ここから本文です
[PR] 

「社会主義が最も成功したのは、日本」と皮肉られているワケ

Business Media 誠 4月9日(火)11時32分配信

「社会主義が最も成功したのは、日本」と皮肉られているワケ

「終身雇用」を支持する者が増えている(出典:労働政策研究・研修機構)

●窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。

【拡大画像や他の画像】

 日本銀行が金融政策決定会合を行い、“異次元”の金融緩和策を発表した。やるだけやった。後は企業ががんばれよみたいなムードのなか、成長戦略の柱である「成長産業への労働力移動」として「クビの規制緩和」議論が活発化している。

 その端緒になったのは、3月15日の「産業競争力会議」で、民間議員の長谷川閑史(はせがわ・やすちか)・武田薬品工業社長が解雇を原則自由にするよう労働契約法を改正することや、再就職支援金を支払うことで解雇できるルールづくりなどを提案したことだった。

 会社を見渡すと、「正社員」という座にあぐらをかいて、定年までの十数年をどうにかやりすごすというオッサンがゴロゴロいる。そういう人たちの人生まで面倒をみるのが会社のつとめだったわけだが、世界と競争するうえで、かなりハンデとなっている。

 50歳といっても高齢化社会ではまだまだハナタレ小僧なわけだから、景気のいい産業へ移ってやりなおしたらどうでしょう、お金も差し上げますし、と会社から勧められるようにしようというわけだ。

 といっても、これはなにも長谷川氏が思いついたことではなく、もうずいぶん前から言われていることだ。例えば、金の支払いで解雇を可能とする「金銭解決ルール」などは、2003年の小泉政権が法案化寸前までもっていったが、断念した過去がある。

 なぜ断念したか。容易に想像がつくだろうが、「札束でクビができるなんてけしからん」と連合(日本労働組合総連合会)なんかがワーワー騒いだからだ。当然、今回もそういう流れになっている。

 といっても、この手の人たちは、ホームレスを「派遣切りされた労働者だ」なんてインチキもやった前科もあるので、ただ騒ぐだけでは説得力がない。そこで持ち出したのが、「OECD(経済開発協力機構)の雇用保護指標」だ。確かに、朝にクビを宣告されたら昼には出ていく米国や英国なんかと比べたら雇用が保護されているほうだが、ドイツやフランス、そして北欧に比べるとちっとも優しくない。「クビの規制緩和」なんてとんでもない、もっと雇用保護したっていいぐらいじゃないか、と。

 ただ、この理屈もちょっとおかしい。日本の雇用はもうずいぶん昔から米国や欧州なとと比べられない「異次元」の世界に突入しているからだ。

 それは「終身雇用」である。

●「終身雇用」発明したのは

 いろんな方面で言われているように、こういう雇い方をしている国はほとんどない。いろいろ叩かれた中国の国営企業ですら、1990年代には終身雇用をやめたほどだ。

 なんてことを言うと、終身雇用が「日本の強さ」のヒミツだった、とか言い出す人たちがいる。先週、某情報番組でもやっていたが、「企業は人なり」というお約束の格言と、松下幸之助が登場して、日本企業は社員を大切にして社員は会社に人生を委ねたので、一体感ができてみんな汗水たらして働いた。身分保障されていたので、心置きなく消費もできた、なんて話である。

 だが、終身雇用というのは、なにも経済人のみなさんがやりだしたわけではない。1939年に制定された「国家総動員法」のなかにある「会社利益配当及資金融通令」や「会社経理統制令」で株主や役員の力が剥奪され、国のコントロールのもと、とにかく生産力をあげるために企業という共同体に国民を縛り付けておくひとつの手段として始まった。

 ついでに言えば、これはなにも日本人の発明ではなく、世界恐慌をのりきったソ連の「計画経済」をまんまパクったものである。国が経済発展を計画的に進めて、国民は国が規制をする企業に身を投じて一生涯同じ仕事をする――。そんなソ連モデルが日本人にはフィットした。日本が「世界で最も成功した社会主義」なんて揶揄(やゆ)されるのはそれが所以だ。

 要するに「終身雇用」は日本式経営でもなんでもなく、単に戦時体制につくられた社会主義的システムをズルズルとひきずっていただけだ。だから、小泉改革みたいな新自由主義経済が流れ込むと、ソ連のように崩壊していく。さらには、そういう思想をもとに築き上げられたインフラなんかも音をたてて崩れていく。日ソ両国がともに原子力を制御できず、どでかいヘマをしたのは単なる偶然ではない。

 そういうガレキの山を見れば、もうとっくに「終身雇用」が終わっているのは明らかだ。

 ただ、世の中にはそれを認めたくない人たちが案外多い。例えば、独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が昨年5月に発表した調査では「終身雇用」を支持する者の割合は過去最高の87.5%となったという。「組織の一体感」「年功賃金」を支持する割合もそれぞれ過去最高になっており、特に20〜30代がグーンと伸びたんだとか。

 子どもは親の背中を見て育つ。「ネトウヨが増えている」とか「右傾化している」なんて心配している人も多いらしいが、そこは安心してほしい。社会主義の教えは、今もしっかり日本人に刷り込まれている。

最終更新:4月9日(火)14時6分

Business Media 誠

 

この話題に関するブログ 1件

主なニュースサイトで 正社員の雇用問題 の記事を読む

PR

PR
Yahoo!スマホマネージャー

注目の情報


PR