倒れた○○の身体をベッドに横たえると、
アランは黙ったまま、その額に手を置いた。
アラン「…………」
手のひらに、○○の身体の熱が伝わってくる。
アラン「くそ……っ」
アランが部屋を見渡し、近くの棚へと近づいていった。
引き出しを開けると、その中を乱暴にあさる。
アラン「…………」
やがて薬箱を探しだすと、アランがベッドに腰かけてその中を探した。
そこに求めていた薬を見つけ、ほっと息をつく。
アラン「あると思った……」
それは子どもが良く使う、解毒作用のある飲み薬だった。
そして眠ったままの○○を見おろすと、その身体の脇に手を置く。
アラン「……頼むから、目覚ませよ」
アランが片手で薬の瓶をあおり、中身を口に含んだ。
そしてベッドを軋ませながら、顔を寄せて…―。
「ん……」
唇が重なり、薬を飲みこむ○○がわずかに声をあげた。
きゃーーーー!口移し(*ノωノ)♡♡
そして、真夜中を告げる鐘が鳴るころ…―。
「…………」
私はゆっくりと、まぶたを開いた。
(私、どうしたんだっけ……)
身体からは痺れもすっかりと抜け、楽になっている。
そっと身体を起こすと、どこからか物音が聞こえてきた…。
ベッドの上で身体を起こした私は、物音がする方に顔を向ける。
するとそこには、アランの姿があった。
アラン「…………」
「アラン……」
(そうだ。私、倒れて……)
何が起きたのか思い出し、私は慌てて口を開く。
「あの、ごめ……」
すると言葉を遮るように、アランが私の身体を強く抱き寄せた。
アラン「……俺が悪かった」
「そんな……」
(アランのせいなんかじゃない。私の不注意だったのに……)
そーだそーだ!
普通は知らない人からもらった物なんか食べないよヽ(`Д´)ノ
どんだけ食い意地張ってんだ!
「私が……」
口にしようとすると、途端にアランの腕に力がこもる。
アラン「…………」
アランは黙ったまま、私の身体を抱きしめていた。
(あ……)
「…………」
アランの背中に手をまわし、その身体を抱きしめ返す。
(きっと、心配かけてしまったんだ。今は心から謝るよりも……)
合わせた胸から、互いの鼓動が確かに響いていた。
「助けてくれてありがとう、アラン……」
「もう、大丈夫」
アラン「…………」
アラン「……ああ」
ようやく息をつき、アランが低い声で呟いた。
そして翌日、子どもたちがお見舞いに来てくれていた。
私が倒れている間に、リンゴを持ってきた男の人は、
警吏に連れていかれたという。
(不注意だった、私が悪いのに、)
(全部、アランが解決してくれたんだよね)
「…………」
考えていると、一人の子どもが笑みを浮かべ私の耳元にささやいた。
(え……?)
子ども「あの物語のお姫様、先生だったんだね」
「え……?」
一人の子どもに耳元でこっそりと告げられ、私は驚きその顔を見る。
子ども「さっき来てたお医者様が言ってた。だって……」
子どもたちが帰ったあと、私は改めて城から持ってきた絵本を開いた。
「……王子様のキスで、目覚めたお姫様は…」
かあっと頬が赤らむのを感じ、私は口をつぐむ。
するとそこに、アランが現れた。
アラン「何してんだよ」
ひょいっと赤くなった私の顔を覗きこむ。
アラン「また熱でも出たんじゃねえだろうな」
「ううん、そうじゃないよ……」
思わず顔を背けると、アランが眉を寄せる様子が目の端に映った。
アラン「おい」
「……っ」
アランの両手が、私の頬を包むようにして顔を正面に向ける。
間近から目を覗きこむと、アランが訊いた。
アラン「何で目逸らすんだよ」
唇に吹きかかる吐息に、先程の話を思い出してしまう。
―子ども「先生は、王子様のキスで目が覚めたんだって……」―
アラン「……?」
「それは……」
顔を正面へと向けられ、私は視線を逸らした。
(恥ずかしいからだなんて、言えない……)
アラン「……何だよ」
頬から手を離し息をついたアランが、私の膝の上の絵本に目を止める。
少し開いた窓から入り込んだ風が、
窓際に飾ってあるブーケの甘い香りを運んでいた。
アラン「ああ、これな」
ベッドに腰かけると、アランがその本を手に取る。
アラン「お前が寝てる間、うるせーから読んでやったんだよ」
「え、アランが……!?」
思いもかけない話に驚き声を上げると、
アランは口の端に悪戯っぽい笑みを浮かべた。
アラン「あいつら、この王子は俺かって聞くから……」
アランのその言葉に、私ははっと息を呑む。
(アランも、子どもたちが何て噂してるか知っているんだ……)
アランの手が私の腰近くに降り、ベッドを軋ませた。
やがて私に顔を寄せると、アランが言う。
アラン「そうだって答えといた」
うきゃーあ(〃∇〃)
「……っ」
驚きに息を呑むと、伸びてきたアランの手に額を軽く叩かれる。
アラン「ただの冗談だろ。お前だって、嘘ついてたじゃねえか」
アラン「俺とお前は、兄妹だって」
「それは……」
そして面白そうに笑うと、アランが顔を離した。
アラン「……まあ、どっちも違えけどな」
「…………」
私はアランの笑みを見ながら、そっと思う。
(確かにアランは、兄妹でも、ただ待っていただけの王子様でもない……)
(私にとって、アランは)
やがて短く息をついたアランが、腰かけていたベッドから立ち上がった。
アラン「帰る準備しとけよ。遅れるとジルがうるせーからな」
「……待って」
私はいつの間にか、立ち去ろうとするアランの服の裾を掴んでいた。
アラン「……なに」
視線を落とすアランが、静かに尋ねる。
その目に鼓動を高鳴らせながら、私はゆっくりと口を開いた。
「アラン、私……」
分岐:
アナタが嘘をつく…? →Sweet
彼が甘い嘘をつく…? →Premiere