静かな部屋で一人チョコを見おろしていると、不意にドアが叩かれた。
「……え?」
(こんな時間に、誰だろう)
ゆっくりとソファから立ち上がり、ドアの方へと視線を向ける。
(もしかして……)
そっと扉を開くと、そこには思い描いた人の姿があった。
ルイ「○○」
「ルイ……」
低い声音で名前を呼ばれ、鼓動が大きく跳ねる。
私は思うよりも早く手を伸ばし、ルイの身体に抱きついた。
「……っ」
温かな身体に、私は息を呑む。
ルイ「…………」
ルイも黙ったまま、私の身体を優しく抱き締め返してくれた。
やがてルイが、後ろ手にドアを閉めていく。
パタンと音が響くと、ルイが掠れた声で尋ねた。
ルイ「……どうしたの?○○」
「あ……」
(ルイに会えたことが嬉しくて、つい……)
かあっと首筋を赤く染めながら身体を離すと、
ルイが私の顔を覗きこむ。
ルイ「もしかして」
くすっと笑みを浮かべたルイが、どこか悪戯っぽくささやいた。
ルイ「俺のこと、待ってた?」
ルイに顔を覗きこまれ、私は頬を火照らせていった。
恥ずかしく思いながらも、小さく頷いて答える。
「……うん」
すると目を細めたルイが、息をつきながら口を開いた。
ルイ「そっか///」
ルイの指先が、いつの間にか私の耳元の髪をかきあげるように撫でている。
「ルイ、どうやって噂のこと……」
ルイ「秘密」
耳たぶに触れた指先の感触に背中がぴくりと震えると、
ルイが顔を傾け、キスをした。
「…っ…ん…」
最初は触れるだけのキスが、やがて唇を甘くかむようについばんでいく。
「……ル…っ」
吐息混じりに名前を呼びかけると、その声ごと奪われてしまった。
「んん…っ…」
熱い舌が重なり、私は身体をよじらせながらルイの腕を掴む。
(身体から力が抜けて、立っていられない……)
身体がふらついてしまい、私は近くのテーブルに手をついた。
(あ……これって)
指先が、小さな箱に触れている。
指先に触れた瞬間、私はその箱のことを思い出した。
「っ…ルイ、待って……」
唇が離れた合間にささやくと、ルイがぴたりと動きを止める。
ルイ「…………」
ルイの身体がゆっくりと離れ、私はテーブルの上の箱を手に取った。
そしてそれを、ルイへと差しだす。
「これを、ルイに……」
ルイ「……なに?」
微かに首を傾げ、ルイが箱を見おろす。
「今日は、バレンタインだから」
(恋人にチョコを渡して、想いを伝える日……)
(ルイのおかげで、スキャンダルも乗り越えることが出来た)
「色々な感謝の気持ちと、想いを込めて……」
「……受け取ってくれる?」
ルイ「…………///」
尋ねると、箱に手を添えルイが笑みを浮かべた。
ルイ「うん。ありがとう///」
チョコを受け取るルイの姿を見上げ嬉しく思いながら、
私は全く別の想いを抱く自分に気づく。
(ルイは今日、たくさんチョコを貰ったのかな……)
じっと見つめていると、視線に気づいたルイがふっと目を細めた。
そして手の中のチョコを、私の手に返す。
(え……?)
驚き目を瞬かせると、ルイが小さく唇を開いた。
そしてにっこりと笑みを浮かべながら、告げる。
ルイ「食べさせて///」
「え……!?」
唇を微かに開いたまま、ルイが私を見おろしている。
そのわずかに甘えるような眼差しに、私の鼓動が高鳴っていった。
(何だかルイ……可愛い)
私はドキドキする胸を抑えながら、手の中の箱を開く。
そして顔を上げると、指先でつまんだチョコを差し出した。
「ルイ……」
ルイ「…………」
まつ毛を伏せ、ルイが私の指先からチョコを口にくわえる。
ルイ「うん、美味しい」
笑みを浮かべるルイが、再び首を傾けて私を見た。
ルイ「もう一つ……いい?」
「う、うん……」
もう一度手を差し出すと、今度はルイが手首を優しく掴む。
そしてチョコごと、私の指を口に含んでしまった。
「……っ」
驚き見上げると、ルイが長いまつ毛を伏せたまま私の指先を舐めた。
「あ……っ…」
(何だか、変……)
ルイの仕草に、腰元に甘い疼きが広がっていく。
「や……ル、イ…」
ルイ「…………」
吐息混じりに名前を呼び軽く手を引くと、ルイが顔を上げた。
そして、ふっと口元に笑みを浮かべて言う。
ルイ「○○、すごい色っぽい顔してるね」
ルイの低い声が耳に届き、鼓動が痛いほどに跳ねる。
ルイ「なんで?」
「なんでって……」
言い淀むものの、私はやがて真っ赤な顔を上げ口を開いた。
「ルイのせい……だよ」
(こうして過ごすことも久しぶりだから、緊張してるのかもしれない…)
ルイ「…………///」
するとふっと吹きだすように笑い、ルイが顔を寄せた。
ルイ「……可愛い」
「ん……っ…」
ルイの手が強く腰元を引き寄せ、私は深いキスに必死で応えていく。
やがて身体から力が抜けると、ルイが私の身体をソファに押した。
「あ……」
倒れるようにソファに腰を落とすと、私は涙が滲む目でルイを見上げる。
ルイ「…………///」
するとソファに膝を置いたルイが、
ゆっくりと私の身体に覆いかぶさりながら口を開いた。
ルイ「……次こんなことがあったら、その時は///」
ルイの低い呟きが、耳に触れる唇ごしに震えながら響く。
ルイ「我慢出来ないかもしれない///」
「ルイ……?」
(こんなことって……スキャンダルのことだよね)
背中にそっと手を添えると、ルイの手が私のドレスの裾を割った。
「……っ」
こらえきれず吐息をこぼすと、ルイが言う。
ルイ「もう離れたくないから」
「……う、ん…」
脚をなであげるルイの指先を感じながら、私は頷いた。
(私だって、もう離れたくない)
そして背中に置いた指先に力を込め、名前を呼ぶ。
「ルイ……」
その声に応えるように、ルイは一晩中私の身体に優しいキスをくれた…。
Sweet End