私はチョコを手に持ったまま、夜の廊下を歩いていた。
ほのかな灯りが、足元に影を伸ばしている。
(今日中に、渡せたらいいんだけど……)
ルイの姿を探し歩いていると、私はやがて庭へとたどりついた。
「…………」
庭に出ると、私は足を止め白い息を吐く。
そこには、探していた後ろ姿があった。
ルイ「○○……?」
振り返ったルイが目を細め、低い声を響かせる。
ルイ「……どうしたの?」
「…………」
私は真っ直ぐにルイを見上げ、口を開いた。
「ルイに、逢いたくて」
自分の言葉に顔を赤く染めながらも、私はそっと尋ねる。
「ルイは……?」
ルイ「…………」
するとわずかに驚いたように眉を上げたルイが、
ふわりと目を細め笑みを浮かべた。
ルイ「……うん、俺も」
そして手を伸ばし、歩みよる私の身体を抱き寄せる。
ルイ「ここにいれば、○○に逢えるような気がしたから」
(ルイ……)
ルイの背中に手を回し、私はぎゅっと力を込めた。
(あったかいな……)
冷たい風が髪を揺らすものの、お互いの身体はすでに熱を帯びている。
「ルイ……どうやって噂のこと、解決してくれたの?」
ルイ「…………」
尋ねると、ルイがふと目を細めた。
そして顔を寄せ、低い声でささやく。
ルイ「内緒」
その言葉に思わず顔を上げると、ルイの柔らかな唇が重なった…。
冷たい風が吹く庭園で、私は温かなルイの唇を感じていた。
「ん……っ…」
やがて唇が離れると、ルイが耳元でささやく。
ルイ「……部屋に、行こうか」
その響きに、寒さのせいではなく私の背中が震えた。
二人でこっそりと部屋に戻ると、
ドアを閉めた瞬間、ルイが私の身体を後ろから抱き寄せた。
「ん……」
首筋に触れる唇の感触に、私は慌てて身をよじらせる。
「ま、待って……」
ルイ「……ん?」
私はルイと向かい合うように振り返り、持っていたチョコを差し出した。
「ありがとう、ルイ」
(きっと、私の知らないところで色々と努力をしてくれたんだよね)
「今日はバレンタインで、想いを伝える日だから……」
微かに首を傾げるルイを見上げ、私は頬を赤く染めたまま言う。
「大好き、ルイ」
ルイ「…………///」
私の言葉の余韻が、静寂の中を漂っていった。
やがてルイがチョコを受け取り、口元に笑みを浮かべて告げる。
ルイ「うん。俺も///」
そして腰をかがめ、私の唇に軽いキスを落とした。
「……っ」
驚く私の顔を覗きこみ、悪戯っぽく尋ねる。
ルイ「食べても、いい?///」
「……う、うん…」
(チョコのこと、だよね……)
私が頷くと、ルイがチョコの箱を開きその一粒を口の中に入れた。
そして、次の瞬間…―。
「……っ」
ルイが顔を寄せ、強引に唇を重ねる。
驚き息を呑むと、その隙間にチョコの香りの吐息が入り込んだ。
「ん……っ…」
舌が重なると、甘さが口の中いっぱいに広がる。
「……んんっ」
何度もキスを繰り返され、私は息を荒げてルイの腕を掴んだ。
ルイ「…………///」
やがて音をたてて唇が離れると、ルイが私の顔を覗きこむ。
ルイ「……美味しい?///」
「……!」
ルイの言葉に、私はかあっと頬を赤く染めた。
(そんなこと、聞くなんて……)
それでも答えを待つルイの視線に、私は小さく頷く。
するとルイが、ふたたびからかうように口を開いた。
ルイ「じゃあ……もっとって言って?///」
「え?」
ルイが箱からもう一粒、チョコを口の中に放り込む。
そして私を見おろすと、ふっと目を細めた。
「……っ」
(今日のルイ、意地悪だ……)
思いながらも、私は掠れた声で口にする。
「……もっと…」
するとルイが嬉しそうに笑みを浮かべ、私の顎に指先を添えた。
ルイ「うん///」
そしてわずかに口を開いたまま、顔を寄せた…。
「ん……っ…」
チョコ味のキスを繰り返しながら、ルイが甘いため息をつく。
ルイ「…………///」
そして私の身体をぎゅっと抱きしめると、耳元で呟いた。
ルイ「……もう、離れたくないんだ///」
「……え?」
(今、何て……)
身体に回る腕にぎゅっと力が込められ、私はルイの肩に指先を置く。
ルイ「離さないけど、いい?///」
耳に触れたルイの唇が震え、低いささやきが聞こえた。
「……っ」
私は指先に力を込めながら、小さく頷いて答える。
(嫌な訳は、ないから……)
「……私も、ずっと側にいたい」
ルイ「…………///」
そっと告げると、笑みを浮かべたルイが私の身体を軽く抱きあげた。
そうして私の身体を離さないまま歩き、ベッドに腰かける。
「ルイ……?」
膝に乗ったまま、私は戸惑いの目でルイを見おろした。
するとルイが私の頬に手を伸ばし、
指先でそっと曲線をなぞるように動かしていく。
「あ……」
思わず唇を開くと、ルイが上目づかいのまま軽く首を傾げた。
ルイ「……○○から、キスしてくれる?///」
膝の上に乗せた私の顔を覗きこみ、ルイが小さな声で言う。
「……っ」
その不安そうな視線に、私の鼓動が大きく跳ねた。
(ルイも……何か不安に思う時があるのかな…)
私はそっと、ルイの滑らかな頬に触れる。
そして鼓動を高鳴らせるまま顔を寄せ、音もなく唇を重ねた。
「…………」
唇を離し顔を上げようとすると、ルイの手が私の腰元を引き寄せる。
そして下からすくいあげるように、深いキスをした。
「ん…っ…」
まるで本物のキスはこれだと教えるように何度も舌を絡め取られ、
私はルイに必死で応えていく。
ルイ「…………///」
やがてルイの背中がベッドにつくと、私の身体もルイの上で横になった。
「……ぁ…」
ルイの手が、ドレスのリボンを解いていく。
指先が肌に触れる度、腰元が跳ねるように震えた。
(きっともう、ルイ以外の人は選べないんだろうな)
(こんなに、甘さを知ってしまったら……)
ルイ「もっと///」
ルイの手が、私の首筋を優しく引き寄せていく。
ねだられるまま唇を重ねると、ルイが私の身体を反転させた。
「……っ」
今度はルイが私の身体に覆いかぶさると、胸元にキスを落としていく。
やがて胸元に顔をうずめたまま、ルイが呟いた。
ゆっくりと視線を上げ、私を捉える。
ルイ「まだ足りないから……///」
ルイ「全部、くれる?///」
「……ぁ…」
私は柔らかなルイの髪に指先を伸ばしながら、何度も頷いた。
(ルイにだったら……全部、上げてもいい)
そして一晩中、身体に触れるルイの優しいキスに声をあげていった…。
Premiere End