(誕生日のこと、もう話してしまおうかな……)
私は考えながら、アランを見上げた。
「…………」
(そうしたら、欲しいものも教えてくれるかもしれないし)
アラン「……?」
わずかに首を傾げ、アランがじっと目を細めている。
(サプライズで、お祝いもしたかったけど……)
「あのね、アラン……」
そして口を開いた時、同時に夕刻を知らせる鐘が鳴り響いた。
(あ……)
思わず顔を上げると、アランも鐘の音の鳴る方を見やっている。
アラン「……帰るぞ」
「あ、うん」
そして話は出来ないまま、城へと戻ることになり…―。
私は部屋でケーキの材料を見おろしながら、ため息をついていた。
(結局、欲しいものの話をすることは出来なかったけど……)
「…………」
チョコを手に取ると、甘い香りがふわりと香った。
―「アランって、何ケーキが好き?」―
―アラン「…………」―
―アラン「……チョコ」―
(うん。頑張ってケーキを作って喜んでもらおう……!)
そして、誕生日前日…―。
私は一人、部屋で誕生日をお祝いする準備を進めていた。
(思ったよりも、ケーキに時間がかかっちゃったな)
失敗を繰り返しながらも作り上げたケーキを真ん中に、
テーブルに料理を並べていく。
「…………」
(こんな感じでいいのかな……)
私は首を傾げ、わずかに唸り声をあげた。
(なんだか城下の子どもたちの、誕生日パーティみたいになっちゃったけど)
そうして試行錯誤していると、不意に部屋のドアが叩かれた。
「あっ……」
私は慌てて駆け寄り、部屋の外へと出ていった。
アラン「……なに」
後ろ手にドアを閉め見上げると、そこには目を瞬かせるアランの姿がある。
「ちょっとだけ待って、アラン」
アラン「なんでだよ、お前が呼んだんだろ?」
(その通りなんだけど……)
隠すようにする背にしたドアをちらりと見やり、私は何も言えずにいた。
アラン「…………」
するとドアの高いところに右手のこぶしをつけ、
アランが身体の距離を詰める。
アラン「何隠してるんだよ」
「……っ」
アランに間近から顔を覗きこまれ、私は思わず顔をうつむかせる。
「あの、準備が……」
(まだ途中なんだけど……)
すると不機嫌そうに眉を寄せ、アランが息をついた。
アラン「……お前だって、勝手に俺の部屋入ってきてたじゃねえか」
その言葉に、私はアランの部屋に入った時のことを思い出す。
―アラン「あれ?お前……」―
―アラン「……何でこんなとこにいんの?」―
(確かに、そうだった……)
アラン「……誰かいるのかよ」
「まさか、誰もいないよ」
突然小さな声で尋ねられ、私は慌てて顔を上げる。
すると眉を寄せるアランが、ドアに掛けた手を降ろしドアノブをひねった。
「あ……っ」
私が背にしていたドアが開き、アランが部屋を覗きこむ。
そして中の様子に、目を丸くした。
アラン「……なんだ?」
私はアランを見上げ、告げた。
「ハッピーバースデー、アラン」
アラン「…………」
やがて部屋の中に入ると、アランが手作りのチョコケーキを見おろす。
アラン「……ああ、そういうことか」
どこかほっとしたように目を細め、アランが笑みを浮かべた。
アラン「あー、びびった」
「え?」
見上げると、アランがふっと目を細める。
アラン「いや、こっちの話」
そうして私の髪を、くしゃっと撫でた。
アラン「ありがとうな」
(良かった……アラン、すごく喜んでくれてるみたい)
「……アラン、ろうそく吹き消してくれる?」
恐る恐る言うと、アランが私へと視線を向ける。
アラン「…………」
(もしかして、嫌かな……)
思っていると、アランが吹きだすように笑った。
アラン「んなこと、ガキの時にもしたことねえな」
「え?」
アラン「一人、先に吹き消すやつがいたからな」
(あ……)
レオのことを思い出し、私は口元をほころばせる。
アラン「…………」
そしてアランは黙ったまま、ろうそくの灯を吹き消してくれた。
アランがろうそくを吹き消し、二人きりのお祝いが始まった…―。
アラン「美味いよ」
私が作った料理を口に運びながら、アランがふっと笑みを浮かべる。
「良かった……」
ほっと胸をなで下ろし、私は短く息をついた。
そして先程のろうそくの話を思い出し、尋ねる。
「昔も、こういう風にお祝いしたりした?」
アラン「ん?」
するとアランが一瞬だけ懐かしそうに目を細め、呟いた。
アラン「……そういうことも、あったかもな」
(その時も、やっぱりチョコケーキを食べたのかな)
(レオと、二人で……)
子どもの頃の二人を想像して笑みを浮かべた。
アラン「……何笑ってんだよ」
「ううん、何でもない」
わずかに首を横に振りながら顔を上げると、私はふと気がつく。
「アラン、ついてるよ?」
アランの口元に、微かにチョコがついていた。
私は自分の唇を指差し、アランを見上げる。
アラン「ん……」
私の仕草に指で拭おうとしたアランが、突然動きを止めた。
「……?」
(どうしたんだろう……?)
面白そうに笑みを浮かべながら、アランが私の方に身体を寄せる。
アラン「お前がとれよ」
アラン「俺がどーして欲しいか、わかるだろ?」
選択肢
アランに聞く→プレミア
自分で考える→スイート