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from A.D.2030年 – 未来、人間は地震をコントロールできるのだろうか?(2/2)

AR技術を駆使してさまざまな実験的プロジェクトを手がけるAR三兄弟が、「どう見てもこの人、未来から来たに違いない」と思わざるをえない"ヴィジョナリー"たちにインタヴューを敢行。まず1人目は地震の専門家で、「地震予知を疑う」理学博士・島村英紀。

 
 
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AR三兄弟の未来から来た男

科学の分野では時に、「どう見てもこの人、未来から来たに違いない」と思わざるをえない"ヴィジョナリー"たちに遭遇する。そんな彼らのアタマの中を探るべく、AR技術を駆使してさまざまな実験的プロジェクトを手がけるAR三兄弟がインタヴューを敢行。果たして彼らは、どれほどの未来からやってきたのか。

2004年、北海道大学地震火山研究観測センター教授だった島村英紀は『公認「地震予知」を疑う』を上梓し、地震予知ができる前提で国の膨大な予算が使われている現状に対し、警鐘を鳴らした。誰も教えてくれなかった本当のことを、もっと知りたい。ちゃんと自然に畏れを抱き、正しく身構えたい。同氏に向こう30年の未来、地震とどう向き合うべきなのかを尋ねた。




AR三兄弟:地震予知ができる前提で、国が予算を割いている地震研究機関が日本には多数あると聞いたことがあるのですが、国はまだ地震予知ができるものだと認識しているのでしょうか?

島村:約7つの省庁が競争でお金と人(国家公務員)を取り合ってきた歴史がずっと続いてきたのですが、それでも地震予知はできなかった。地震予知計画が始まったのが1965年、阪神・淡路大震災が起きて地震予知が無力だと分かったのが95年、30年たっています。さらに今年に至るまで15年以上たっていて、地震予知が一度として成功したケースはありません。

AR三兄弟:人工で地震が引き起こせると先生の著作にあったのですが、本当ですか?

島村:人間は地震を人工的に起こすことができます。1960年代のアメリカ・コロラド州の軍施設で、軍は放射能汚染水の処理に困って、最終的に深さ4,000mの穴を掘って地下に捨てました。そこはもともと、まったく地震がない地域だったのですが、この汚染水の注入を始めてから地震が起き始めた。水を増やせば地震が増え、減らせば地震が減ったことから、気味悪がって水を注入するのを止めてみた。そしたら地震が止まった。注入を再開すると地震が再発した。最終的には人的被害が及ぶのを恐れて、この試みは中止されました。

地震を引き起こす方法はこれだけではありません。石油を掘るときに、ある程度石油が少なくなってくると、油田の中に水を押し込む。それで採掘量を増やすということがよく行われているのですが、これもよく調べてみると、水を入れた地域は地震が増えている。人間が水やガスを地球の中に押し込むってことは、地面の中で地震が起こりやすくなっているときにその地震断層を滑らせてしまうということ。つまり地震を起こす作用があるのではないかということが、最近かなり分かってきています。

AR三兄弟:地震のエネルギーで、うっかり発電とかできないですかね?

島村:いちばん難しいのは、100年から300年に一回しか起きないものを待って、それをエネルギーに換える仕組みというのがまだない、という点です。そもそも、地震が起こる場所が分からない。ただ地震とか火山とか、「おおもとのエネルギー」は地熱なわけで、その地熱そのものを使うということは、十分にありうること。現に僕が13回行ったアイスランドでは、地熱エネルギーと風力だけで全部賄っています。火力発電所も原発も存在しない。しかも電気が余っているから、ボーキサイトを輸入して電気を使って、精錬してアルミにして輸出している。この新しい時代を迎えて、今度は水から電気分解で水素を作って、その水素で市内のバスを走らせています。日本は地熱が多い国なのに、利用しきれているとはとてもいえない。国立公園法(現自然公園法)に縛られていますから。実験的なものが北海道と九州など数えるほどしかないので、もったいないと思いますね。

その1に戻る)

島村英紀教授
1941年東京都生まれ。理学博士。北海道大学教授、国立極地研究所所長を経て武蔵野学院大学特任教授。専門は地球物理学。著書に『巨大地震はなぜ起きる』『「地震予知」はウソだらけ』『「地球温暖化」ってなに?科学と政治の舞台裏』など多数。講談社出版文化賞、産経児童出版文化賞、日本科学読物賞を受賞。
http://shima3.fc2web.com/

AR三兄弟
企画・発明・執筆を担当する長男:川田十夢、映像・編集をする次男:髙木伸二、プログラム・音楽をする三男:小笠原雄からなる未来開発ユニット。AR技術を駆使したり駆使しなかったりしながら、メディアと娯楽を拡張している。一方で、メーカーの技術顧問として未来の広告とプロダクトを同時に発明。書籍『AR三兄弟の企画書』が日経BPより発売中。
http://ar3.jp/

 
 
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