アラン8話、後半の選択肢です
うん・・・・
「うん・・・私はここで、アランが帰ってくるって信じて待ってるよ」
アラン「ああ・・・・」
アランがつぶやき、ふっと目を細めて笑った。
⇒ Honeyでした!
わかった
「わかったよ、アラン」
アラン「・・・・・そうかよ」
アランが言い、満足そうに笑みを浮かべた。
もちろんだよ
「もちろんだよ・・・・信じてるね」
アラン「・・・・・・・」
アランは黙ったまま、口元をほころばせた。
※以下、アラン本編です、ネタバレ御注意ください・・・
翌日、騎士宿舎に向かうと、犬はすでに騎士たちに「アーサー」と名付けられ、可愛がられていた。
「・・・・アーサー」
試しに呼びかけてみると、アーサーが嬉しそうに尻尾をふり駆けてくる。
(可愛い・・・・・・!!)
飛びついてくるアーサーを抱きしめ、私はぎゅっと目を閉じた。
アラン「・・・・・・」
「やだ、アーサー。くすぐったいよ! アーサーったら」
アーサーと遊ぶ私の後ろには、どこか不機嫌そうなアランが立っている。
アラン「・・・おい」
「え?」
振り返ると、アランがはっとしたように顔を背けた。
アラン「・・・・何でもねえよ」
・・・・・
げむ子が執務室へと向かった後、アランは廊下を歩いていた。
ふと足を止め、曲がり角の先を見やる。
アラン「・・・・・・」
そこは、国王の部屋へと向かう道だった。
行く先を変え角を曲がったアランが、目を細める。
アラン「・・・・何してんだ? あいつ」
そこには、歩き去っていく不審な人影があった・・・・。
そして、夜・・・・-。
私がこそこそと準備をしていると、 いつものようにドアが叩かれた。
ユーリ「夕食の時間だよ、げむ子さま」
「え、あ・・・・うん!」
ドアが開かれると、私は慌てて手に持っていたものを隠す。
ユーリ「え?何を隠したの?」
「な、なんでもないよ」
ごまかそうとする私に近づき、ユーリがひょいっと後ろを覗き込む。
「あ・・・・・!」
ユーリ「・・・・・それって、犬用のおもちゃ?」
不思議そうにつぶやくユーリに、私は慌てて顔を上げた。
ユーリ「もしかして・・・・犬飼ってる?」
返事できないでいる私を見下し、ユーリが軽く首をかしげる。
ユーリ「うーん・・・・ジル様、怒るんじゃないかな? 猫ならまだしも」
(や、やっぱり・・・・)
(でもアランが飼ってるから大丈夫だとは、もっと言えないし・・・・)
ユーリの言葉にかぶせるように、私は口を開いた。
「ユーリ、お願い。内緒にしててくれる?」
すると少し面食らったように、ユーリがうなずく。
ユーリ「いいけど・・・・・そんなに信用しないでね」
笑みを浮かべるユーリに、私はほっと胸をなでおろした。
「ユーリなら信用できるよ。ありがとう」
ユーリ「・・・・・・・・・・・」
その時私は、ユーリが浮かべた複雑な表情に気がつかなかった・・・。
翌朝、私はジルからついに戦争が始まると告げられていた。
ジル「まあ戦争とは言え、国境近くの小競り合いのようなものです」
ジル「あまり危惧するようなことではありませんが・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
黙ったままうつむく私を見下し、ジルが息をつく。
ジル「騎士団は、派兵されることになります」
ジル「あなたの護衛として付いているアラン殿も、しばらく留守になります」
ジルの言葉に、私ははっと顔をあげた。
(やっぱり、アランは戦場へ・・・・・!?)
