美羽のにゃんにゃん物語

イケメン王宮×王子様のプロポーズSeason2
次世代を担う異種混合プリンセスブログ……かもしれない(・∀・)


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書斎のドアが叩かれ、私は絵本を手にしたまま振り返った。


(誰だろう……?)


すると静かにドアが開き、ルイが顔を見せる。


ルイ「こんなところで何してるの?○○」


「ルイ……」


ルイの視線が手の中の絵本に落ちていることに気づき、

私は再び、その表紙をひらいた。


「絵本を読んでたの」


ルイ「…………」


それは、魔法で野獣に変えられてしまった孤独な王子様のお話だった。


「ルイは、知って……」


尋ねようと顔を上げた瞬間、私は微かに息を呑む。

ルイがいつのまにか近づき間近から絵本を覗きこんでいた。


ルイ「知らない、かな」


間近に見える形のいいルイの唇が、ふっと綻んでいく。


(男の人にこんなことを言うのはおかしいかもしれないけど……)

(ルイって、本当に綺麗だな)


思わず見惚れてしまうと、視線を上げたルイと目が合った。


「……っ」


慌てて視線をそらし、私は口を開く。


「あの、ルイ……何か、用事があったんじゃないの?」


ルイ「ああ……」


私の言葉に、ルイが途端に表情を暗くした。


(え……?)







ルイの公爵邸にプリンセスとして招かれることになった私は、

ジルと共に、ゆっくりと進む馬車に揺られていた。

道の脇には、春の花がちらちらと咲き始めている。


「…………」


(私はルイと過ごせることが嬉しいけれど、)

(ルイは、あまり嬉しくないみたいだったな……)


私は書斎での、ルイの言葉を思い出していった。



―ルイ「……あまり呼びたくはないんだけど」―

―ルイ「ごめんね」―



(……ルイはあまり、自分のお屋敷が好きじゃないみたい)


小さな窓から外を覗いていると、ルイの公爵邸が見えてきた。


(それって、すごく……)


余計なお世話だとは思いつつも、ため息がこぼれてしまった。


(寂しいことなのかもしれない)







公爵邸での静かな夕食の時間を終え、私はあてがわれた部屋で休んでいた。


(ルイとの関係を公にすることは出来ないから、)

(何も話せないままだったな……)


何の会話もなかった食事の席を思い出していると、部屋のドアが叩かれる。


「……ルイ?」


ルイ「うん」


部屋のドアを開け、ルイが部屋の中へと入って来る。

後ろ手にドアを閉めると、ルイがふっと目を細めた。


ルイ「……大丈夫?」


「え……」


ルイ「……不快な思いをしてるんじゃないかと思って」


ルイの低く力ない声音に、私は顔を上げる。


(あの静かな食事の席のことを、言っているのかな……?)

(それとも……)


私はお屋敷のメイドさんたちの、どこか冷めた視線を思い出した。


(でもきちんとお世話をしてくださるし、嫌な思いなんてしていない)


はっきり伝えようと、私はルイを見上げて口を開く。


「ルイ、私は大丈……」


ルイ「…………」


すると言葉を遮るように、ルイが私の背中を静かに抱き寄せた。


(え……)


片方の腕が背中に回り、微かな重さが肩先にかかる。


「ルイ……?」


鼓動を跳ねさせながら視線をあげると、ルイが言った。


ルイ「……俺は、大丈夫じゃない」

ルイ「こんなところに君を置いておきたくない」


ルイのため息が、私の髪を揺らす。

その低い声に胸をぎゅっとさせながら、私は口を開いた。


「でも……」


ルイ「…………」


するとその瞬間、ルイがぴくりとまつ毛を揺らした。


メイド「プリンセス……」


ドアの向こう側から、メイドさんの声が聞こえてくる。


メイド「何か、物音がしましたが……」


(……!)


ドアの外から響くメイドさんの声に、私はギクリと顔を上げる。


「い、いいえ……何でもありません」


メイド「そうですか。失礼致しました」


去っていく気配に、私はほっと胸をなで下ろした。


(このお屋敷では、ルイとゆっくり過ごすことは出来ないみたい)


ルイ「…………」


私の背中から手を離し、ルイがそんな私の姿をじっと見おろす。


ルイ「……約束して、○○」


そして、静かな低い声で告げた。


ルイ「あんまり、この屋敷の中をうろうろしないで」


(え……?)


ルイの言葉に顔を上げると、真剣な瞳と目が合う。


ルイ「どこで何を利用されるか、わからないから」


「でも……」


私は戸惑いながらも、口にした。


「ルイのお屋敷の人たちなのに……」


ルイ「だからだよ」


きっぱりと言い切り、ルイがわずかに眉を寄せてため息をつく。


ルイ「万が一でも俺と君との関係を知られたら、良くないから」


「…………」


ルイの言葉に滲む冷えた空気に、私の胸が小さく痛んだ。


(私との関係が知られたら、お屋敷の人に利用されてしまうってことかな)

(そんなことって……)


わずかに目元を緩め、ルイが私の耳元に手を添える。

そのまま優しく引き寄せると、額に唇を寄せた。


ルイ「……おやすみ、○○」


ルイの吐息に、前髪が優しく揺れた。




ルイが去った後、私は一人ベッドに入って考えていた。


「…………」


(ルイはこの広いお屋敷の中でも、たった一人なのかな)


お屋敷の中に流れる空気が、寂しく肌をさすのがわかる。


(そんなの絶対に、寂しいよね)







そして、翌朝…―。

仕度を整えた私は、ジルから予定を聞いていた。


ジル「今夜の晩餐会の後、明日の朝には城に帰ることになります」


「はい……」


私は頷き、ふと窓から外の景色を眺める。


(明日の朝だなんて、時間が経つのは早いな……)

(この短い間にも、私がルイに出来ることがあればいいのに)







そして休憩時間、私はルイの部屋へと向かっていた。


(話がしたいと、思っていたんだけど……)


廊下の角を曲がり、私はため息をつく。


(もしかして、迷ったのかもしれない)


辺りを見まわすものの、同じようなドアが連なり並んでいた。

その時、ルイの言葉が脳裏をよぎる。



―ルイ「……約束して、○○」―

―ルイ「あんまり、この屋敷の中をうろうろしないで」―



(ルイと約束をしたのに、どうしよう……)


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