ルイ「うそ、ついたでしょ……」
私の手を握り、ルイが尋ねる。
「嘘って……」
(もしかして、お花のことかな……)
私は晩餐会で配った花のことを思い出した。
(ルイには、飾るだけだって嘘をついていたから……)
「あ、あの……」
言いかけると、それを遮るようにルイが口を開く。
ルイ「……違う」
(え……?)
突然の言葉に目を瞬かせ顔を上げると、ルイが私から手を離した。
ルイ「嘘をついたのは、俺の方かも」
「……ルイ?」
思わず声をかけると、ルイがすっと視線を逸らす。
ルイ「自分のことだけ考えていてって、言ったけど……」
(それって……)
私は、ルイの言葉を思い出した。
―ルイ「……○○は、○○のことだけ考えていて」―
ルイ「本当は……」
ルイの視線が、ゆっくりと私へと降りてくる。
その瞳に、私の胸の奥の何かが動いた。
「……っ」
(何だろう、この感じ……目が、離せない)
やがて、ルイが告げる。
ルイ「俺のことも、考えてほしいから……///」
「……っ」
ルイの言葉と視線に、鼓動が高鳴っていく。
やがて小さく首を傾げ、ルイが私の顔を覗きこんだ。
ルイ「……わがまま、かな///」
掠れたような低い声で尋ねられ、私ははっと息を呑む。
(そんなこと……)
「…………」
ルイをただ見つめ返し、私は伝えるべき言葉を探していた。
(いつだって私は、ルイのことを考えているのに)
(……どうしたら、伝わるの?)
甘くわずかに息苦しい沈黙が、部屋を満たしていく。
やがて私は、呟くように口を開いた。
「ルイ……」
降りてしまったルイの左手を、両手で掴むように握る。
「私は……」
ルイ「…………」
その時…―。
部屋のドアが叩かれ、私は驚きに肩を揺らした。
メイド「失礼致します」
仕度を整えにやってきたメイドさんが、
ベッドの中の私へと視線を向けている。
「……っ」
私は目を閉じ、必死に眠ったふりをしていた。
隣では私を抱きしめるように、ルイが横になっている。
(いくら暗いからって、ばれてしまうんじゃ……)
不安にぎゅっと、目を閉じた時…―。
(え……っ)
ベッドの中に隠れていると、ルイの指先が私の腰をくすぐった。
「……っ」
こぼれそうになる声を押さえ必死に耐えていると、
そのうちにドアが閉まる音が響く。
私はすぐに身体を起こし、ルイを見おろした。
「ル、ルイ……っ」
見おろすと、ルイが口元に悪戯めいた笑みを浮かべている。
ルイ「ごめん」
「…………」
見上げる視線に、喉の奥がぐっと音をたてて締まった。
(こんな風に見上げられたら、何でも許してしまいそうになる)
慌てて顔を背けると、ルイの手が私の頬に伸びる。
ルイ「……○○、続きは?」
「……え?」
頬に触れるルイの指先に抗うように、私はまつ毛を揺らした。
ルイ「……さっきの」
「…………」
(きっともう、わかっているんだろうな)
そう思いながらも、私はルイに視線を向けた。
(それでも逆らえないのは……)
ルイの視線が、促すようにじっと目を覗きこんでいる。
「……ルイだけ、だよ」
(私が、ルイのことだけを考えているからなのかな)
すると嬉しそうに目を細め、ルイが身体を起こして顔を寄せた。
ルイ「……わかった///」
ルイが顔を傾け、ゆっくりと唇を重ねた。
唇に触れる温かな感触に、私の鼓動が鳴る。
「……ん…」
甘くかむようなキスに、私の唇が痺れていった。
やがて熱い吐息をつきながら、ルイが唇を離す。
ルイ「…………」
そして触れるか触れないかの距離で、ささやくように言った。
ルイ「……屋敷で笑ったのは、初めてかも///」
「…………」
ルイの顔を覗きこむと、どこか戸惑うような表情を浮かべている。
(ルイ……)
私は思わず、口元をほころばせた。
「……もっと、味方が増えるといいね」
(このお屋敷で、ルイの笑顔がもっと見れるように)
ルイ「…………」
するとふっと息をついて笑い、ルイが首を傾げる。
ルイ「味方が増えたら……隠れることもないね」
「え……?」
ルイの手が私の肩を押すと、背中がベッドへと落ちていく。
ルイ「そしたら、もっと……」
ルイがベッドを軋ませ、私の顔を覗きこんだ。
ルイ「声も、出せるよ……?」
そうして隠れていた時と同じように、私の腰元をくすぐる。
「っ……や…ルイ」
身をよじり身体を起こすと、ルイが面白そうに目を細めた。
私の肩から落ちたショールを拾いあげ口づけると、告げる。
ルイ「うそだよ……」
ルイ「ごめんね、○○」
ショールから視線だけを上げ、ルイが私を見る。
(ルイ、うそつき……)
私は喉の奥をぎゅっとさせながら、唇を結んだ。
(たぶん、ごめんだなんて思っていないのに)
分かっていながらも私は黙ったまま、
寄せられるルイの唇を受け止めていく。
「…ん…っ……」
そうして私は、寄せられる甘い疼きに翻弄されていった…。
そして、翌朝早く…―。
目が覚めた私は、ルイが眠るベッドの上で絵本をめくっていた。
(孤独だった野獣は、人間に戻ることが出来たんだ)
(お姫様の、力で……)
夢中で視線を落としていると、不意に髪に触れる手に気がつく。
「あ……」
見おろすと、寝ぼけた様子のルイが私の髪を優しく引いていた。
ルイ「……それ、あの絵本?」
「うん……すごく気に入ったから、持ってきていたの」
やがてルイがシーツの舌で身じろぎをし、私の腰元にぎゅっと抱きつく。
「……っ」
私の膝の上に頭を乗せると、そのままささやくように言った。
ルイ「……俺にも、読んでくれる?」
「え……」
甘えたような仕草でお願いをされ、私は息を呑む。
じっと見つめているとやがて、ルイと目が合った。
ルイ「…………」
「う、うん……」
慌てて視線を絵本へと落とし、私は最初から読み始める。
そして…―。
「めでたし、めでたし……」
王子様とお姫様のハッピーエンドで物語を終えると、ルイが息をつく。
ルイ「……こんな感じなんだ」
「……え?」
何か考えた様子のルイがぽつりと呟いた。
ルイ「こんな風に読んでもらうの、初めてだから」
(ルイ……)
その言葉に、私はふっと目を細める。
「じゃあこれからは、私が読んであげる」
「ルイのお願いなら、いつでも」
ルイ「…………」
するとルイが笑みを浮かべ、私の膝に頭を乗せたまま手を伸ばした。
ルイ「じゃあ、お願いしてもいい?」
「……?」
ルイの手が、私の頬の側でぴたりと止まる。
ルイ「キス、してくれる……?///」
「……っ」
(さっきのは、絵本を読むお願いのことだったんだけど……)
私は絵本を閉じ、ベッドの上に置いた。
(でも……)
ゆっくりと、顔を寄せていく。
そうして唇を重ねると、ルイが笑みを浮かべた。
(こんな笑顔が見れるなら、何度でも聞いてあげたくなってしまうな……)
考えているうちに、ルイからのキスが深くなる。
舌が絡め取られるうちに、乱れた服の下に再び指先が入っていった。
「ぁ……っ…」
素肌に触れるルイの指先に声をこらえながら、
私はシーツの上に、皺を刻んでいった…。
Premiere End