酔っぱらった客に絡まれ、私はテーブルのお酒に軽く口をつける。
「…………」
(飲んだふりをすれば、離れてくれるかな……)
するとその時、後ろから声が聞こえてきた。
レオ「だめだよ」
振り返ると、そこにはレオの姿がある。
「レオ……」
私の手からコップを取り、レオが眉を寄せる。
レオ「…………」
呟くと、テーブルの向かいに座った男をじろりと睨みつけた。
レオ「酒を飲まなきゃ出てけなんていうルール、いつ誰が作った?」
客「なっ……」
そしてテーブルに酒を置くと、私の腕を取って立ち上がらせる。
「……っ」
私はレオに手を引かれるまま、酒場を後にした。
「あ、あの……」
私は足を急がせ、レオの横顔を見上げる。
(レオ……?)
黙ったまま歩いていくレオが、やがて足を止めた。
レオ「……答えちゃダメだって、言ったのに」
振り返ったレオが、私をじっと見おろしている。
「ごめんなさい……」
(確かに、約束をしたのに)
レオ「…………」
すると突然、人気のない路地裏で、レオが顔を傾け唇を重ねた。
「……んっ…」
突然のレオのキスに、吐息がこぼれてしまう。
いつの間にか背中に回された手が、強く私の身体を引き寄せていた。
レオ「…………///」
唇が離れると、レオがふっと目を細めて自分の唇をぬぐう。
レオ「……やっぱり、お酒の香りがするね///」
そして私へと視線を寄せ、笑いながら呟いた。
レオ「酔いそう///」
レオの手が再び伸ばされ、私のうなじを優しく掴む。
「……っ…」
口を開けたまま、レオが深いキスを落とした。
何度か唇をついばまれ目まいを覚えると、レオが私の身体を抱きしめる。
レオ「ごめん。俺があんなところ連れていったから///」
レオの低い声に、私ははっと顔を上げた。
(そんな……私が勝手についてきたのに)
私は何とか話題を変えようと、腕の中でレオを見上げる。
「ねえ、レオ。欲しいものってない?」
レオ「……欲しいもの?」
私の問いかけに少し頭を悩ませると、レオが静かに口を開いた。
レオ「そうだな」
笑みを浮かべて腕の中の私を見おろし、からかうように告げる。
レオ「○○ちゃんが隠していることを話してくれたら、答えるよ」
レオ「……どうする?」
レオの言葉に、私は微かに息を呑んだ。
「…………」
(欲しい物は聞いておきたいけど……)
(誕生日プレゼントにしたいからだなんて、言えないし)
ちらりと見上げると、レオが小さく首を傾げる。
(レオはきっと何でも喜んでくれるけど、出来るだけびっくりさせてあげたいから)
黙ったままいると、レオがふっと目を細めた。
レオ「舞踏会は、明日か……」
腕から力を抜き、私から身体を離す。
レオ「それまでにしゃべってもらえるように、頑張るよ」
そして私の髪についた髪飾りに触れ、レオがふっと笑みを浮かべた。
レオ「だから、頑張ろうね。○○ちゃんも……」
(舞踏会の、ダンスのことだよね……?)
私もレオを見上げ、笑顔で頷く。
「うん……!」
そして、舞踏会当日の朝…―。
「うーん」
私は部屋で、一人頭を悩ませていた。
(ケーキは用意するとして、他には何かないかな……)
レオの誕生日プレゼントを何も決めていない私は、
舞踏会当日の、朝早くから頭を悩ませていた。
(こうして考えていてもらちがあかないし)
「…………」
私は立ち上がり、ドアの方へと顔を向ける。
(書庫で、何か調べてみようかな……)
まだ人気のない城の中を抜け、私は書庫の扉を開いた。
「あれ……」
扉を開いた瞬間飛び込んできた光景に、私は思わず目を瞬かせる。
(レオ……?)
そこには椅子に腰かけ眠る、レオの姿があった。
テーブルの上には、開きっぱなしになった分厚い本が置かれている。
「…………」
私は起こさないようにそっと近づき、レオの顔を覗きこんだ。
(もしかして、朝までお仕事をしていたのかな……)
私は息をつき、かけたままのレオの眼鏡に手を伸ばす。
「……レオ、頑張りすぎないようにね」
(レオは本当に、全然休まないから……心配だな)
すると突然、レオの手が私の手首をとらえた…。
「……っ…」
驚き見おろすと、レオがゆっくりとまぶたを開く。
レオ「……その言葉、そのまま返すよ」
「レオ、起きてたの?」
レオ「ん……」
低い呟きに鼓動を速めると、レオが視線を上げた。
レオ「○○ちゃんは、」
レオ「どうしてこんな朝早くに、書庫なんかにいるの?」
「それは……」
(誕生日プレゼントのヒントを探しにきて、)
(まさか本人がいるとは思わなかったな……)
言い淀んでいると、レオがふっと目を細める。
そして掴んだ手首を、ぐいっと引いた。
「……っ!」
私の身体はいつの間にか、レオの膝の上に乗っていた。
「れ、レオ……」
レオ「夢の続きかと思ったよ。だから……」
「え?」
(夢って……)
笑みを浮かべたまま、レオが私の身体を抱き寄せる。
レオ「本物かどうか、確かめさせて///」
そして胸に顔をうずめると、
レオが開いた鎖骨あたりに、キスを落とした。
「……レオっ」