて使われているが、中国では、片刃で曲線的なものを刀、両刃で直線的なものを剣といい、はっきり区別している。

軟兵●鎖やヒモなどを使って、形が固定していない、折り畳める武器。三節棍、七節鞭、九節鞭、十二節鞭など。

暗器●いわゆる“隠し武器”のことで、日常的な用品にみせかけて、懐などに隠し持っていることが多い。飛金票(ひびょう)、弾弓、飛剣、飛刀、飛針、峨嵋刺(がびし)など。その他、刀や剣などの兵器に補助的に用いるものを“佐助兵器”(さじょへいき)と呼ぶが、これは多くのものが暗器と共通する。




 
中国武術の重要語句(対語)

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●内家拳←→外家拳
 “内家拳”は内功拳、柔拳、軟拳、“外家拳”は剛拳、外功拳ともいわれる。これは内家拳は、力が“内”に秘められている拳法であり、外家拳は、力が“外”に表われている拳法であるということから、このように称せられている。これは、内家拳の拳法、たとえば太極拳を例に挙げればよくわかる。太極拳には「意を用いて力を用いず」という言葉があるように、練習は力を抜いて、ゆっくりとした動作で行なうので、一見したところでは、力の出具合がわからない。しかし、外家拳と称される拳法、例えば少林拳などは、練習するときに激しく動き、突きや蹴りを力を込めて用いるために、一見して、その威力のほどがわかる。また、外家拳の外家は、仏教でいうところの出家のことを指し、内家拳の内家は在家のことであるという説もある。しかし、柔拳の内家拳も、剛拳の外家拳も、どちらも柔・剛の要素を含んでおり、違いは練習の段階上において、どちらを先に習得するかであり、いずれも極めるところは同一である。したがって、拳法を内家拳と外家拳の二つに分類することを否定する研究者も多い。

●武当派←→少林派
 少林派とは、南北の二つの少林寺、つまり嵩山少林寺と福建少林寺(伝説の域を出ないが、福建省にあったといわれる)に源を発する武術のことを指す。北派では、洪拳(こうけん・紅拳)、羅漢拳(らかんけん)、六合拳(ろくごうけん)、太祖拳(たいそけん)、燕青拳(えんせいけん)など。南派では洪家拳(こうかけん)、劉家拳(りゅうかけん)、蔡家拳(さいかけん)、南派太祖拳などがある。これらは、いずれも“剛”の要素が強く、動きが激しく実戦的なのが特徴。
 武当派は、湖北省均県の武当山に源を発する武術のことを指し、剛の少林派に比べて、柔の要素が強い武術である(太極拳、形意拳、八卦掌などが武当派といわれている)。しかし武当派については、確証のある史実が少なく、中国の研究家では、武当山をゆかりの地とすることを否定する人もいる。

●伝統拳←→制定拳
 古くから伝えられている伝統の套路を伝統拳、そして伝統拳を母体として、新たに編纂された套路を制定拳と呼んでいる。また近年、中国では伝統の武術がさまざまな角度から研究され、多くの実績を上げている。また最近の中国における表演賽では、規定の時間内に自由に他派の技法を組み入れることができるので、伝統の套路とは趣きの異なったものも多い。なお「制定拳=表演用の武術」と誤解している人がいるが、これは間違いである。制定拳とは、二十四式、四十八式太極拳、甲之組長拳などのように、伝統の各派の太極拳から国家体育運動委員会などの公的機関により、新たに編纂されたもので、その普及を旨としている。表演武術は、伝統武術(表演用伝統拳)、制定拳ともに、表演会において得点を競うのが目的であるために、高得点が得られる動きを多く取り入れたもの。


中国拳法の門派

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中国の拳法は数が多く、かつては精武体育会、そして太極拳の研究で有名な王新午などが中国全土の拳法を調査した記録があるが、いずれも記載漏れがあったり、門派名と練習型名を混同していたりと、すべてを網羅するというにはほど遠いのが現状。ここでは、比較的広く行われている門派を中心に、計41の門派を取り上げた。(創始者の項で“伝説”とあるのは、はっきりした史実が確認されないもので、伝説上の域を出ないものを意味しています)