何か言おうと口を開きかけると、それを制するようにジルが低く言う。
ジル 「プリンセス、あなたが心配することはありませんよ」
ジル「しっかりと勉強や稽古事に励んでください」
釘をさすようなジルの視線に、私はただうなずくしかなかった。
執務室で机に向かいながらも、私は集中できずにいた。
「・・・・・・・・」
立ちあがり、本棚から戦争に関連のありそうな本を取り出す。
(ジルは心配ないと言っていたけれど・・・)
(どんなに小さくても、戦争という以上危険はあるんだよね・・・・)
立ったまま本をめくり、私は眉を寄せた。
ジル「プリンセス、あなたが心配することはありませんよ」
(そんなことない。プリンセスとしてもウィスタリアの国民としても、)
(他人事では、いられないよ・・・)
そうしてしばらくの間本のページを静かにめくっていると、
後ろから、ため息が響いてくる。
「・・・・・え?」
驚き振り向くと、そこにはジルが立っていた。
ジル「まったく、大人しくしていると思えば、まったく関係ない勉強をされているようですね」
「す、すみまん・・・・・でも」
私が視線を伏せると、ジルがつぶやくように言う。
ジル「・・・・明日一日、休日としましょう」
「え?」
顔を上げると、ジルがじっとわたしを見降ろしていた。
ジル「顔色が悪いですよ。息抜きでもされてきたらいかがですか?」
(・・・・ジル)
私は本を閉じ、小さくうなずく。
「うん・・・ありがとう」
・・・・・
そして夕方、厩舎へと足を運ぶと、そこにはアランの姿があった。
アラン「・・・なに?」
声をかけられずにいた私に気づき、アランが尋ねる。
「アラン、あのね・・・」
私はジルからもらった休日の話を切り出した。
(明日は、 アランとゆっくり話ができたらいいな・・・)
(でも、こんなときに遊びに行く気分にはなれないよね)
アラン「・・・・・・・・・・・・・」
迷う私を見下し、やがてアランが少し考えるようにして口を開いた。
アラン「・・・・・・だったら、行きたいところがある」
★ここでプリンセスチェック!
プレミアのお話はコチラ
息抜きを終えお城へと戻ってくると、殺伐とした雰囲気が漂い始めていた。
(騎士たちは、明日から出かけることになるって言ってたけど・・・)
送ってくれたアランもすぐに厳しい顔つきにもどり、部屋を出て行った。
窓から若い騎士と共に歩いていくアランの姿を見つめながら、
私は一人ため息をつく。
(本当に、私にできることってないのかな・・・・・・・)
するとドアをたたく高い音が響き、ユーリが現れた。
ユーリ「どうしたの、げむ子様。せっかくのお休みなのに、元気ないね」
「ユーリ・・・」
私はユーリを見上げて少し悩んだ後、小さな声でたずねる。
「ねえ、今私にできることって何かないかな?」
ユーリ「え?」
驚いたユーリが、やがてにっこりとほほ笑んで言った。
ユーリ「プリンセスは、お城にいるだけでいいと思うよ?」
「そっか・・・・」
ユーリの言葉に再び息をつき、私は窓の外を見やった。
せめて勉強だけはしておこうと執務室で机に向かっていると、
突然頭の上から声が降ってきた。
???「今日は、休日のはずでは?」
「えっ・・・・・・」
思わず目を見開いて顔を上げると、ジルが呆れた様子で立っている。
ジル「あなたには、他に目を向けていただかなkればならないことがあります」
「・・・・でも、ジル。私にも何かできることってないの?」
ジル「・・・・・・」
するとジルは息をつき、私の手から分厚い戦術の本を取り上げた。
ジル「今のプリンセスの役目は、大人しくしていること」
ジル「そして早く、次の王を見つけることですよ」
・・・・・・・・・・・
そして、日が暮れ始めた頃・・・・・。
私はアーサーと共に庭を散歩していた。
「・・・・アーサー」
足元にじゃれるアーサーの頭を撫でながら、ぽつりとこぼす。
「私には、やっぱり何もできないのかな・・・・」
するとそこに、アランの声が響いてきた。
アラン「お前、何やってんの」
「アラン・・・・・」
私と同じようにしゃがみこみ、アランがアーサーの頭をなでる。
「・・・・・・・・・・・」
私はその様子をじっと見つめていた。
アラン「・・・・なんだよ」
アランの声に、はっと顔を上げる。
アラン「何か言いたいんじゃねえのか?」
「・・・・・え?」
(なんで、わかったんだろう・・・・)
するとアーサーに触れながら、アランが呆れたように言う。
アラン「お前、すぐに顔に出んだよ」
「・・・・・・・・・そうなの!?」
そうしてアーサーから私に視線を移した。
アラン「・・・・言えよ」
「・・・・・・・・・・・」
アランの視線を受け止めたまま、私はユーリやジルと同じことを尋ねた。
(やっぱりアランも、大人しくしていろって言うのかな・・・)
アラン「・・・・・」
少し黙ったアランが、やがて口を開く。
アラン「お前は、信じてろよ」
「・・・・・え」
戸惑いに目を上げると、アランが優しく目を細めて言った。
アラン「お前はこの国の誰よりも、俺たちの無事を信じてろ」
アランの言葉に、私は小さく息を飲んだ。
(信じる・・・アランたちの無事を?)
