抗う:原子力発祥の地で/2 抗議の輪、緩くつながり 動員は過去、ネットが力 /茨城
毎日新聞 2013年04月04日 地方版
<抗(あらが)う>
「署名活動、やる?」「やりたい!」
1月27日午後3時過ぎ、水戸駅南口ペデストリアンデッキ。日本原子力発電東海第2原子力発電所の廃炉を求める、月に1度の「脱原発水戸アクション」を動画撮影していた那珂市の会社員、関善継(50)が声をかけると、その中学3年(当時)の女の子は即答した。
女の子はツイッターで「友達にも勧めたい。署名用紙が欲しい」と関に連絡。次のアクションが行われた2月24日、署名用紙を受け取りに来た。その後、学校で署名活動をした女の子は3月24日のアクションで、関にこう報告してくれた。「250人は集まったよ」。関は、女の子の本名を知らない。
マイクで廃炉の必要性を訴えるとともに署名を呼びかける「脱原発水戸アクション」は昨年7月に始まった。参加しているのは、労働組合など既存の団体に所属しない主婦や会社員ら一般市民だ。
関はインディペンデント・ウェブ・ジャーナル(IWJ)のボランティアスタッフとして、脱原発デモや集会などを動画撮影し、ウェブ上で放送している。「大手メディアが報じないことを伝えることで、人が行動するきっかけになれば」と仕事の合間を縫って活動を続ける。
東京電力福島第1原発事故当時、長男は生後3カ月。「チェルノブイリ原発事故では130キロ離れた地域で健康被害が多発した」と影響を案じ、妻(41)と長男を遠方に避難させることを決断。2人は縁もゆかりもない岡山県で今も生活を続ける。長男は2歳になった。「子どもが一番可愛い時期に、離ればなれの生活。悔しい。時間を返せ」。関は怒りをあらわにする。
知事宛ての東海第2原発廃炉を求める署名は、昨年11月中旬時点で27万筆を超えた。関のように、さまざまな人々がツイッターなどのソーシャルメディアを使って輪を広げ、署名を集め続けている。関は続けられるだけ続けるつもりだ。「アピールしていくことで、無関心をなくしたい」
組織に属さない個人が緩やかにつながることで続く脱原発運動。一方、水戸対地射爆撃場返還運動は異なる性格を持っていた。