拳法名 創始者・時代 発生地 特徴
陳式太極拳
(ちんしきたいきょくけん)
諸説あるが、陳家溝の陳王廷説が
有力とされている
河南省
温県
陳家溝
 各派の太極拳の源流であり、陳家溝の陳一族の間に代々伝えられていた拳法。剛柔の要素を含み、すべての動作に纏絲がかかっている。練習段階は、まず大きく正確な動作(開展)の老架式を行い、次に小さくまとめる(緊湊)新架式を学ぶ方法がとられている。その技法は非常に難しく、習得するには長年月を要する。
楊式太極拳
(ようしきたいきょくけん)
楊露禅
(ようろぜん)
・1799〜1872
 河北省 の楊露禅が陳長興より、陳式太極拳を学んだのちに改変したもの。もともとは剛の要素を含んだものであったが、現在伝わっているのは柔一色のもので、武術としてよりも健康法として広く普及している。
呉式太極拳
(ごしきたいきょくけん)
全祐
(ぜんゆう)
・1834〜1902
 楊式太極拳の 創始者である楊露禅の次男、楊班候に学んだ全祐が創出し、息子の呉鑑泉が後に上海の精武体育会の教師となり、普及に努めた。技法は小架式である。
武式太極拳
(ぶしきたいきょくけん)・
かく式太極拳
(かくしきたいきょくけん)
武禹襄
(ぶうしょう)
・1812〜1880