やがてアランが目をそらし、告げる。
アラン「お前が信じるなら、俺がどんな無茶なことでも叶えてやるから」
「・・・・・・・・・・」
少しの沈黙がおりたあと、アランがもう一度私の目を見た。
アラン「・・・・・・・・・」
(・・・・・出来ることは少ないけれど、それがアランの力になるんだとしたら、)
(私はこの城で、国で・・・・誰よりも信じて待っていよう)
「うん・・・・わかった」
私がうなずくと、アランがふっと目を細めた。
そうしてしばらくの時間が過ぎた後、私は静かに立ち上がる。
時計塔を見上げ、小さく息をついた。
(もう、こんな時間・・・・別れがたいけど、)
(アランは明日の朝早く発つんだから、邪魔はできないよね)
「そろそろ行くね。ありがとう、アラン」
アラン「・・・・・・・・」
すると立ち上がったアランが、私の手をとった。
「・・・・!」
(え・・・・・・・?)
・・・・・・・・・
アランに手をひかれるまま、私はアーサーと共に部屋へと訪れていた。
(アラン、どうしたんだろう・・・)
足をかすめるように、アーサーが部屋の隅の寝どこへと駆けていく。
やがて手が離れると、アランがゆっくりと振り返った。
「・・・・っ」
真っ直ぐな目で見つめられ、鼓動が大きく跳ねる。
アラン「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・アラン?」
やがて視線を外しベッドまで歩いて行ったアランが、
どさりと腰をおろして私を見上げた。
アラン「・・・・・まだお前に、言ってないことがある」
アランの言葉に、私は戸惑って目を瞬かせた。
「・・・・え?」
すると視線をそらし、アランがつぶやくように言う。
アラン「まあ、今言う資格はないんだけどな」
「・・・・・資格?」
(何のことだろう・・・・)
私の声に、アランが静かに息をついた。
アラン「ああ。派兵されることになった限り、俺はまだ一介の騎士だからな」
アラン「今、お前に応えることは出来ねーけど・・・・」
(応えるって・・・・・)
ーーー回想ーーー
「アランが・・・・いい」
アラン「・・・・・・」
「アランを、選びたい」
ーーーーーーーーー
(あの時の、答えなのかな・・・・)
そうして、アランが再び私を見上げる。
(アラン・・・・)
私はゆっくりと、アランに近づいていった。
するとふっと笑みを浮かべたアランが、手を伸ばす。
アラン「お前さ、俺を守るって言ったよな?」
「え?」
アラン「げむ子、俺を守れよ」
アランの言葉に、私の鼓動が早鐘を打つ。
「・・・・・っ」
(アランが、そんな風に思ってくれるなんて・・・・・)
アラン「お前がいれば、絶対に生きて帰ろうって気になる」
アラン「・・・死にたくないってのは、弱い奴の言うことだと思ってたんだけどな」
アラン「・・・・・・・・」
やがて何も言えずにいた私の頬を、アランが軽くつねった。
「・・・・・・・・・・??」
驚いて見下ろすと、アランが軽く首をかしげて口を開く。
アラン「何か言えよ」
「あ・・・・」
(そうだ、私も返事をしないと・・・・・・)
慌てて考え、私は一度息を吸い込んでからゆっくりと言った。
ー選択肢ーーーーーーーー
うん・・・・
「うん・・・私はここで、アランが帰ってくるって信じて待ってるよ」
アラン「ああ・・・・」
