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再生エネルギー、課題が山積み

東洋経済オンライン 4月13日(土)11時15分配信

■ 普及阻む送電容量の不足

 設備認定が太陽光で急増する反面、その他の再エネの導入は緩慢だ。12月末までで風力が45万キロワット、中小水力や地熱はゼロに等しい。

 20万キロワット以上の風力発電の新規設備で、FITの認定を受けたのは2件のみ。風力は昨年10月に環境アセスメントの対象となったことで、環境アセス後の設備認定にたどり着くまでが長くなった。最初の風況調査・住民説明に2年、環境アセスで3〜4年必要とされる。さらに、建設にも1〜2年かかる。

 地熱発電にしても、日本は米国、インドネシアに次ぎ世界3位の潜在力を有するといわれるが、自然公園の規制や温泉への影響が壁となって、なかなか開発が進まない。

 日本風力発電協会の斉藤哲夫企画局長は、送電線への接続問題でも強い懸念を示す。「風力発電のポテンシャルのほとんどが(風況のいい)北海道、東北に集中しているが、両地域は電力会社の送電容量が小さい。建築基準法や環境アセスの制約のない太陽光に送電線への接続枠を先に占有されてしまうおそれがある」。

 送電容量のネックはすでに太陽光の接続申請で表面化している。エネ庁の村上課長によれば、バンク(配電用変電所の変圧器)の容量がいっぱいのため、申請どおりの接続を電力会社から拒否された太陽光発電事業者からの相談がすでに100件以上あるという。

 エネ庁も「系統接続が再エネ拡大に向けた最大の課題」(村上課長)と認識し、バンク対策に乗り出しているが、中長期的には送配電インフラ拡充の抜本対策が欠かせない。都道府県別で再エネの設備認定が最大の北海道は、北海道電力の送配電インフラが貧弱だ。電力消費の多い首都圏に電気を運ぼうにも、本州と結ぶ「北本連系線」の容量は60万キロワットしかない。再エネ関係者からは、地域間(電力会社間)の連系線拡充、広域での電力系統運用の必要性が叫ばれている。

 再エネ拡大の基盤となる電力システム改革も重要だ。消費者の選択を増やし、再エネ需要の促進剤となるのは電力小売りの全面自由化であり、送電網の中立性を担保し、市場のニーズに応じた受配電と設備投資を推進するのに不可欠なのが発送電分離だからだ。

 4月2日、政府は電力小売りの全面自由化を16年メドに実施、発送電分離も18〜20年の実施を目指す方針を閣議決定した。ただ、これは欧米からは10〜20年遅れている。そもそも自民党政権は、原子力、再エネを含めたエネルギーミックス(電源構成)を20年までに決めるとして結論を先送りしている。再エネの推進政策は迷走したままだ。

 (週刊東洋経済2013年4月13日号)

中村 稔

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最終更新:4月13日(土)22時0分

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