かく為真
(かくいしん)
・1849〜1920
 陳式太極拳趙堡架式を陳清萍より学んだ武禹襄が改変したものが「武式太極拳」。それを三代目のかく為真が世に広めたものが「かく式太極拳」であり、別名“かく式”(かくしき)とも呼ばれている。技法は、姿勢の高い小架式である。
孫式太極拳
(そんしきたいきょくけん)
孫禄堂
(そんろくどう)
 かく為真より、かく式太極拳を学んだ孫禄堂が、形意拳、八卦拳をも学び、三派の共通点を理論だてて一つの体系にしたのが孫式太極拳である。孫家拳ともいわれる。
形意拳
(けいいけん)
姫際可
(きさいか)
*伝説/清初
 伝説によれば、山西省の姫際可が槍術の理をもって考案したとされている。形意拳は、万物のもととされる金・水・木・火・土の五行をあらわした「五行拳」と、十二種の動物の動きから考えられた十二形拳などがある。技法は一見すると素朴かつ単純ではあるが、ひとたび完成すればその威力にはすさまじいものがあるとされる。
八卦掌
(はっけしょう)
董海川
(とうかいせん)
・清末
北京  千変万化な技法と縦横無尽な歩法を用いるのが特徴。円周上を動きながら八種の技を練習するが、その技法がすべて開手で行なわれることから、この名がある。
陰陽八盤掌
(いんようはちばんしょう)
港南  一説では、八卦掌の創始者・董海川は、江南にてこの拳法を学んだ後に八卦掌を創始したといわれる。陰陽八盤掌の技法や歩法は八卦掌と大変よく似ている。また、董海川の弟子である劉鳳珍が八卦掌を学んだ後に改名したものともいわれている。
翻子拳
(ほんしけん)
河北省  “双拳の密なるは雨の如く、脆快なること一挂鞭の如し”といわれるように、一気呵成に拳を繰り出すのが特徴である。短打にて、その発勁は迅速強猛である。別名「八閃番」ともいわれる。
八極拳
(はっきょくけん)
呉鍾
(ごしょう)
・清代末期
河北省
滄州
孟村
 敵を打つときには体ごと飛び込んでいき、接近戦を得意とする。猛烈な発勁を誇り、その打撃の威力は中国拳法中、一番といわれている。正式には「開門八極拳」といわれ、敵の門(防禦)を、“六大開”と呼ばれる六種の開法をもって打ち破ることから、この名がつけられている。
劈掛拳
(ひかけん)
河北省
滄州
 腰を支点にして上体を左右にふり、両手をふりまわすようにして、連続的に攻撃する。劈掛拳は、遠い間合いからの攻撃を得意とするので、接近戦をよしとする八極拳と合わせて学ぶ人が多い。
螳螂拳
(とうろうけん)
王朗
(おうろう)
*伝説/清初
山東省  清初に王朗が少林寺で学んだ拳法に加え、北派十八門派を集大成して創始したと伝えられている。カマキリがセミを捕らえるところにヒントを得たことから、この名がついている。流派には、迅速で力強い硬螳螂拳(七星・梅花螳螂拳)と、動作が柔らかくゆるやかな軟螳螂拳(六合螳螂拳)、その中間の八歩螳螂拳がある。さらに硬螳螂拳より分派したものとして、秘門、光板などの流派がある。
秘宗拳
(ひそうけん)
慮俊義
(ろしゅんぎ)
*伝説/宋代
 燕青拳、迷踪拳、迷蹤芸ともいわれる。特徴は複雑な歩法を用い、敏捷な動きで急回転したり、姿勢の高低を急激に変化させたりする。
孫ぴん拳
(そんぴんけん)
孫ぴん
(そんぴん)
山西省  長い袖(昔の中国の衣服の袖には非常に長いものがあった)を振り回し、目をくらませ即座に攻撃するところから「長袖拳」ともいわれる。套路は三十二手、七十九手、九十六手の三種と応用変化を学ぶための一百五十三手散手がある。
弾腿
(だんたい)
 潭腿、譚腿とも書き、山東、河北、河南などの各省を中心に古くから広く行なわれてきた。動作が簡単なうえに実用的なので、他の拳法を始める前にこの拳法を練習することが多い。
査拳
(さけん)
西域に
起源を
発する
といわれる
 山東省冠県を中心に、回教徒の間で行なわれていた。多様な蹴り技と手技を組合せた十路の型があり、それぞれに対練の型がある。この拳法は変化に富み、優美なことから、女子の学習者が多い。
戳脚
(たくきゃく)
中国北方  套路は短く、学びやすく練習しやすいことから、スピード、柔軟性、機敏性を養うのに適している。手と足をあわせて用い、腿法が機敏で変化に富んでいるのが特徴。
功力拳
(こうりきけん)
一指霊和尚
*伝説/清代
河北省
滄州
 功力は“練功の力”のことで、下半身を鍛え、拳法の基本の姿勢を学ぶのに適しているため、戦前では南京の中央国術館や、上海の中央精武会で採用されていた。
通臂拳
(つうひけん)
河北省  通臂拳の動作は、猿が腕を伸ばして獲物をとったり、闘う動作から編み出されたものといわれ、敵を打つときに腕が伸びることから、この名がついている。白猿通臂拳(通背拳)、劈掛通臂拳、少林通臂拳、五行通臂拳などの流派がある。
身尚拳
(ちしょうけん)
 地功拳ともいわれ、地上に自らころげ廻って闘う非常に変則的な拳法である。しかし、地身尚拳の型は地上をころがるばかりでなく、一般の拳法の平常の戦闘技法も含まれる。また、一般の拳法の中にも、地身尚拳の技法を含むものがある。
酔八仙拳
(すいはっせんけん)
 水滸伝に登場する花和尚魯智深が得意としたという拳法で、八人の仙人の名をとった八種の型がある。地?門に属する拳法で、困難な姿勢からの攻撃が多く、習得は難しい。
鷹爪拳
(ようそうけん)
河北省
雄県、
保定
 鷹の動作を技法の特徴としている象形拳で、鷹爪手を用いての点穴法や擒拿法がある。
猴拳
(こうけん)
 猿の敏捷な動きが取り入れられた象形拳で、多くの支流がある。本来は実戦的なものであるが、猿の物真似におわってしまっているものもある。
羅漢拳
(らかんけん)
 羅漢の名は仏教の十八羅漢よりきたもので、型の中には羅漢像の姿勢が取り入れられている。
六合拳
(ろくごうけん)
 六合拳と名のつく門派は各地に多く存在する。拳法の型は八本の技が基礎となっている河北省伝承のものと、六合短拳、六合短捶、六合単刀、六合双刀、六合棍、六合対棍の型がある。山東省伝承のものがある。また、湖南、湖北省にも別の門派がある。
華拳
(かけん)
陜西省
華陰県
 変化に富み、高度な技術を必要とする。十二路の型がある。
意拳
(いけん)
大成拳
(たいせいけん)
王こう斉
(おうこうさい)
 かく雲深より形意拳を学んだ王こう斉が、形意拳をベースに、太極拳の柔化、八卦掌の身法、少林拳の立禅を取り入れて創始した。固定した型はなく、站椿(たんとう)に重きを置き、深手と呼ばれる無型の組手を行なう。