アランがつぶやき、ふっと目を細めて笑った。
わかった
「わかったよ、アラン」
アラン「・・・・・そうかよ」
アランが言い、満足そうに笑みを浮かべた。
もちろんだよ
「もちろんだよ・・・・信じてるね」
アラン「・・・・・・・」
アランは黙ったまま、口元をほころばせた。
ーーーーーーーーーーーー
(言葉で伝えられて、良かった・・・・・)
アラン「・・・・・・・・・・」
そうして少しの沈黙が流れた後、アランが私の顔を覗き込んだ。
アラン「・・・・でも、それだけじゃ足りないかもな」
「え?」
私の腰元を引き寄せ、アランが私の身体を膝の上に乗せた。
「・・・・・・・・っ」
驚いて肩に手を置き、私はアランを見下し声をあげる。
「た、足りないって・・・・・」
アラン「・・・・・・・・・」
かあっと赤く染まった顔を向けると、アランが意地悪な笑みを浮かべた。
「・・・・・・・・・あっ」
そうして力を込め、アランが私を見上げて尋ねる。
アラン「お前はこの先、どうすればいいと思う?」
「え・・・・!?」
アランに上目づかいでたずねられ、私の頬がどんどん熱くなる。
腰元を引き寄せる指先に力が込められ、
私はアランの方に置いた手にぐっと力をこめて身体を離した。
「わ、わかんないよ」
アラン「・・・・・・・・・・」
するとアランが私の頭を下に引き寄せ、そのままキスをする。
「・・・・んっ・・・・」
私の顔を寄せたまま、アランがささやいた。
アラン「・・・・・・・・・・・今度はお前の番だったよな」
「・・・・・え?」
私は震えるまつ毛を上げ、アランを見る。
するとアランが身体を反転させ、私の身体をベッドの上に押し倒した。
「・・・・っ」
思わず目をつぶってしまった目をあけると、私を見下すアランが言う。
アラン「教えた分だけ、教え返す約束だろ?」
アラン「俺のことはもう、だいぶ教えたじゃねえか」
「あ・・・・・」
--回想--
「私、アランのことをもっと知りたい」
「私に、アランのことを教えてほしいの・・・・」
アラン「・・・・・・・・・・・・」
----------
(あの時のこと、だよね・・・・)
「・・・・・えっと」
考えていると、アランが唇を重ねてくる。
そのやわらかで強引なしぐさに、私は思わず指先を震わせた。
「・・・・ん・・・っ」
やがて吸いつくような唇が離れると、
アランが私の唇に息を吹きかけるように甘くささやく。
アラン「もっと教えて、お前のこと」
「・・・・・・・・・・っ」
アランの探るようなキスが、どんどん甘く変わっていく。
指先は首筋をなぞり、やがて服にかかった。
「・・・・・・・・ぁっ・・・」
アランの指先や熱に翻弄されるまま、私は目尻に涙を浮かべて思う。
(明日の朝には、アランは出発してしまうんだ・・・・)
アランの爪が軽く素肌をかき、
私は身体を震わせアランの身体にしがみついた。
「・・・っ・・・アラン」
アラン「・・・・・・・・・」
アランの片腕が、私をそっと抱きしめ返してくれる。
(ずっと、このままでいられたらいいのに・・・・)
アランの肩に顔をうずめながら、
私は深まっていく夜に、目を閉じていった・・・。
うん・・・・
「うん・・・私はここで、アランが帰ってくるって信じて待ってるよ」
アラン「ああ・・・・」
アランがつぶやき、ふっと目を細めて笑った。
⇒ Honeyでした!
