???「あれ、こんなところで、どうしたの?」
振り返ると、そこにはレオの姿があった。
レオ「もしかして、けんか?」
笑みを浮かべ、レオが私とアランの間に入って来る。
レオ「ホワイトデーも近いっていうのに、よくやるよ」
そうしてレオが、アランへと視線を向けた。
アラン「…………」
わずかにはっとした様子のアランが、黙ったまま去っていってしまう。
「アラン……」
(どうしよう……)
小さくなる背中を見つめ、私は痛む胸の前でぎゅっと手を握った。
レオ「何があったの?」
私の顔を覗きこみ、レオが尋ねる。
レオ「……それに、珍しい格好してるね」
「あ、これは……」
私は改めて自分の格好を見おろし、頬を赤らめながら説明を始めた。
レオ「へえ、メイドの代わりか……」
私の話を聞き、レオがふっと目を細める。
レオ「○○ちゃんらしいね。でも、アランの気持ちもわかるかも……」
「それって……」
尋ねようとすると、レオが笑みを浮かべて言った。
レオ「だめだよ、○○ちゃんが自分で気づかないと」
レオ「ヒントは、そうだな……」
そして何かを思いついたのか、不意にからかうような表情を浮かべて告げる。
レオ「……○○ちゃんが、アランの専属メイドになっちゃったら?」
「え……?」
驚きに目を瞬かせる私に、レオが面白そうに言った。
レオ「アランの側で働けるよう、俺から言っといてあげるね」
レオの口利きで騎士宿舎の掃除をまかされた私は、
目深にかぶった布の下から、そっとアランの姿を探していた。
(どうにか、アランに会えないかな)
(もう一度話をして、わかってもらいたい……)
考えながらも、私は窓を拭き始めた…。
闘技場から戻ったアランは、一人廊下を歩いていた。
すると、目の前を歩く若い騎士たちの会話が耳に入ってくる。
騎士1「あの子、可愛いな」
騎士2「確かに。あんなに一生懸命掃除してるって、珍しいしな」
アラン「…………」
ふとその視線を追うと、その先に見えたのは…―。
アラン「あいつ……」
呟くのと同時に、アランは何も考えないままに足を踏み出していた。
アラン「…………」
そんな自分に気づいて、アランは足の動きをぴたりと止めた…。
足を止めたアランが、眉を寄せた。
そして何も言わないまま背を向け、先程とは別の方向に歩きだす…。
騎士宿舎の掃除をすることになった私は、懸命に窓を拭いていた。
(代わりで仕事をしているのに、さぼっていたら意味がないから……)
滲んだ汗を拭っていると、後ろから誰かに声をかけられた。
男1「ねえ、君さ……」
男1ってあるけど2以降はでてきません(・∀・)ww
「え?」
呼び声に思わず振り返った、その時…―。
「……!」
急に違う方向から腕を引かれ、私の身体がよろけてしまう。
慌てて見上げると、そこにはアランの姿があった。
「アラン……!?」
アラン「…………」
不機嫌そうに眉を寄せたアランが、騎士たちを無視してそのまま私の手を握り歩いていく。
やきもちーーーー(*ノωノ)
(え……?)
強引に連れられながら、私はアランの姿を見上げた。
「アラン、なんで……」
するとアランが、小さな声で呟く。
アラン「俺だって、知らねえよ」
「……?」
手を引かれるまま、私はアランの部屋へと入っていった…。
ドアを閉めると、部屋の中に静寂が落ちる。
「…………」
握られたままの手から視線を上げ、私はアランにそっと尋ねた。
「アラン、怒ってる……?」
アラン「…………」
すると手を離し、アランが顔を背け口を開く。
アラン「……喜んでるように見えるのかよ」
不・機・嫌( ̄▽ ̄)w
ため息をつくアランが、ベッドの上に腰を降ろした。
(どうしよう、やっぱり私がメイドとして働くことが嫌なのかな……)
考えていると、アランが言う。
アラン「どうせ言っても聞かねえんだろ?ならこの部屋の掃除でもしてろよ」
「え?」
思いがけない言葉に、私は顔を上げた。
アラン「この部屋にいろよ。それでもいいんだろ?」
「うん、大丈夫だけど……」
じっと見つめるアランの視線に気づき、私は小さく頷く。
「うん、わかった……」
(アランの部屋の掃除なんて、何だか緊張する……)
想いながらも、私は掃除を始めた。
そして、しばらく掃除を続けていると…―。
目を細め、アランが私の耳元を指差しながら言う。
アラン「そんなの持ってたか?」
「え?」
アラン「耳のやつだよ」
アランの言葉を聞き、私は耳元に手を当てた。
「これは……」
そこには、新しく買ったピアスがある。
(こんな所まで見られてるなんて……)
「……今日の休みのために用意したものだから」
アラン「……へえ」
(何でこんなに、視線を感じるんだろう……)
(ただ掃除をしているだけなのに、何だか恥ずかしい)
「アラン、あの……」
見上げるアランの視線に顔が赤く染まり、私は目を逸らした。
アラン「なに」
耳たぶまでもが熱くなり、私は慌てて口を開いた。
「あの……アランは、どこかへ出かけたりしないの?」
尋ねると、アランがベッドに横になり私を見上げてため息をつく。
アラン「誰かさんのおかげで、出かけなくてすんだんだよ」
「あ……」
それ以上は何も言うことが出来ず、私は黙々と掃除を続けていった。
(片付けを終えたら、アランと時間を過ごせるかな……)
考えていると不意にベッドが軋み、アランが立ちあがる。
(アラン……?)
何もいわないまま、アランが私の方へと近づいてきて…。