→アランに聞く
アラン「お前がとれよ」
アラン「俺がどーして欲しいか、わかるだろ?」
顔を寄せるアランの姿に、私の鼓動が早鐘を打つ。
アラン「…………」
じっと見つめられ、私は思わず視線を逸らし口を開いた。
「……わからないよ」
するとアランが軽く首を傾げ、面白そうにささやく。
アラン「口でとって」
「え……」
(口でって……)
頬を赤く染めちらりと見ると、アランが目を細めた。
アラン「早くしろよ///」
「……っ」
わずかにためらった後、私は立ち上がりアランの目の前に立つ。
型に手を置くと、少しずつ顔を寄せていった。
アラン「…………///」
口の端を微かに舐めると、甘さがじわりと広がる。
顔を離し見おろすと、アランがにやりと笑った。
アラン「……美味いだろ?」
「…………」
(味なんて、わからなかった)
私は顔を真っ赤にしたまま、アランから顔を背ける。
楽しそうに笑うアランが、ケーキを食べ続けていき…。
やがてケーキを食べ終えると、アランがベッドにごろりと横になった。
アラン「あー、食ったな」
(アラン、結局全部食べてくれたんだ……)
テーブルを片づけながら口元をほころばせると、名前を呼ばれる。
アラン「○○……」
振り返ると、寝そべったままのアランが小さく手招きをしていた…。
「……?」
(なんだろう……)
呼ばれるままゆっくりと近づくと、アランの手が私の腕を掴んだ。
そのまま強く腕を引かれると、
私は体勢を崩し、アランの胸に倒れ込んでしまった。
「……あっ」
気がつくとアランは私の胸元に顔を寄せ、目をつぶっている。
アラン「腹いっぱい」
「…………」
そっと見おろすと、アランの黒髪が目の前にあった。
(アランの髪って、すごくサラサラだな……)
私は思わず手を伸ばし、その髪を指先で優しく撫でる。
アラン「…………」
目を閉じていたアランが、ゆっくりとまぶたを開いていった。
アラン「……お前の手って、気持ちいいな」
「え」
胸元に吐息がかかり、私はぴくりと指先を震わせる。
アラン「……やめんなよ」
アランが腕に力を込め、再び目を閉じた。
「う、うん……」
(髪撫でられるの、好きなのかな……何だか可愛い)
そのまま手を動かし続けていると、不意にアランが顔を上げる。
(え……?)
じっと見つめられ戸惑ううちに、顔が寄せられて…。
私の胸元に顔を沈めていたはずのアランが、
顔を上げ、そっと唇を重ねた。
「……っ…」
アランの髪を撫でていた私は、驚きに手を止める。
アラン「…………///」
すると軽く身を起こしたアランが、再びキスを落とした。
アラン「……止めんなって言ったろ?///」
少し落ちた私の腕を取り、アランが言う。
「……でも」
(アランの髪を、掴んでしまいそうだし……)
考えていると、アランが私の両脇に腕をついた。
アラン「……ふーん」
私の顔をじっと覗き込むと笑みを浮かべ、アランがささやく。
アラン「……じゃあ、自分で脱いでみて」
アランの言葉に、私はかあっと顔を赤く染めた。
「で、出来ないよ」
(「じゃあ」って、アランったら何を言って……)
すると私の顔をじっと見つめ、アランがわずかに眉を寄せる。
アラン「なんでだよ」
「……恥ずかしいから」
アラン「…………」
すると少し考えた末、アランが小さく顔を傾けた。
アラン「わかった。これから声出さないでいられたら、もうしない」
そして面白そうに目を細め、アランが告げる。
アラン「……我慢してみろよ」
アランが顔を寄せると、私は慌ててその胸を押した。
「なんで、そんなこと……」
アラン「…………」
するとアランが、ふっと笑いながら目を細める。
アラン「今日は俺の誕生日のお祝いなんだろ?」
アラン「……このくらい、許されると思うけど」
「あ……」
(確かに、そうだけど……)
思わず手から力が抜けると、アランがぐっと身体を寄せた。
「…っ……」
強引に唇を重ねられ、私は軽く目を見開く。
驚くまま息を飲むと、その隙間に熱い舌が触れた。
「……っ…」
私はアランの言葉を思い出し、必死で声を抑えていく。
―アラン「じゃあ、これから声出さないでいられたら、もうしない」―
舌を絡め取られても、アランの腕をぎゅっと掴み耐えていると…。
(……!)
アランの指先が、かくように私の脚を撫で上げていった。
「んっ」
その仕草に背中が痺れ、私はたえきれずに唇から声をこぼす。
アラン「……お前の負けだな///」
(ずるいよ……)
笑みを浮かべる姿を涙の浮かんだ目で見上げると、
アランが私の腰に手をまわし、身体を起こした。
そして顔を覗き込み、言う。
アラン「……嫌なら嫌って、今はっきり言えよ」
(それは……)
アランに顔を覗きこまれ、私は言葉を詰まらせた。
「…………」
そして、気が付いてしまう。
(私……嫌じゃ、ないんだ)
(アランのことが、好きだから)
私はアランから視線を逸らしたまま、
震える指先を、自分のドレスの紐にかけた。
アラン「…………」
その様子を見ていたアランがふっと笑みを浮かべ、手を伸ばす。
アラン「お前って、不器用だな」
私の指に手を重ねると、アランが器用に紐を解いていった。
「……あっ…」
アランの片腕が私のうなじを優しく引き寄せ、キスをする。
甘く響くキスを繰り返されると、私の身体がわずかに疼いた。
「ア、アラ……」
名前を呼び掛けた、その時…―。
(あ……この音は…)
部屋の中に、真夜中を告げる時計塔の鐘の音が響く。
(アランの誕生日に、なったんだ)
アランの手が素肌を撫で、力を失くした私の身体がベッドに落ちていった。
「ん……」
身体中に落とされるキスに唇をかみながら、私は手を伸ばす。
そしてアランの首元にぎゅっと抱きつくと、ささやいた。
「アラン……生まれて来てくれて、ありがとう」
アラン「…………」
するとお腹の上にいたアランがわずかに驚いたように顔を上げ、
やがて、嬉しそうな笑みを浮かべる。
アラン「……ああ///」
そしてベッドを軋ませながら身体を起こし、
もう一度私の唇に、優しいキスをした。
「……っ…」
私はアランの温かな身体にしがみつきながら、
夜の間中何度も、アランにささやく。
「お誕生日おめでとう、アラン」
その度にアランは、私の肌に優しく指先を滑らせていった…。
Premiere End