わかった
「わかったよ、アラン」
アラン「・・・・・そうかよ」
アランが言い、満足そうに笑みを浮かべた。
もちろんだよ
「もちろんだよ・・・・信じてるね」
アラン「・・・・・・・」
アランは黙ったまま、口元をほころばせた。
※以下、アラン本編です、ネタバレ御注意ください・・・
翌日、騎士宿舎に向かうと、犬はすでに騎士たちに「アーサー」と名付けられ、可愛がられていた。
「・・・・アーサー」
試しに呼びかけてみると、アーサーが嬉しそうに尻尾をふり駆けてくる。
(可愛い・・・・・・!!)
飛びついてくるアーサーを抱きしめ、私はぎゅっと目を閉じた。
アラン「・・・・・・」
「やだ、アーサー。くすぐったいよ! アーサーったら」
アーサーと遊ぶ私の後ろには、どこか不機嫌そうなアランが立っている。
アラン「・・・おい」
「え?」
振り返ると、アランがはっとしたように顔を背けた。
アラン「・・・・何でもねえよ」
・・・・・
げむ子が執務室へと向かった後、アランは廊下を歩いていた。
ふと足を止め、曲がり角の先を見やる。
アラン「・・・・・・」
そこは、国王の部屋へと向かう道だった。
行く先を変え角を曲がったアランが、目を細める。
アラン「・・・・何してんだ? あいつ」
そこには、歩き去っていく不審な人影があった・・・・。
そして、夜・・・・-。
私がこそこそと準備をしていると、 いつものようにドアが叩かれた。
ユーリ「夕食の時間だよ、げむ子さま」
「え、あ・・・・うん!」
ドアが開かれると、私は慌てて手に持っていたものを隠す。
ユーリ「え?何を隠したの?」
「な、なんでもないよ」
ごまかそうとする私に近づき、ユーリがひょいっと後ろを覗き込む。
「あ・・・・・!」
ユーリ「・・・・・それって、犬用のおもちゃ?」
不思議そうにつぶやくユーリに、私は慌てて顔を上げた。
ユーリ「もしかして・・・・犬飼ってる?」
返事できないでいる私を見下し、ユーリが軽く首をかしげる。
ユーリ「うーん・・・・ジル様、怒るんじゃないかな? 猫ならまだしも」
(や、やっぱり・・・・)
(でもアランが飼ってるから大丈夫だとは、もっと言えないし・・・・)
ユーリの言葉にかぶせるように、私は口を開いた。
「ユーリ、お願い。内緒にしててくれる?」
すると少し面食らったように、ユーリがうなずく。
ユーリ「いいけど・・・・・そんなに信用しないでね」
笑みを浮かべるユーリに、私はほっと胸をなでおろした。
「ユーリなら信用できるよ。ありがとう」
ユーリ「・・・・・・・・・・・」
その時私は、ユーリが浮かべた複雑な表情に気がつかなかった・・・。
翌朝、私はジルからついに戦争が始まると告げられていた。
ジル「まあ戦争とは言え、国境近くの小競り合いのようなものです」
ジル「あまり危惧するようなことではありませんが・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
黙ったままうつむく私を見下し、ジルが息をつく。
ジル「騎士団は、派兵されることになります」
ジル「あなたの護衛として付いているアラン殿も、しばらく留守になります」
ジルの言葉に、私ははっと顔をあげた。
(やっぱり、アランは戦場へ・・・・・!?)
