するとドアの高いところに右手のこぶしをつけ、
アランが身体の距離を縮める。
アラン「何隠してるんだよ」
「・・・・・っ」
アランに間近から顔をのぞきこまれ、私は思わず顔をうつむかせる。
「あの、準備が・・・・・・」
(まだ途中なんだけど・・・)
すると不機嫌そうに眉を寄せ、アランが息をついた。
アラン「・・・・お前だって、勝手におれの部屋入ってきたじゃねえか」
その言葉に、私はアランの部屋に入った時のことを思い出す。
アラン「あれ?お前・・・・」
アラン「・・・・何でこんなとこにいんの?」
(確かに、そうだった・・・・)
アラン「・・・誰かいるのかよ」
「まさか、誰もいないよ」
突然小さな声でたずねられ、私は慌てて顔を上げる。
すると眉を寄せるアランが、ドアにかけた手を降ろしドアノブをひねった。
「あ・・・・っ」
私が背にしていたドアが開き、アランが部屋を覗き込む。
そして中の様子に、目を丸くした。
アラン「・・・・なんだ?」
私はアランを見上げ、告げた。
「ハッピーバースデー、アラン」
アラン「・・・・・・・・・・・・」
やがて部屋の中に入ると、アランが手作りのチョコケーキを見下す。
アラン「・・・ああ、そういうことか」
どこかほっとしたように目を細め、アランが笑みを浮かべた。
アラン「あー、びびった」
「え?」
見上げると、アランがふっと目を細める。
アラン「いや、こっちの話」
そうして私の髪を、くしゃっと撫でた。
アラン「ありがとうな」
(良かった・・・・アラン、すごく喜んでくれてるみたい)
「・・・・・アラン、ろうそく吹き消してくれる?」
おそるおそる言うと、アランが私へと視線を向ける。
アラン「・・・・・・・・・・・・・」
(もしかして、嫌かな・・・)
思っていると、アランが吹き出すように笑った。
アラン「んなこと、ガキの時にもしとことねえな」
「え?」
アラン「一人、先に吹き消すやつがいたからな」
(あ・・・・)
レオのことを思い出し、私は口元をほころばせる。
アラン「・・・・・・・・」
そしてアランは黙ったまま、ろうそくの灯を吹き消してくれた。
アランがろうそくを吹き消し、2人きりのお祝いが始まった・・・-。
アラン「美味いよ」
私が作った料理を口に運びながら、アランがふっと笑みを浮かべる。
「良かった・・・・」
ほっと胸をなでおろし、私は短く息をついた。
そして先ほどのろうそくの話を思いだし、尋ねる。
「昔も、こういう風にお祝いしたりした?」
アラン「ん?」
するとアランが一瞬だけ懐かしそうに目を細め、つぶやいた。
アラン「・・・・そういうことも、あったかもな」
(その時も、やっぱりチョコケーキを食べたのかな)
(レオと、2人で・・・)
子供の頃の2人を想像して笑みをうかべた。
アラン「・・・・何笑ってんだよ」
「ううん、何でもない」
わずかに首を横に振りながら顔を上げると、私はふと気が付く。
「アラン、ついてるよ?」
アランの口元に、微かにチョコがついていた。
私は自分の唇を指差し、アランを見上げる。
アラン「ん・・・・・」
私のしぐさに指で拭おうとしたアランが、突然動きを止めた。
「・・・・?」
(どうしたんだろう・・・・・・?)
面白そうに笑みを浮かべながら、アランが私の方に身体を寄せる。
アラン「お前がとれよ」
アラン「俺がどーして欲しいか、わかるだろ?」