2012年2月28日(火)

「メガソーラー構想」得する孫正義、損する国民

飯島 勲 「リーダーの掟」

PRESIDENT 2011年12月19日号

著者
飯島 勲 いいじま・いさお
小泉純一郎元総理大臣首席秘書官

飯島 勲

1945年、長野県辰野町生まれ。小泉純一郎元総理首席秘書官。現在、松本歯科大学特命教授。最新刊『リーダーの掟』プーチン絶賛でたちまち重版。

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小泉元総理秘書官 飯島勲 撮影=小倉和徳
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黒岩はYES! 石原はNO!

死に体となっていた菅直人首相(当時)が「この顔が見たくないなら、法案を成立させろ」と粘るだけ粘り、どさくさに紛れて成立させてしまった「再生エネルギー特措法」(正式名称:「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」)。菅首相を「自然エネルギー普及」で煽った孫正義・ソフトバンク代表取締役社長の動きに、危惧の念を抱いている。

孫は2011年9月「自然エネルギー財団」を立ち上げた。自然エネルギーを基盤とする社会の構築に向けての提言を行うための組織で、非営利だという。

10月14日開催、ソフトバンクショップ表参道店「iPhone 4S」発売記念セレモニーの模様(写真と本文は関係ありません)。

2011年5月には、一カ所80億円もかかるとされる20メガワット級の発電所を10カ所以上つくる「メガソーラー構想」を発表し、全国の自治体の首長に協力を呼びかけた。このときは、埼玉県の上田清司知事、神奈川県の黒岩祐治知事など35道府県、17政令市の首長が賛同、石原慎太郎都知事は拒否したものの、順調な滑り出しを見せた。

実は、この構想は土地の確保は自治体に丸投げして無償提供を求めるなど、リスクを負うのは自治体側。ソフトバンク自体はほとんど投資する必要はない。一方で発電した電力は固定価格での買い取りが「再生エネルギー特措法」によって保証されており、売り上げも心配ない。ソフトバンクは、損をしない構想だった。

当初は乗り気だった各地の首長たちも、次第にトーンダウン、構想も縮小を余儀なくされた。それでも、孫は予定通り「自然エネルギー財団」を立ち上げて、電力ビジネスへの参入をあきらめていない。孫は「私のことを政商という人もいるが、私は金儲けのためにやっているわけではない」という。孫がいくらエネルギーを金儲けの手段にしても構わない。冷静に考えるべきは、孫の行動が、国益に資するか否かだ。

日本における一般向け電力供給は明治20(1887)年、東京電力の前身に当たる東京電燈が日本橋茅場町の火力発電所を稼働させたのが始まりだ。その後、全国に電力会社が乱立。地方自治体が独自に運営するもののほか、民営企業が分離・合併を繰り返し、激しいダンピング競争を行い、電力事情が不安定になることもあった。

第二次大戦が勃発し、これらすべての電力会社は統合された。戦後、昭和26(1951)年になってGHQの指導により、全国を9ブロック(プラス沖縄)に分割して、現在の形におさまった。

電力9社の株主の構成を見ると、かつて自治体がそれぞれの地域で独自に発電事業に携わっていた名残があるのがわかる。東京電力の第5位の大株主は、東京都の4267万株で、全体の2.6%。関西電力の場合は、1位が大阪市で8.9%、4位が神戸市の2.9%だ。このように、電力9社のすべてで、10位以内に地元の中心的な自治体が含まれている。福島第一原発事故後、電力9社の独占体制に批判が集まっているが、各自治体は株式の保有という形で経営に参画、住民サービスの向上や、地域の社会経済の活性化といったミッションを遂行してきたといえないだろうか。

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