【ロンドン坂井隆之】預金への課税を巡って銀行閉鎖が続いているキプロスの議会は１９日、預金課税を盛り込んだ法案を否決した。アナスタシアディス大統領は少額預金を保護する修正案を示したが、大統領の与党を含め、賛成票を投じる議員はいなかった。ユーロ圏は預金課税をキプロスに対する１００億ユーロ（約１兆２２００億円）の支援の条件としており、同国をめぐる先行き不透明感が一気に強まった。

　キプロス議会（定数５６）は約２時間の審議の後に採決を実施したが、大統領の出身与党の１９人が棄権。残る３６人の議員は反対、１人が欠席した。アナスタシアディス大統領は１０万ユーロ以下の預金に一律６．７５％を課税するとしていた当初の方針から、２万ユーロ以下の預金者を除外する修正案を示したが、理解を得られなかった。

　否決後、欧州中央銀行（ＥＣＢ）は「ルールの範囲内で、キプロスの銀行に必要な支援を行う」と緊急声明を発表。ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長（オランダ財務相）も「キプロスを支援する用意はできている」と支援を継続する姿勢を示した。アナスタシアディス大統領は２０日朝から各党首脳と会談し再度調整を図る方針。

　議会周辺には預金課税に反対するプラカードなどを持った数千の群衆が詰め掛け、否決の情報が伝わると歓声がわき起こった。キプロス政府は預金の取り付けを防ぐため銀行窓口を２０日まで閉鎖しているが、さらに延長する可能性もある。現金自動受払機（ＡＴＭ）は一部を除いて使用できるが、多額のオンライン取引は制限されており、国民生活にも影響が出ている。