ルイ「うそ、ついたでしょ……」
「え……?」
ルイの言葉に、私はドキリと鼓動を跳ねさせる。
(嘘って、もしかして……)
何も答えられずにいると、ルイが握った手に力を込めた。
ルイ「……花を飾りたいだけって、言ってたから」
(あ……)
私は晩餐会で、ルイやメイドさんたちに配った花のことを思い出す。
その間にも、ルイの指がするりと私の指を絡めとっていった。
ルイ「……本当は、俺をどうしたかったの?」
その言葉に、私ははっと息を呑む。
「……っ」
(ルイ、私が何かをしようとしていたことに気づいていたんだ……)
ルイの身体が迫り、私は小さく後ずさった。
するとさらに間合いをつめるように、ルイが指先へとキスを落とす。
「…………」
私は真っ赤に染まった顔を背け、ためらいながらも口を開いた。
「みんなに、見てほしかったの」
ルイ「……何を?」
ルイの低い声が、私の言葉を促す。
「ルイの、笑顔を」
ルイ「…………」
わずかな沈黙が、二人の間に落ちていた。
やがてふっと目を細め、ルイが言う。
ルイ「……見せていいの?」
(え……?)
ルイの言葉に戸惑い顔を上げると、目が合う。
ルイ「……○○が見せろっていうなら、見せる」
「……あ」
ルイの視線が、私の心を見透かすように注がれていた。
(きっと、その方がいい。みんながルイを、好きになるから)
ルイの片方の手が、私の腰に置かれる。
その感触にピクンと疼いた身体を、ルイが引き寄せた。
「……っ」
ルイの胸に両手をつきながら、小さく息をつく。
(でも……)
隠しきれない胸の痛みに、私はまぶたを閉じた。
(独り占めしたい……とも思ってしまう)
ルイ「……○○」
名前を呼び、ルイが顔を寄せる。
そして私の唇の端を、わずかに甘くかんだ。
「…っ…ルイ?」
思わず声をあげると、ルイがクスッと喉をならして笑う。
ルイ「うそつかないで、言ってみて」
「…………」
(ルイはもうきっと、言わなくてもわかってるんだ……)
ルイの瞳に覗き込まれれば、嘘をつくことは出来なかった。
「本当は……」
私の言葉を待つ間、ルイがそっと額を合わせる。
さらりと流れたルイの髪が、私の額にもかかった。
ルイ「……うん」
「……っ」
ルイの低い呟き声に鼓動を大きくしながらも、私は口を開く。
「見せたくないって言ったら……ルイは、困るでしょう?」
ルイ「…………///」
口にした後で、私はルイの額を擦るように顔をうつむかせた。
何も言わないルイに、不安だけが募っていく。
やがて腰から離れたルイの手が、私の頬に添えられた。
(あ……)
そうして私の顔を上向かせると、ルイが告げる。
ルイ「困るわけ、ないよ///」
ゆっくりと顔を寄せ、ルイが私の肩口に顔をうずめた。
首筋に感じる唇の柔らかな感触と吐息の熱に、
背筋をまっすぐに貫くような痺れが走る。
「ぁ……っ…」
思わず声を上げルイの服をぎゅっと掴むと、
ルイの低い声が耳元に直接響いてきた。
ルイ「……俺も、同じ気持ちだから///」
「ル、イ……?」
そして首筋についばむようなキスを何度も落とし、ルイが言った。
ルイ「……だめだよ///」
ルイの低い声が、耳に触れた唇越しに響いてくる。
ルイ「他の人を、そういう風に呼んだら///」
「え……」
声をこぼすと、ルイが顔を上げて私をじっと見つめた。
ルイ「……その顔も、だめ///」
「……っ」
目を細めるルイの頬は、わずかに赤らんで見える。
ルイ「見せないで///」
ルイの言葉に、私はそっと息を吸いこんだ。
「…………」
(ルイも、同じ気持ちだってことかな……)
私は静かに手を持ちあげ、ルイの背中に触れる。
「うん……」
ぎゅっと抱きしめると、ルイがどこか嬉しそうに息をついた。
その吐息に誘われるように顔を上げると、
引き寄せ合うように唇が重なった。
「ん……」
触れるだけのキスが何度か落ちた後で、ルイの指が下唇を押す。
そうして、まるでそれが合言葉かのようにささやいた。
ルイ「開けて///」
「……っ…」
逆らえるわけもなく、私はそっと唇を開いた。
ルイ「…………///」
するとふっと悪戯めいた笑みを浮かべ、ルイが顔を傾ける。
ルイ「ありがとう、○○///」
唇を開くと、途端にルイの舌先が触れた。
「ん……っ…」
深く甘いキスが、ゆっくりと繰り返されていく。
私はルイの腕を掴み、崩れ落ちそうになる身体を支えていた。
(甘い、香り……)
その香りに、私はルイに渡した花束のことを思い出す。
「……んっ…」
絡みつくようなキスの後で熱を持った吐息をつくと、
私は、そっと顔を上げた。
「ルイ……」
呼びかけた声は吐息に紛れ、掠れてしまう。
「私は、後悔していないから」
ルイ「……?///」
ルイが小さく首を傾げ、私の顔を覗きこんだ。
乱れた息を整えながら、私は告げる。
(どんな時だって、ルイを笑顔に出来たことを後悔なんかしない)
(だって……)
「ルイの笑顔を一番好きなのは、私だから……」
ルイ「…………///」
するとルイが目を細め、もう一度キスをした。
腰元をぐっと引き寄せ身体を抱き上げると、
キスを交わしたままベッドへと運んでいく。
ルイ「○○……今俺どんな顔してる?///」
(え……)
ベッドに私の身体を横たえると、ルイがそっと尋ねた。
ルイ「……好きなのは、笑顔だけ?今は…///」
「え……」
ルイが唇に笑みを浮かべ、私の首筋から胸元までを指でたどっていく。
「……っ」
(笑顔、だけじゃない。私は……)
どこか意地悪な表情を浮かべ、ルイが口を開いた。
ルイ「……好き?///」
Sweet End
おお、こういう終わり方珍しい。