抗う:原子力発祥の地で/4 出身母体の呪縛 個人意見言えぬ議員 /茨城
毎日新聞 2013年04月06日 地方版
<抗(あらが)う>
日本原子力発電東海第2原子力発電所の立地自治体議会として、再稼働を是とするのか、非とするのか。東海村議会は結論を先送りし続けている。
11回目の開催となる2月18日の村議会原子力問題調査特別委員会(豊島寛一委員長)。放射性廃棄物問題などについて意見が交わされる中、結論を出す時期についてやりとりがあった。
舛井文夫氏(新政会)「あと100回やれば合意形成できるのか。議会として結論をそろそろ出すべきだ」
大名美恵子氏(共産)「意見を出していない人がいる。十分審査に関わらない委員会の中で採択していいのか」
約2時間半に及んだ委員会で発言したのは、19人のうち11人。結局、結論を出す時期すら決められないまま、閉会となった。
同委員会は、村在住の主婦らで作る「リリウムの会」が昨年3月議会に提出した東海第2原発の再稼働中止を求める請願などを審査するために設置された。傍聴を続ける同会の佐藤佳代子(42)は「昨年と同じことの繰り返し。政治家なら自分の意見を言うのが当然。逃げているだけ」といらだちを隠さない。
同会は推進会派議員に再稼働中止を直接訴えているが「立地自治体の議員は簡単には結論は出せない」などと曖昧な態度に終始しているという。中には原発メーカーの日立製作所社員、日本原子力研究開発機構の職員もいる。佐藤は「出身母体がある人に個人の意見は言えない」とも思う。
じわりじわりと再稼働容認にかじを切るのではないか。村内には懸念の声も少なくないが、あきらめる気はない。村内で避難生活を続ける福島県民の訴えを聞く会合を開き、議員に参加を呼びかけることも考えている。「若い人が増え、裾野が広がれば変わってくるのではないか」。佐藤はあくまで希望を捨てない。
同じ地でかつてあった再処理工場建設反対運動は、政治的な駆け引きにからめとられた。
「知事から『何とか頼むよ』と頭を下げられたら、しゃあんめえ(仕方がない)」。元勝田市長の川又敏雄(89)は、運動をこう振り返った。
64〜65年、県議会と勝田市は「水戸対地射爆撃場と再処理工場の併存は安全性から容認できない」と反対を決議。69年3月、県議会再処理工場調査特別委員会が海外調査などを経て「再処理工場の安全性は確認するが、射爆撃場との併存は認められない」と報告した。