南派拳術
拳法名 創始者・時代 発生地 特徴
劉家拳
(りゅうかけん)
劉三眼
*伝説/清末
広西  進退が素早く、跳躍動作を含み、変化に富む。歩法は吊馬、拉馬を多用する。手法は洪拳に似ており、左右の攻めが密である。
莫家拳
(ばくかけん)
莫清嬌
(ばくせいきょう)
*伝説/清代

莫達士
(ばくたつし)
*伝説
広東  長・短打が結合しており、特に腿法にすぐれ“莫家釘脚”といって恐れられた。攻防は緊密であり、剛柔をあわせもつ。
蔡家拳
(さいかけん)
蔡九儀
(さいきゅうぎ)
*伝説

蔡伯達
*伝説
 手法が活発で、中指を突出させた鳳眼拳を多用し、見えない位置から突然に突きを出す。短打が主体で、腿法は正足易を多く用いる。剛柔をあわせもち、型には十字拳、大運天、小運天、天辺雁などがある。
李家拳
(りかけん)
李巴山
(りはざん)
*伝説

李友山
(りゆうざん)
*伝説

李応輝
*伝説
 蛾嵋山の白眉道人より拳法を学んだ李巴山が創始したと伝えられている。力強く、素朴で活発な動作を行なう。長橋大馬で、側身側歩を歩法とする。
仏家拳
(ぶっかけん)
 仏教徒の伝来のものだといわれる。型には、内家拳、金錚拳、羅漢拳、仏家太子剣などがある。剛柔を備え独特の風格を持つ。
蔡李仏拳
(さいりぶっけん)
陳亨
(ちんきょう)
*伝説
広東省  陳定は、蔡家拳、李家拳、仏家拳を学び、蔡李仏拳を編み出したといわれる。快速活発で、柔の中に剛を含み、歩法の変化が多い。
洪家拳
(こうかけん)
洪熈官
(こうきかん)
福建省  福建省の洪熈官が、少林寺にて拳法を学び、後に洪家拳を編み出したといわれる。特徴は、素朴で力強く、手法を多く用い、腿法は比較的少ない。拳套には、高級になると龍、蛇、虎、豹、鶴、獅、象、馬、猴、彪の十種の動物の動きを取り入れた十形拳を学ぶ。拳勢威猛、剛勁有力といわれる。
白鶴拳
(はっかくけん)
方七娘
*伝説
福建省  父の方慧石より学んだ少林拳をもとに、方七娘が鶴の精妙な動きを取り入れて創始したといわれる。鶴の食する姿、鳴き飛ぶ姿、宿立する姿、飛ぶ姿などから、それぞれ、食鶴拳、鳴鶴拳、宿鶴拳、飛鶴拳の四大流派がある。
詠春拳
(えいしゅんけん)
厳詠春
(げんえいしゅん)*伝説
 詠春拳は姿勢が高く、歩幅は狭く短打を強調する拳法である。上半身の動きを主体として、手技が多く発達している。また、あらゆる防禦技術はダイレクトな攻撃技に直結している。
太祖拳
(たいそけん)
 北派の太祖拳とは全く別の拳法で、白鶴拳の太祖鶴拳を源流とする説や、明の太祖の遺法であるという説があり、創始者は不明である。拳套には土目化鶴、四点金拳、精光四門拳、竜蝦出角、殺眼拳、風車輪、祖伝拳、三戦などがある。
羅漢拳
(らかんけん)
 白鶴拳、詠春拳から分化したものといわれており、北派の同名の羅漢拳とは別種のものである。一百零八手の型が有名。
周家螳螂拳
(しゅうかとうろうけん)
周亜南
(しゅうあなん)
福建省  周亜南が少林寺で修行した後に、螳螂と雀の闘う姿にヒントを得て創始したといわれている。特徴としては上下が連動していて、攻撃は迅猛である。北派螳螂拳とは、技術内容がまったく異なる。
五祖拳
(ごそけん)
蔡玉鳴
(さいぎょくめい)
福建省  蔡玉鳴が、太祖拳、羅漢拳、白猿拳、鶴拳、達磨拳の五門派を統合して編み出したといわれる。現在、フィリピンで多く行なわれているが、南派の中では、その技法は大変に高度なものといわれている。
白眉派拳
(はくびはけん)
白眉道人
*伝説
広州  蛾嵋山の白眉道人が広州で伝え、後に香港などに伝わったといわれる。剛強凶猛で連貫性が強く、路線は広く大きい。



