様々なパーソナルデータが公開され、自由に分析できる時代がやってくる!? 日本の取り組みとオープンデータ先進国イギリス政府が進める”midata” 12/11/25
あなた自身の日々の購買データやサービス利用データを自由にダウンロードでき、それらを統合し分析できる時代が来るかもしれないとしたら、皆さんはどのように考えますか? 実は、そう遠くない将来に日本でも実現する可能性があるのです ...
あなた自身の日々の購買データやサービス利用データを自由にダウンロードでき、それらを統合し分析できる時代が来るかもしれないとしたら、皆さんはどのように考えますか?
実は、そう遠くない将来に日本でも実現する可能性があるのです。
今月始め、総務省が第1回「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」を開催しました。総務省といえば、7月の「オープンデータ流通推進コンソーシアム」設立や12月に「オープンデータシンポジウム」の開催を予定しているなど、日本のオープンデータ戦略推進を最もリードしている行政機関の一つです。
「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」の目的は、”個人に関する大量の情報が集積・利用されることによる個人情報・プライバシー保護の観点と、保護できた上でのネットワーク上での利用・流通の促進に向けた方策の検討”となっています。
公開されている資料などには、最初に書いたような具体的なことは全く書かれていませんが、”利用・流通”というキーワードから、オープンデータ先進国であるイギリスで進められている”midita initiative”と同様の動きになる可能性もあるのでは!?と思ったわけです。
オープンデータ先進国イギリス政府が進める”midata”とは?
イギリスは、Open Knowledge Foundationなどの民間からの働きかけや政治的リーダーシップにより、欧州の中で最もオープンデータ活用が進んでいる国の一つです。
そもそもオープンデータは、狭義にはオープン化された公共データを意味することもありますが、Open Knowledge Foundationが今年2月に公開したOpen Data Handbookでの”Openの定義”は以下3つになっています。
- (望ましいのは)インターネット経由でダウンロードでき、再作成に必要以上のコストがかかってはいけない。また、データは使いやすく変更可能な形式であること。
- 他のデータセットと組み合わせての再利用や再配布ができること。
- “誰もが”利用、再利用、再配布ができること。データの使い道、人種、所属団体などで差別をしてはいけない。例えば「非営利目的での利用に限る」という制限や「教育目的での利用に限る」などの制限も許されない。
よって、広義には民間企業が機械識別可能な形式で再利用可能なデータをインターネット経由で公開すれば、それもオープンデータと言えます。
日本での例としては、Excelファイルではありますが博報堂が今年9月にに公開した、生活者意識の定点観測調査「生活定点」データも、完全にではないですがオープンデータと言うことができるのではないでしょうか。
”open by default”のポリシーが根付いているイギリスでは、民間企業保有データのオープン化に関する戦略が国家レベルで検討されています。
イギリスの行政機関の一つであるBIS(Department for Business, Innovation and Skills)は2011年4月、消費者がより良い選択・取引を行えれば長期的に経済が成長するという考えのもと、Consumer Empowerment Strategyを発表し、4つのセクションの一つ「The Power of Information」の中で、消費者が民間企業の持つ各自のデータ(いわゆるパーソナルデータ)に自由にアクセスしコントロールできるようにと”midata“(マイデータと読む)というプロジェクトが発足しました。
要するに、企業はユーザーの情報を分析し購買行動パターンなどを導き出し、そこから最終的に利益を生み出しているのですから、消費者もそのデータに自由にアクセス出来るようになれば最適な消費活動(例えば携帯料金プランの再検討)ができるようになる、ということなのです。
実はイギリスのデータ保護規制では、消費者が企業保有のパーソナルデータへのアクセスを要求する権利が法的に認められていますが、国民の認知率も高くなく法的拘束力も低いのが現状となっています。
midataプロジェクトには民間企業もパートナーとして参加しており、Goolge、クレジットカードのVisaとMasterCard、ガス会社のBritish Gas、電力会社のEDF Energy、保険のLloyds、携帯キャリアのThreeなど様々な業態の企業や組織がこの取り組みをサポートしています。
“midata”によってどのような未来がやってくるのか
イギリス最大で世界第3位(ウォルマート、カルフールに次いで)の小売り企業であるTescoは1,600万人もの会員データを持っていますが、その購買データをショッパーデータ分析のdunnhumbyに売って利益を得ている、という記事が書かれました。
実際には、消費者はデータを収集される代わりにポイントやクーポンという形で還元されているわけですが、そのデータはdunnhumbyを通して匿名化された形ではありますがメーカー企業に販売されている事実は確かにあるわけです。
そんな問題も指摘されていたTescoは今年10月、会員が自分の購買データに自由にアクセス出来るように公開するという“Clubcard Play”という計画を発表しました。
詳細はまだ公開されていませんが、ゲーミフィケーションを取り入れたり、メーカー企業とのコミュニケーションが出来るようなメディアにする計画など、データを公開することによって消費者とのエンゲージメントを高める施策を検討しているそうです。このプロジェクトで働く人材も募集しているなど、今後の動きには注目です。
しかしながら、もちろんサイト上で購買データを自由に閲覧できることも大事ですが、イギリス政府が目指しているのは、各民間企業が機械式別可能なデータを”ダウンロード”できれば、それらを統合し消費行動全体を俯瞰し分析することができ、最終的な国民生活の向上と経済の成長なのです。
恐らく個人でこれらのデータを統合・分析することはできないので、第3者(サードパーティ)の分析プラットフォームへのアップロードが必要になるため、セキュリティ保護をどのようにするのか、ということが最大の問題として議論されています。
日本の総務省による「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」での論議の中でも、今後midataの取り組みが登場してくるのではないでしょうか。
イギリス政府はオープンデータを活用したビジネス(いわゆるオープンデータビジネス)を活性化させるための組織であるODI(Open Data Institute)を2011年11月に設立し、今月にはこのmidataを推進するためのハッカソンである”Midata Hackathon 2012“を開催しました。こちらにどのような案が出てきたかの紹介があります。
「ライフログ」という言葉を良く聞くようになりましたが、個人で収集可能なデータは限られており、購買データなどを分析可能な形式に変換することは非常に手間であり困難となっています。
もし、それぞれの企業が購買データやサービス利用データなどのパーソナルデータを自由にダウンロードできるように、もしくはAPIという形でデータを取得できるようになれば、”真のライフログ”が完成するのではないでしょうか。
You can leave a response, or trackback from your own site.
Leave A Reply