音楽会で演奏する楽器にハープを選んだ私は、一人練習を重ねていた。
「…………」
なかなか上手く演奏することが出来ず、私は思わずため息をこぼす。
(少し、休憩に行こうかな……)
休憩から戻った私は、ホールから聞こえる美しい音色に足を止めた。
「え……?」
そっと覗いてみると、そこにはハープの前に腰かけるルイの姿がある。
(ルイ……?何だか、すごく綺麗……)
長く綺麗な指が爪弾く音色に思わず聞きいっていると、
やがてルイが私に気づき音を止めた。
ルイ「……○○」
立ち上がるルイに近づき、私はその顔をまじまじと見上げる。
「ルイ、ハープを弾けるの?」
ルイ「どうかな。上手くはないよ」
軽く首を傾げるようにして答えるルイに、私は言った。
「あの……教えてもらっても、いい?」
ルイ「教える?」
面食らったようにわずかに目を瞬かせたルイは、
やがで口元に笑みを浮かべて頷いた。
ルイ「……うん、わかった」
ルイに教えてもらえることになり、
だんだんうまく弾けるようになってきた私は…―。
「あれ?」
ふと顔を上げると、窓の外の暗さに気づいて思わず声をあげた。
(もうこんな時間……夢中になっていて、わからなかったな)
私はルイを見上げ、笑みを浮かべて言った。
「ありがとう、ルイ」
ルイ「…………」
ルイの視線は、私の指先に落ちていた。
ルイ「指、どうしたの?」
「え?」
先程までハープの弦を弾いていた指を見ると、わずかに血が滲んでいる。
(さっき引っかけちゃったのかな……気づかなかった)
「このくらい、大丈夫だよ」
ルイ「…………」
私が言うのと同時に、ルイが私の手首を優しくとった。
ルイ「だめだよ」
そしてそのまま、私の指を口に含む。
「……っ」
(ルイ……?)
指に触れるルイの舌の感触に、鼓動が高鳴っていった。
やがて唇が離れると、ルイが言う。
ルイ「あとでちゃんと、手当てしないと」
「う、うん……」
指先から全身が痺れるような感覚に、私の頬が真っ赤に染まった。
その頬に気づき、ルイが耳あたりの髪をかきあげるようにすく。
「あ……」
(こんな顔を見られるのは、恥ずかしい)
思わず顔を背けようとすると、ルイがふっと目を細めて尋ねた。
ルイ「……だめ?」
「……っ」
(そんな風に、覗き込まれたら……)
「だめじゃ……ないよ」
ルイ「…………///」
ルイの綺麗な顔に笑みが浮かび、やがてゆっくりと寄せられた。
唇が重なったまま腕を上げると、指がルイの首筋に触れる。
指先には、ルイの髪の感触があった。
(細くて、しなやかで……まるでハープの弦みたい)
その髪先に触れたまま、私はゆっくりと眼を閉じていった…。