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期限切れ迫るウィンドウズXP

4月9日 21時20分

田辺幹夫記者

国内で使われているパソコンのおよそ3分の1に搭載されている基本ソフト「ウィンドウズXP」の製品サポートが、来年4月9日(日本時間)に打ち切られます。
サポートが終了すると、ソフトの欠陥が修正されなくなるため、ウイルスに感染したり、不正アクセスを受けたりする危険性が大幅に高まります。
基本ソフト乗り換えの現状と対策について、科学文化部の田辺幹夫記者が解説します。

期限切れで問題は?

今から12年前の2001年に発売されたパソコンの基本ソフト、マイクロソフト社の「ウィンドウズXP」。
製品のサポートが打ち切られるのは、日本時間の来年4月9日です。

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サポートが切れると、どのようなことが起きるのでしょうか?
基本ソフトには「脆弱性」と呼ばれるプログラムの欠陥がいくつも潜んでいます。
脆弱性とは、ウイルスなどの外敵に狙われる可能性のあるコンピューターの弱点のことで、1か月に10件くらい見つかっています。
マイクロソフト社は見つかるたびに弱点を補修するプログラムを無償で配っていて、皆さんのパソコンでもインターネットを通じて自動的に組み込まれる仕組みになっています。
しかし、サポートが切れると、この補修がなくなるため、欠陥を狙ったウイルスに感染したり、不正アクセスを受けたりする危険性が高くなるのです。

早めの準備を

パソコンのセキュリティーに詳しい情報処理推進機構の加賀谷伸一郎調査役は「サイバー攻撃する側は、日々、新しい攻撃方法を考えているので、サポートが終わった基本ソフトだと太刀打ちできなくなる。基本ソフトの乗り換えにはデータのバックアップに手間取ったり、調達に時間がかかったりすることも考えられるので、被害を防ぐためにも早めの乗り換え準備を心がけてほしい」と話しています。

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進まない乗り換え

製品のサポート期間について、マイクロソフト社はホームページなどで告知してきたとしています。
しかし、乗り換えは一向に進んでいないのが現状です。
民間の調査会社によりますと、去年11月の時点で、ウィンドウズXPは国内で利用されているパソコンおよそ7700万台の33%余り、企業のパソコンに限れば40%余りで引き続き使用されています。

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背景には、XPがホームページの閲覧やメールの送受信、動画の再生など、インターネットを利用する基本的な能力を備えているため、利用者が乗り換えの必要性を感じていないことがあります。
また、後継の基本ソフトを搭載するためには、パソコンに高い処理能力が求められ、パソコン自体の買い換えが必要となるケースが多かったのも一因でした。
さらに、企業の中にはXPでしか動かない独自のソフトウェアを使っているところもあり、簡単に乗り換えられないケースもありました。

教育現場にも波紋広がる

ウィンドウズXPが搭載されたパソコンは、企業や一般の家庭だけでなく、多くの教育現場でも使われ続けています。
文部科学省の調査によりますと、去年3月の時点で、全国の公立の小中学校や高校などの授業用のパソコンおよそ192万台のうち、46パーセント余りに当たるおよそ90万台で、引き続き利用されていました。
今回、取材を進めてみると、数年前から計画を立てて、すでに乗り換えを完了している学校もある一方で、さまざまな事情から乗り換えが思うように進められない学校もありました。

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震災対策で費用ねん出できず

千葉県佐倉市では、34ある市立の小中学校で、合わせておよそ2000台の授業用のパソコンが導入されていますが、半数の1000台ほどがまだXPのパソコンです。
しかし、今年度中には乗り換えを進めることができず、佐倉市教育委員会は対応に苦慮しています。
その理由はおととしの東日本大震災を受けて決まった学校の耐震化です。
再来年度までに完了するため、基本ソフトの乗り換えにかかる合わせて5億円余りの費用を今年度は支出できないのです。
教育委員会は、平成26年度予算で対処する方針ですが、サポートの終了までに乗り換えが間に合うかどうかは分からないということです。

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LANケーブル抜く措置も

そして、間に合わなかった場合には学校のパソコンをインターネットにつながないで使うなどの対策も検討しているということです。
佐倉市教育委員会の安西啓雄課長は「子どもたちの命を守ることを最優先に考えると、耐震化を先に進めざるをえなかった。XPの期限切れは学習に大きな影響を与えると考えている。私たちもあらゆる方策を講じて、学習の妨げにならないようにしたいが、マイクロソフト社も何らかの救済措置や費用のかからない対応策を考えてほしい」と訴えていました。

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マイクロソフト社が会見

会見で、日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、乗り換えに必要な情報を提供するホームページの公開や電話相談の窓口を拡充する支援策を明らかにし、早めの対策を呼びかけました。
そのうえで、まだ多くの人がXPを使っている現状について、樋口社長は「サポートの終了は一般の利用者の方々にはまだまだ浸透していない。今後は、パソコンメーカーなどとともに必要な情報を提供するので、ぜひ乗り換えを検討してほしい」と話しました。

マイクロソフト社は積極的に呼びかけを

パソコンの基本ソフトの乗り換えは、データの移し替えに手間取ったり、新たな費用もかかったりで、個人にとっても企業にとっても決してたやすいことではありません。
さらに、個人の利用者にはサポートが終了することや、その意味を知らない人も数多くいます。
マイクロソフト社は、これから1年かけて積極的に周知をはかるとともに、パソコンに詳しくない利用者にも、どのようにすれば移行できるのか、分かりやすく知らせていくことが必要だと感じました。

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