何か言おうと口を開きかけると、それを制するようにジルが低く言う。
ジル 「プリンセス、あなたが心配することはありませんよ」
ジル「しっかりと勉強や稽古事に励んでください」
釘をさすようなジルの視線に、私はただうなずくしかなかった。
執務室で机に向かいながらも、私は集中できずにいた。
「・・・・・・・・」
立ちあがり、本棚から戦争に関連のありそうな本を取り出す。
(ジルは心配ないと言っていたけれど・・・)
(どんなに小さくても、戦争という以上危険はあるんだよね・・・・)
立ったまま本をめくり、私は眉を寄せた。
ジル「プリンセス、あなたが心配することはありませんよ」
(そんなことない。プリンセスとしてもウィスタリアの国民としても、)
(他人事では、いられないよ・・・)
そうしてしばらくの間本のページを静かにめくっていると、
後ろから、ため息が響いてくる。
「・・・・・え?」
驚き振り向くと、そこにはジルが立っていた。
ジル「まったく、大人しくしていると思えば、まったく関係ない勉強をされているようですね」
「す、すみまん・・・・・でも」
私が視線を伏せると、ジルがつぶやくように言う。
ジル「・・・・明日一日、休日としましょう」
「え?」
顔を上げると、ジルがじっとわたしを見降ろしていた。
ジル「顔色が悪いですよ。息抜きでもされてきたらいかがですか?」
(・・・・ジル)
私は本を閉じ、小さくうなずく。
「うん・・・ありがとう」
・・・・・
そして夕方、厩舎へと足を運ぶと、そこにはアランの姿があった。
アラン「・・・なに?」
声をかけられずにいた私に気づき、アランが尋ねる。
「アラン、あのね・・・」
私はジルからもらった休日の話を切り出した。
(明日は、 アランとゆっくり話ができたらいいな・・・)
(でも、こんなときに遊びに行く気分にはなれないよね)
アラン「・・・・・・・・・・・・・」
迷う私を見下し、やがてアランが少し考えるようにして口を開いた。
アラン「・・・・・・だったら、行きたいところがある」
★ここでプリンセスチェック!
プレミアのお話はコチラ
息抜きを終えお城へと戻ってくると、殺伐とした雰囲気が漂い始めていた。
(騎士たちは、明日から出かけることになるって言ってたけど・・・)
送ってくれたアランもすぐに厳しい顔つきにもどり、部屋を出て行った。
窓から若い騎士と共に歩いていくアランの姿を見つめながら、
私は一人ため息をつく。
(本当に、私にできることってないのかな・・・・・・・)
するとドアをたたく高い音が響き、ユーリが現れた。
ユーリ「どうしたの、げむ子様。せっかくのお休みなのに、元気ないね」
「ユーリ・・・」
私はユーリを見上げて少し悩んだ後、小さな声でたずねる。
「ねえ、今私にできることって何かないかな?」
ユーリ「え?」
驚いたユーリが、やがてにっこりとほほ笑んで言った。
ユーリ「プリンセスは、お城にいるだけでいいと思うよ?」
「そっか・・・・」
ユーリの言葉に再び息をつき、私は窓の外を見やった。
せめて勉強だけはしておこうと執務室で机に向かっていると、
突然頭の上から声が降ってきた。
???「今日は、休日のはずでは?」
「えっ・・・・・・」
思わず目を見開いて顔を上げると、ジルが呆れた様子で立っている。
ジル「あなたには、他に目を向けていただかなkればならないことがあります」
「・・・・でも、ジル。私にも何かできることってないの?」
ジル「・・・・・・」
するとジルは息をつき、私の手から分厚い戦術の本を取り上げた。
ジル「今のプリンセスの役目は、大人しくしていること」
ジル「そして早く、次の王を見つけることですよ」
・・・・・・・・・・・
そして、日が暮れ始めた頃・・・・・。
私はアーサーと共に庭を散歩していた。
「・・・・アーサー」
足元にじゃれるアーサーの頭を撫でながら、ぽつりとこぼす。
「私には、やっぱり何もできないのかな・・・・」
するとそこに、アランの声が響いてきた。
アラン「お前、何やってんの」
「アラン・・・・・」
私と同じようにしゃがみこみ、アランがアーサーの頭をなでる。
「・・・・・・・・・・・」
私はその様子をじっと見つめていた。
アラン「・・・・なんだよ」
アランの声に、はっと顔を上げる。
アラン「何か言いたいんじゃねえのか?」
「・・・・・え?」
(なんで、わかったんだろう・・・・)
するとアーサーに触れながら、アランが呆れたように言う。
アラン「お前、すぐに顔に出んだよ」
「・・・・・・・・・そうなの!?」
そうしてアーサーから私に視線を移した。
アラン「・・・・言えよ」
「・・・・・・・・・・・」
アランの視線を受け止めたまま、私はユーリやジルと同じことを尋ねた。
(やっぱりアランも、大人しくしていろって言うのかな・・・)
アラン「・・・・・」
少し黙ったアランが、やがて口を開く。
アラン「お前は、信じてろよ」
「・・・・・え」
戸惑いに目を上げると、アランが優しく目を細めて言った。
アラン「お前はこの国の誰よりも、俺たちの無事を信じてろ」
アランの言葉に、私は小さく息を飲んだ。
(信じる・・・アランたちの無事を?)