中国武術のキーワード

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【套路】(とうろ)
 套路は、空手でいうところの「型」である。套路練習の目的は、基礎鍛練、内功、攻防技術の習得などであるが、各門派の套路には、先人が工夫研究した技法の精華がおりこまれており、門派独自の風格を備えている。
▲同義語−−拳套、盤架子、拳


【架式】(かしき)
 架式とは拳法における姿勢のこと。拳法においては、正しい姿勢を会得することが非常に重要である。各門派におけるそれぞれの姿勢は、いずれも長い間の経験や研究を経て完成されたもので、力学的、生理学的にも優れたものである。
▲同義語−−架子、勢法


【歩法】(ほほう)
 歩法とは、いわゆるフットワークのこと。歩法は実戦武術の生命ともいわれ、軽快、安定が要求される。各門派により、それぞれ深く研究された歩法がある。


【単練・対練(対打)】(たんれん・たいれん)
 単練とは一人で行なう練習のことである。それに対し、対練とは二人で組んで行なう練習のことをいう。中国武術では、一人で行なう型をそのまま対練に応用できるものと、もともと二人で行なうために作られたものとがある。対練は空手でいえば組手に相当し、間合やタイミングの感覚をつかみ、拳套の技法をより深く理解するためのものである。


【勁】(けい)
 “勁”は“力”と混同されやすいが、両者はまったく別の性質のものである。力が自然なもの、つまり生まれつき持っているものであるのに対し、勁は人為的な訓練によって後天的に会得するものである。勁は広範囲に用いられるが、大きくわけて、「修練による能力」と「圧縮された力」の二つを意味する。前者には、化勁(敵の攻撃してくる力を受け流す)、聴勁(敵と触れ合っている部分によって、相手の出方を察知する能力)などがあり、後者には身体内のエネルギーを統一協調させて、一瞬にて爆発させる発勁がある。これらの勁を会得するには、長年月にわたる練習が必要であり、特に発勁は秘伝を得ずして完成させることは困難である。


【練功】(れんこう)
 練功とは技の威力を養成する鍛練のことで、大別して内功と外功にわけられる。内功とは、体の内面、内臓および経絡を、気を練ることによって鍛えるものである。内功によって功力を得ることは、長年月の苦練を必要とするが、こうして高められた功力は齢をとっても衰えないといわれている。外功とは主に人体の皮膚、筋肉、骨などを鍛えるものであり、その代表的なものに鉄砂掌(てっさしょう)と呼ばれる鍛練法がある。これは独特の漢方薬を煎じた薬を用いながら、砂袋をたたいて手を鍛えるもので、功を積めば積み重ねたレンガを一撃で打ち砕くほどの破壊力が得られるという。


【站椿】(たんとう)
 站椿は、拳法の基礎となる下肢を鍛練するためのもので、気功法と合わせて行なわれることから、立禅ともいわれる。これは、両足または片足に体重をかけた正しい姿勢で静止し、呼吸上の注意を守って行なうもので、代表的なものに騎馬式、三体式などがある。
▲同義語−−站功、椿功、盤根、混元椿


【拝師】(はいし)
 中国では、たとえ長年月にわたり師のもとで修業を積んでも、「仁、義、礼、智、信、忠、孝、悌」を兼ね備え、技術、人格ともに師に認められなければ正式弟子にはなれず、全伝を授けられることはない。この正式弟子と認められることを拝師と呼び、いったん拝師したならば、弟子は師を親と同様に尊敬し、師は弟子を自分の子供と同じように接し、その信頼関係のなかで、武術の修業をしていくのである。ただし、現在の中国においては、あまり行なわれていない。



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