手作りのチョコを手に、私はレオの執務室を訪れていた。
ドアを叩き、部屋の中をのぞきこむ。
「レオ……」
(あれ……?)
声をかけるものの、ソファに横になるレオが返事をする様子はない。
ゆっくりと近づき顔をのぞきこむと、静かな寝顔が見えた。
レオ「…………」
(レオが眠っているだなんて、珍しいな……)
「…………」
(起こさないほうが、いいかもしれない)
そっと置いて帰ろうと、執務机へと足を向ける。
そしてソファの前を通りがかった、その時…―。
レオ「だめだよ」
「……っ」
レオの手が、私の指先を掴んでいた。
レオ「帰っちゃ、だめだよ」
「あ……う、うん」
(何だか、いつものレオと雰囲気が違うみたい)
(手も、すごく温かいし……)
レオのどこか甘えるような掠れた声の響きに、私の鼓動が大きく跳ねる。
途端に手の中から、チョコが落ちてしまった。
「レオ、手を……」
レオ「離さない」
「え……っ」
いつもよりも柔らかな力で引き寄せられ、
私の身体はレオにかぶさるように倒れた。
「あ……」
レオの顔が間近に迫り、私は思わず息を呑む。
真っ赤になった私の顔に笑みを浮かべると、レオが頬に指先を這わせた。
レオ「……可愛いな、○○ちゃん」
それだけを告げると、レオが私のうなじに手をかける。
そのまま引き寄せると、ゆっくりと唇を重ねた。
「ん……」
レオの温かな体温が、私の唇の輪郭をたどっていく。
やがて唇が離れると、
レオがそのままぐっと私を引き寄せ、肩口に顔をうずめた。
「…っ……レオ、あの」
(チョコを渡しに来たのに、このままじゃ何も話せない……)
私は高鳴る鼓動を隠しながら、慌てて視線を床へと向ける。
「待って」
レオ「……ん?」
顔を離したレオが私の視線を追い、チョコに目を止めた。
レオ「…………」
そして私と共にゆっくりと身体を起こすと、
私の顔を覗きこみながら尋ねた。
レオ「チョコ……俺の、だよね?」
「う、うん……」
頷き答えると、身体を起こしたレオが落ちたチョコを拾い上げた。
レオ「…………」
そしてすぐに包みを開くと、チョコを一粒口に入れる。
レオ「美味しい。ありがとうね、○○ちゃん」
「…………」
レオの微笑みに、私は思わず見惚れてしまった。
「……っ」
(レオって本当に、魅力的な人なんだな……)
やがて気づいたレオが、軽く首を傾げて私の顔を覗きこむ。
レオ「……どうしたの?」
「…………」
私はレオから視線を逸らし、小さく口を開いた。
「……隣にいるのが私でいいのかなと思って」
(きっともっと、ふさわしい人はたくさんいるはずなのに)
レオ「え?」
私の言葉に、レオがわずかに目を見開く。
やがてふっと吹きだすように笑いだした。
レオ「じゃあ…チョコのお礼に、一つずつあげていこうか?」
「…………」
レオが手を伸ばし、私のうなじあたりに触れる。
レオ「○○の好きなところ」
レオにうなじを引き寄せられ、私は戸惑いに目を瞬かせる。
「レオ……?」
掠れた声で名前を呼ぶと、レオがふっと目を細めた。
レオ「白い肌でしょ……」
うなじに触れていた指先が、ゆっくりと首筋をたどっていく。
「……っ」
びくりと身体を震わせると、レオがくすっと笑みをこぼした。
レオ「柔らかい耳たぶも……」
レオが顔を寄せ、私の耳たぶを優しくかむ。
レオ「好きだな」
「ぁっ……」
思わず漏れた自分の甘い声に、私は息を呑んだ。
「レ、レオ……もういい」
レオ「だめ」
私の言葉をふさぐように、レオが強引に唇を重ねる。
「んっ…っ……」
何度も下唇をついばまれ、私はレオの腕を強く握った。
吸いつくような唇が離れると、レオがささやく。
レオ「甘い唇も、全部」
そして熱い吐息をつく私の頬に手を添え、
涙が滲んだ私の目を覗きこんだ。
レオ「○○以外に、いないよ。側にいてほしい人なんて」
レオの唇が首筋をたどり、胸元へと降りていった。
「ん……っ…」
いつの間にか解けたドレスのリボンが、ソファの上から流れ落ちている。
レオの指先が素肌を撫で、曲線をなぞる度に身体の芯がうずいた。
「……っ…レ、オ」
静寂の部屋に、レオが身体中に落とすキスの甘い音だけが響いていった。
そして翌朝、私は頬に当たるレオの微かな寝息に目を覚ました。
「……ん」
まぶたを開くと、目の前にはレオの寝顔が見える。
(……何だか昨日は、チョコと一緒に食べられたみたいだった)
昨夜のことを思い出し頬を染めると、私はそっと腕を上げた。
そしてレオの頬にそっと指先を添えると、微かな声で告げる。
「レオ……大好き」
(レオの言葉と温もりさえあれば、何があっても信じていける)
レオ「…………」
するとレオが目を閉じたまま、ふっと唇に笑みを浮かべた。
(あれ……?)
レオ「俺も」
低く呟いたレオが、私の背中を抱き寄せる。
「ん……っ…」
レオの熱い舌が重なり、私は声をあげた。
身体をよじらせると、レオが身体を起こし私に覆いかぶさる。
やがて絡まり合った舌が離れると、レオが目を細めた。
レオ「何度でも言うよ///」
レオ「もう、君だけだって……///」
「レオ……」
レオの顔が、再び寄せられる。
キスの予感に身体を震わせながら、私はそっと目を閉じていった…。
Premiere End