→自分で考える
アラン「お前がとれよ」
アラン「俺がどーして欲しいか、わかるだろ?」
「…………」
(それって……)
アランの言葉に頬を赤らめ考えた末、私はアランの口元に手を伸ばす。
「取れたよ、アラン」
人差し指でチョコを拭い取り、私は告げた。
アラン「…………///」
すると私の手首を取り、アランが引き寄せる。
驚いているうちに、アランが私の指先を舌先で舐めた。
「……っ…」
慌てて手を引くと、アランが笑いながら自分の唇を親指で拭う。
アラン「美味い///」
そのからかうような視線に、首筋の鼓動が速まっていった。
(……もう、すぐにからかうんだから)
窓の外で柔らかに吹く風が、微かに木々を揺らしている。
料理を口に運びながら、不意にアランが尋ねた。
アラン「お前さ、ずっと誕生日のこと考えてたわけ?」
「うん」
すると、ふーんと唸ったアランが小さく口を開く。
アラン「あいつ……レオのことも?」
「うん、少しは。だって、二人の誕生日でしょ?」
(レオにだって、お世話になっているし……)
(もしかして、アランが悩んでたことって……)
するとアランが、テーブルの上に置いた私の手を握り言った。
アラン「でもこれがもらえるのは、俺だけだよな?」
「え……」
テーブルの上で握られた手に鼓動を高鳴らせながら、
私はそっと、アランを見上げた。
アラン「…………」
微かに不安気に揺れるアランの瞳に気づき、私は小さく息を飲む。
「……うん」
アラン「…………」
途端にふっと目を細めたアランの姿に、私はゆっくりと目を瞬かせた。
「アラン……」
(すごく、ドキドキするけど……)
私は頷き、緊張した指先でアランの手を握り返した。
「アランだけ、だよ……」
(確か騎士が誓う時、こうするはずだよね……)
そして静かに手を持ちあげ、アランの手の甲に唇で触れる。
アラン「……っ…///」
アランの指先がびくりと跳ね、私も同時に顔を上げた。
見ると、頬を真っ赤に染めたアランが目を瞬かせている。
アラン「お前……///」
そうしてふっと吹きだすように笑うと、
私の手をぎゅっと握ったまま、くっくと喉を鳴らした。
「……そんなに笑わなくても…」
(ますます、恥ずかしい……)
私がかあっと顔を真っ赤にすると、
アランが笑いすぎて滲んだ涙を片手で拭いながら言う。
アラン「ほんと、変なやつ」
呟くように言うと、アランが握っていた私の手を離す。
そうして、静かに立ち上がった。
「アラン……?」
アラン「…………」
呼びかけると、アランが私の腰かけている椅子の背に両手をかける。
「……!」
両腕に囲われたまま、私は迫るアランの顔を見上げた。
アラン「ケーキの分の礼、しないとな」
ふっと目を細め、アランが顔を寄せる。
そして唇を重ねると、限りなく優しいキスをした。
「……っ…」
その仕草に、私の背中には甘い疼きが走る。
アラン「…………///」
やがて唇が離れると、アランがささやいた。
アラン「……伝わった?///」
「……うん」
小さく頷くと、アランが私の身体を腰元から抱きあげる。
「ちょ……アラン」
アラン「暴れんなよ」
アランが笑いながら、私の身体をベッドへと降ろした。
「アラン、片付けなくっちゃ……」
力なく言うと、アランが私の髪を手に取って言う。
アラン「後でいいだろ」
そして髪にキスを落とし、私を見上げた。
アラン「今は、俺のことだけ考えてろよ」
髪にキスを落とすアランが、ぱっと手を離す。
「……っ…」
離された髪がわずかに頬を撫でると、アランが目を細めた。
手を伸ばし私の背中を寄せると、そのまま唇を重ねる。
「ん……っ…」
アランの熱い唇が、何度も私の唇をついばんでいった。
息継ぎのためわずかに口を開くと、舌を絡め取られる。
「んん……」
腰元に電流が走るような刺激に、私のまつ毛が涙でわずかに濡れた。
アラン「…………///」
息をつきながらアランが唇を離すと、私はそっと顔を上げる。
すると深く息をつくアランの姿が見えた。
「…………」
「ねえ、アラン。いつから料理が好きなの?」
アラン「……なんだよ、いきなり」
驚いたように目を上げ、アランがわずかに首を傾げる。
アラン「知らねえよ……でも、昔から無心になれるんだよな」
アランの言葉に、私はレオの言っていたことを思い出す。
―レオ「アランってさ、悩み事とか考え事があると、料理を始めるんだよね」―
「いつか、これまで作ってきた料理の話、聞かせてくれる?」
(アランがこれまで、どんなことを想ってきたのか……知りたい)
アラン「……レシピのこと?」
ますます首を傾げるアランに口をほころばせ、
私はその身体に、そっと抱きついた…。
アラン「……○○?」
身体に抱きつくと、アランが私の名前を呼びながら背中を撫でた。
「…………」
ゆっくりと顔を上げると、目が合い鼓動が跳ねる。
すると、その時…―。
真夜中を告げる鐘の音が、部屋に低く響いてきた。
(アランの、誕生日になったんだ)
アラン「…………」
すると目を細め、アランが私の頬に手を添える。
アラン「これまでは、そんなこと気にもとめずに来たけど」
アラン「祝ってくれるやつがいるってのは、いいな」
「アラン……」
アランが頬に手を添えたまま顔を寄せ、首筋にキスをした。
「……っ」
アラン「……来年も作ってくれよ。チョコのやつ」
首元に息を吹きかけるようにささやくアランに、私は頷いて答える。
「う……うん」
やがて嬉しそうに口元に笑みを浮かべたアランが、私の肩を押した。
ベッドに仰向けに倒れると、アランが私のドレスの裾から脚を撫で上げて言う。
アラン「……約束だからな///」
そして優しく、素肌を撫でていった。
「ぁ……っ」
私はアランの指先の力にびくりと背中を反らしながら、
その背中に、ぎゅっとしがみついた…。
Sweet End