抗う:原子力発祥の地で/5止 他人任せでは守れない 3.11で変わった市民 /茨城

毎日新聞 2013年04月07日 地方版

 <抗(あらが)う>

 「暫時休憩いたします」。3月22日に行われたひたちなか市議会文教福祉委員会で、川崎三郎委員長が宣言した。東京電力福島第1原発事故を受けて、子どもたちの甲状腺エコー検査を公費負担で実施するよう求める陳情の審査で、市議の意見が割れていた。

 休憩中に「公金を出す根拠が薄い」などの議論が交わされた。ある程度意見が出尽くしたことを受け、川崎委員長は言った。「不採択の意見が多い。不採択の根拠、反対討論を入れてください」。再開された審議では、休憩時間で話し合われた通り、1人の議員が不採択を主張。全会一致で不採択となった。

 「核燃料サイクルを巡る秘密会議と同じ。おかしい」。福島第1原発事故以降、市議会に足を運ぶようになった5歳の長女を持つひたちなか市、加藤由紀子(39)は、休憩中に議論を進める議会運営のあり方に憤る。議事録が作成されず、市民が議員の発言をチェックできないからだ。これに対し、市議の一人は「公式な記録がとられていると発言しにくい。休憩中なら本音の議論ができる」と反論する。

 加藤は福島第1原発事故前まで政治に関心は全くなく、議会の傍聴もしたことがなかった。しかし事故後の11年5月、同市の那珂久慈浄化センターの焼却灰から1キロ当たり1万7020ベクレルの放射性セシウムが検出され、子どもの健康を思い危機感を持った。

 「他人任せでは子どもは守れない」と市議や市職員に働きかけるようになったが、戸惑うことが多い。「まず議長に話を通して。議長がOKならOK」などと言われるからだ。「民主主義という点ではおかしいのではないか」と疑問に感じる。

 これまで政治に無関心だった自分にも大きな責任があると認識している。だからこそ加藤は思う。「3・11以降、市民は変わった。一緒に考えて、議会も変わらないといけない」

 脱原発運動をきっかけに、議会への働きかけなど住民自治の意識を高める市民。約半世紀前の再処理工場設置反対運動は逆に、行政による市民の啓発活動だった。

 「民主主義の試金石」「地方自治の試金石として」「住民不在の行政あらためよ」−−。当時の勝田市の「市報かつた」には、住民に自治の精神を意識させる痛烈な言葉が並ぶ。

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