アラン「……○○」
アランに寝言で名前を呼ばれ、私の鼓動が大きく跳ねる。
「……っ」
普段とは少し違う甘い響きに、私は頬を染めた。
(こんな風に呼ばれたら……帰りたくなくなっちゃうな)
私はベッドの脇に膝をつき、アランの顔をのぞきこむ。
そしてベッドに腕を乗せると、そこに顔をうずめて息をついた。
「……どうしよう」
思わず呟くと、微かな衣ずれの音が耳に届く。
アラン「ん……」
「……!」
驚きに顔を上げると、目をこするアランがぼーっと私を見つめていた。
アラン「あれ?お前……」
アラン「……何でこんなとこにいんの?」
「あ……」
(そうだ。私勝手に入ってきちゃったんだった)
ゆっくりと身体を起こすアランの仕草に、私は慌てて立ち上がる。
「ごめん、勝手に。もう帰るから……」
アラン「…………」
すると私を見上げるアランが、とろんとした目のまま口を開いた。
アラン「やだ」
「え?」
呟くアランの手が、私へと伸び…。
「……っ…」
私の身体はいつの間にか、ベッドに押し倒されていた。
アランの腕が私の身体に、覆いかぶさるようにのっている。
(動けない……)
アラン「…………」
アランが私の身体を抱きしめ、掠れた声でささやく。
アラン「ここにいろよ」
「……っ…」
甘えたようなアランの声音に、私は何も言えなくなってしまった。
そして、そのまま夜が明けていき…―。
「ん……」
目を覚ました私は、まぶたから差し込む朝陽の眩しさに目を覚ました。
「……!」
すると目の前には、すでに目を覚ましていたアランの姿がある。
私がつけているコサージュを指でつつくようにしながら、
アランがゆっくりと目を上げて、私を見た。
アラン「…………」
「あ、おはよ……」
かあっと頬を染め、私は小さく告げる。
(そっか、昨日はあのまま……)
私の声を聞き、長く息をついたアランが呟くように言った。
アラン「お前さ……なんであいつのこと気にするんだよ」
(あいつって……レオのことだよね)
私はわずかに瞬きをした後、ゆっくりと答える。
「だって……」
アラン「…………」
コサージュに触れるアランの指先の動きが、ぴたりと止まる。
「アランの、お兄さん……でしょ?」
(誕生日が同じだし、レオにもお世話になっているから……)
(レオのことも、何かお祝い出来ればって思う)
アラン「…………」
短い沈黙が流れた後、アランが静かに身体を起こした。
アラン「お前さ、どうやったら俺のことだけ見るわけ?」
「アラン……?」
ぽつりと呟かれたアランの言葉に身体を起こすと、
何かを振り切るように勢い良く、アランがベッドから立ち上がる。
アラン「まあ、いいや」
そして服の裾に手をかけると、ちらりと振り返って言った。
アラン「着替えるから、お前ももう帰れよ」
部屋に戻り着替えを済ませると、私はため息をついていた。
「…………」
(アラン、怒っていたのかな……)
―アラン「お前さ、どうやったら俺のことだけ見るわけ?」―
そうしてアランの姿を思い出しながら、考えていると…。
???「おーい、○○様?」