美羽のにゃんにゃん物語

イケメン王宮×王子様のプロポーズSeason2
次世代を担う異種混合プリンセスブログ……かもしれない(・∀・)


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男「お前、知ってるぞ」


ジル「…………」


男の言葉に、ジルがぴくりと反応を返す。


男「プリンセスを選んだ教育係だろ!ということは、この女……」


男の人の大きな声に、広場で過ごす人々の視線が集まってきた。


(……どうしよう)


さあっと顔が青ざめるのを感じると、

この場にそぐわない笑い声が響いてくることに気づく。


「え……」


戸惑うまま見ると、ジルが男の人の言葉を遮るように笑っていた。


ジル「面白い嘘ですね」


そして私の腰元を抱き寄せると、ジルが口を開く。


ジル「これは、私の妻ですよ」


(え……っ)


ジルのついた嘘に、私は思わず小さく目を見開いた。


ジル「どうしました?○○……行きますよ」


ジルが私の手を取り、男の人とすれ違うように歩きだす。


「は、はい……」


私は前のめるように、ジルの後を追ってその場を後にした。







ジルが黙ったまま私の手を引き、人気のない路地裏へと入っていく。


(ジル……?)


先程とは違い込められた痛いほどの力に、私は息をついた。


(怒っているのかな……)


やがて手を離すと、ジルが振り返り私を見おろす。


ジル「全くあなたは少し目を離しただけで……」


大きくため息をつくと、ジルが視線を逸らす。


「あの、ジル……ごめんなさい」


(私の不注意で、嫌な思いをさせてしまった)


思わず謝ると、ジルがふっと目を細めた。


ジル「……あなたは悪くありませんよ」


少し困ったように眉を寄せ、ジルが低く呟く。


ジル「目を離した、私が悪いんですから」


ジルがゆっくりと両手を開き、私を見おろした。


「……っ」


私はその目に誘われるように、腕の中に身体を寄せる。

するとジルの手が、私の背中を抱き寄せた。


ジル「……嘘だといえることにも、限度はありますね」


「え……?」


(どういうことだろう……)


ジルの指先が背骨をたどるように降り、私はびくりと肩を揺らす。


ジル「たとえば……」


「……っ」


甘く走った痺れに、私はジルの服の裾を掴んだ。


ジル「……こうして触れてしまえば、嘘だと主張出来なくなりますからね///」


ジルの低い声が、耳元に吐息混じりに響く。


「……あ」


ジルの言葉に、私は指先にぎゅっと力を込めた。


(そうだ、今日は……)


背中を寄せていたジルの手が、ゆっくりと離れていく。


「…………」


(そうだ、今日は……恋人同士だって「嘘」を付ける日…)

(触れてしまったら、嘘ではないとばれてしまうから)


ジルは身体を離すと、くすっと笑みを浮かべた。


ジル「嘘を本当にするという話しは聞きますが、」

ジル「本当を嘘にしなければいけないとは……ややこしいですね」


私はジルの身体から離れ、その顔を見上げる。

すると視線に気づいたジルが、軽く首を傾げて私の顔を覗きこんだ。


ジル「……どうしました?」


「いえ、何でもありません……」


小さく首を横に振ると、ジルが手を差し出す。


ジル「手を繋ぐくらいなら、大丈夫でしょう」


「…………」


私は黙ったまま、その手を取った。


(嘘という言葉だけで、何でこんなに寂しいんだろう……)







そして、日暮れが近づいた頃…―。

私はジルと共に、街の様子を高台から眺めていた。


ジル「そろそろ、戻らなくてはなりませんね」


それだけを呟くと、ジルが私の顔を覗きこむ。


ジル「○○……?」


ジルに顔を覗きこまれ、私は慌てて頷き返す。


「は、はい……」


ジル「…………」


するとふっと目を細めたジルが、どこか意地悪く口を開いた。


ジル「どうしました?随分素直ですね」

ジル「それとも、嘘ですか?」


「え……嘘なんかじゃ」


(私も、城に戻らなければと思っていたから)


その時、ジルの手が私の手の甲に触れる。


「……っ」


ぴくりとまつ毛が揺れると、ジルが誰にも見られないうちに手を引いた。

離れていく指先に、理由もわからないまま胸が痛む。


(何だか、自分の気持ちがわからない)


このままここにいれば、嘘の恋人でいられる。

城に帰れば、秘密の恋人に戻ることが出来る。


(……私は本当に、帰りたいのかな?)


考えていると、ジルがふっと目を細めて私を見おろした。

城下から吹き上げるわずかな風が、ジルの髪をサラサラと撫でる。


ジル「やはりこの祭りは、あなたには向いていないようですね」


(え……?)


思いもかけない言葉に目を瞬かせると、ジルが告げた。


ジル「嘘をつけないんですよ、あなたは」


ジルの声が、低く耳に届く。


「そんなこと……」


言いかけると、ジルの手が私の耳元に伸びた。

指先が優しく、ピアスに触れている。


ジル「隠すことは出来ても、嘘はつけていませんよ」


そうして唇に、淡く笑みを浮かべる。


ジル「思っている以上に、素直だと思った方がいいでしょうね」


「…………」


(そんなことない……)


ジルの言葉に、私は静かに瞬きを繰り返した。

そして、高鳴る鼓動の隙間で思う。


(やっぱり、私は嘘つきだと思う。だって……)


ジル「……城に、戻りますか?」


もう一度尋ねるジルに、私は今度は首を横に振った。


「もう少しだけ、ここにいてもいいですか?」


(本当は「ここにいたい」じゃない……)


ジル「…………」


私の言葉に目を細め、ジルが髪を撫でる。


ジル「……このくらいなら、許されるでしょう?」


その仕草が気持ちよくて、私はゆっくりと目を閉じた。


「……はい」


頭を肩にもたれかけさせると、息をつく。


(嘘の恋人のままいたい訳でもない)

(私はただ、こうやってジルに触れていたいだけだから)





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