やがてアランが目をそらし、告げる。
アラン「お前が信じるなら、俺がどんな無茶なことでも叶えてやるから」
「・・・・・・・・・・」
少しの沈黙がおりたあと、アランがもう一度私の目を見た。
アラン「・・・・・・・・・」
(・・・・・出来ることは少ないけれど、それがアランの力になるんだとしたら、)
(私はこの城で、国で・・・・誰よりも信じて待っていよう)
「うん・・・・わかった」
私がうなずくと、アランがふっと目を細めた。
そうしてしばらくの時間が過ぎた後、私は静かに立ち上がる。
時計塔を見上げ、小さく息をついた。
(もう、こんな時間・・・・別れがたいけど、)
(アランは明日の朝早く発つんだから、邪魔はできないよね)
「そろそろ行くね。ありがとう、アラン」
アラン「・・・・・・・・」
すると立ち上がったアランが、私の手をとった。
「・・・・!」
(え・・・・・・・?)
・・・・・・・・・
アランに手をひかれるまま、私はアーサーと共に部屋へと訪れていた。
(アラン、どうしたんだろう・・・)
足をかすめるように、アーサーが部屋の隅の寝どこへと駆けていく。
やがて手が離れると、アランがゆっくりと振り返った。
「・・・・っ」
真っ直ぐな目で見つめられ、鼓動が大きく跳ねる。
アラン「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・アラン?」
やがて視線を外しベッドまで歩いて行ったアランが、
どさりと腰をおろして私を見上げた。
アラン「・・・・・まだお前に、言ってないことがある」
アランの言葉に、私は戸惑って目を瞬かせた。
「・・・・え?」
すると視線をそらし、アランがつぶやくように言う。
アラン「まあ、今言う資格はないんだけどな」
「・・・・・資格?」
(何のことだろう・・・・)
私の声に、アランが静かに息をついた。
アラン「ああ。派兵されることになった限り、俺はまだ一介の騎士だからな」
アラン「今、お前に応えることは出来ねーけど・・・・」
(応えるって・・・・・)
ーーー回想ーーー
「アランが・・・・いい」
アラン「・・・・・・」
「アランを、選びたい」
ーーーーーーーーー
(あの時の、答えなのかな・・・・)
そうして、アランが再び私を見上げる。
(アラン・・・・)
私はゆっくりと、アランに近づいていった。
するとふっと笑みを浮かべたアランが、手を伸ばす。
アラン「お前さ、俺を守るって言ったよな?」
「え?」
アラン「げむ子、俺を守れよ」
アランの言葉に、私の鼓動が早鐘を打つ。
「・・・・・っ」
(アランが、そんな風に思ってくれるなんて・・・・・)
アラン「お前がいれば、絶対に生きて帰ろうって気になる」
アラン「・・・死にたくないってのは、弱い奴の言うことだと思ってたんだけどな」
アラン「・・・・・・・・」
やがて何も言えずにいた私の頬を、アランが軽くつねった。
「・・・・・・・・・・??」
驚いて見下ろすと、アランが軽く首をかしげて口を開く。
アラン「何か言えよ」
「あ・・・・」
(そうだ、私も返事をしないと・・・・・・)
慌てて考え、私は一度息を吸い込んでからゆっくりと言った。
ー選択肢ーーーーーーーー
うん・・・・
