三菱電機は2013年4月12日、人工衛星の生産のために設置した新棟を公開した(図1)。既存の人工衛星生産棟と棟続きとすることによって、共用試験設備を設置した場所まで、衛星本体やコンポーネントを移動させる際に塵埃(じんかい)対策や静電気対策として必要だった梱包や開梱(かいこん)の作業を無くした。また、衛星本体の組み立て・試験スペースを新棟の追加によって広げることで、従来は年間最大4機だった生産能力を年間8機まで向上させた。
三菱電機の人工衛星ビジネスによる2012年度の売上高は約700億円。同社はこれを2020年度には1500億円に拡大させたい考えだ。そのためには年8機の生産が必要であり、今回の新棟設立に至った。
三菱電機の人工衛星ビジネスにおける現行シェアは国内で約6割、海外で5%。同社の2012年度における人工衛星の年間生産台数は3機だった。目標とする年8機の受注を獲得するには、いかに実績を積んでいくかが大切だという。そのためには「納期内に確実に仕上げることと、標準衛星(プラットフォームを標準化した衛星)をさらにブラッシュアップしてコスト競争力を付けることが重要である」(同社)。
新棟は6階建てで、1~4階が吹き抜けになった衛星本体の組み立て・試験スペースおよびコンポーネントの一部試験スペース、5階がコンポーネントの試験スペース、6階がコンポーネントの組み立てスペースとなっている(図2)。冒頭で述べたように、既存の生産棟と棟続きになっており、衛星本体やコンポーネントは梱包せずにエアパレットに載せるだけで棟間を移動させられる仕組みだ。コンポーネントのフロア間での移動には専用エレベータを使う。
衛星本体の組み立て・試験スペースは、室内の高さが19m、フロア面積が1000m2(平方メートル)、クリーン度はクラス10万、温度は23±2℃、湿度は45±10%で管理されている。壁面の1つには、太陽電池パネルを無重力に近い低抵抗の状態で展開することができる「SAP展開支持装置」が備え付けてあり、天井にはクレーンが2基設置してある。また、壁を隔ててコンポーネントの試験スペース(一部)と電波暗室が設置されており、同試験スペースには加振力が6.75tと12.5tの2台の小型振動試験機(2台とも移設)、および直径が1.5mの2台の小型スペースチャンバ(1台は移設、1台は新設)を配置する予定(図3)。人工衛星本体に使う大型の共用試験設備(振動試験装置、スペースチャンバ、コンパクトアンテナテストレンジ、音響試験設備)は棟続きになっている既存の生産棟の1階に設置されている。
コンポーネントの組み立てスペースは、フロア面積が900m2、クリーン度と温湿度は衛星本体の組立・試験スペースと同様。床は静電気を防止する「静電フロア」となっており、安全を考慮して電力は全て天井に這わせた配線から供給する仕組みになっている。ここで組み立て対象とするコンポーネントは、「スライスモジュール」と呼ばれる電子基板とハーネスで構成される箱もののモジュール。作業机を並べ、人手で配線やはんだ付けなどの組み立て作業を実施するためのスペースという。同新棟の稼働は2013年5月下旬の予定。
(Tech-On! 富岡恒憲)
[Tech-On! 2013年4月12日掲載]
三菱電機、人工衛星
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