「うん・・・私はここで、アランが帰ってくるって信じて待ってるよ」
アラン「ああ・・・・」
アランがつぶやき、ふっと目を細めて笑った。
わかった
「わかったよ、アラン」
アラン「・・・・・そうかよ」
アランが言い、満足そうに笑みを浮かべた。
もちろんだよ
「もちろんだよ・・・・信じてるね」
アラン「・・・・・・・」
アランは黙ったまま、口元をほころばせた。
ーーーーーーーーーーーー
(言葉で伝えられて、良かった・・・・・)
アラン「・・・・・・・・・・」
そうして少しの沈黙が流れた後、アランが私の顔を覗き込んだ。
アラン「・・・・でも、それだけじゃ足りないかもな」
「え?」
私の腰元を引き寄せ、アランが私の身体を膝の上に乗せた。
「・・・・・・・・っ」
驚いて肩に手を置き、私はアランを見下し声をあげる。
「た、足りないって・・・・・」
アラン「・・・・・・・・・」
かあっと赤く染まった顔を向けると、アランが意地悪な笑みを浮かべた。
「・・・・・・・・・あっ」
そうして力を込め、アランが私を見上げて尋ねる。
アラン「お前はこの先、どうすればいいと思う?」
「え・・・・!?」
アランに上目づかいでたずねられ、私の頬がどんどん熱くなる。
腰元を引き寄せる指先に力が込められ、
私はアランの方に置いた手にぐっと力をこめて身体を離した。
「わ、わかんないよ」
アラン「・・・・・・・・・・」
するとアランが私の頭を下に引き寄せ、そのままキスをする。
「・・・・んっ・・・・」
私の顔を寄せたまま、アランがささやいた。
アラン「・・・・・・・・・・・今度はお前の番だったよな」
「・・・・・え?」
私は震えるまつ毛を上げ、アランを見る。
するとアランが身体を反転させ、私の身体をベッドの上に押し倒した。
「・・・・っ」
思わず目をつぶってしまった目をあけると、私を見下すアランが言う。
アラン「教えた分だけ、教え返す約束だろ?」
アラン「俺のことはもう、だいぶ教えたじゃねえか」
「あ・・・・・」
--回想--
「私、アランのことをもっと知りたい」
「私に、アランのことを教えてほしいの・・・・」
アラン「・・・・・・・・・・・・」
----------
(あの時のこと、だよね・・・・)
「・・・・・えっと」
考えていると、アランが唇を重ねてくる。
そのやわらかで強引なしぐさに、私は思わず指先を震わせた。
「・・・・ん・・・っ」
やがて吸いつくような唇が離れると、
アランが私の唇に息を吹きかけるように甘くささやく。
アラン「もっと教えて、お前のこと」
「・・・・・・・・・・っ」
アランの探るようなキスが、どんどん甘く変わっていく。
指先は首筋をなぞり、やがて服にかかった。
「・・・・・・・・ぁっ・・・」
アランの指先や熱に翻弄されるまま、私は目尻に涙を浮かべて思う。
(明日の朝には、アランは出発してしまうんだ・・・・)
アランの爪が軽く素肌をかき、
私は身体を震わせアランの身体にしがみついた。
「・・・っ・・・アラン」
アラン「・・・・・・・・・」
アランの片腕が、私をそっと抱きしめ返してくれる。
(ずっと、このままでいられたらいいのに・・・・)
アランの肩に顔をうずめながら、
私は深まっていく夜に、目を閉じていった・・・。