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社説

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日台漁業合意 中国とも対話進めたい(4月11日)

 日本と台湾が、沖縄県・尖閣諸島周辺の漁業権をめぐる取り決めに調印した。

 外交関係がないため民間レベルだが、事実上の漁業協定に当たる。

 台湾も中国と同様、尖閣領有権を主張している。取り決めは尖閣周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)の一部海域を共同管理水域とし、台湾漁船の操業を認める。

 領有権問題には触れず、双方が一定の譲歩をする内容だ。

 17年に及んだ協議を妥結させる背景には、尖閣問題に対する台湾の姿勢を軟化させる狙いがあろう。中国と台湾が共闘する「対日連携」を分断する戦略もうかがえる。

 ただ、台湾との摩擦が小さくなれば、中国と緊張関係のままでいいわけではない。政府は領有権など譲れない部分を守りつつ、中国とも対話による和解の道を探ってほしい。

 日本は1996年に国連海洋法条約を批准したことに伴い、周辺国・地域と新たな漁業協定を結ぶ必要があった。

 中国、韓国とは新協定に調印済みだが、台湾とは2009年まで16回の協議でも合意に至らなかった。障害となったのは尖閣周辺の扱いだ。

 新たな取り決めでは北緯27度以南の水域の一部を共同管理する。台湾側は一定の漁場を確保した格好だ。

 台湾漁船の操業が、沖縄の漁業関係者らに影響する可能性も指摘されている。政府は台湾と妥協した経緯や、漁業資源確保の方策について説明を尽くさなくてはならない。

 海洋法条約に伴う新漁業協定交渉が、領有権の問題にぶつかる例は少なくない。98年に調印した日韓の協定も、韓国が実効支配している島根県・竹島の周辺海域に、両国の漁船が入れる暫定水域を設定した。

 竹島領有権で争ったまま、お互い主権を主張して漁船を拿捕(だほ)し合うような状況は望ましくないからだ。

 政府は竹島周辺の暫定水域の現状を明らかにし、台湾との合意による今後の見通しを示す必要があろう。

 気になるのは日台の合意に対する中国の反応だ。中国は台湾に尖閣をめぐる共闘を呼びかけてきた。

 合意に反発し、日本に対する態度を硬化させる可能性もある。

 だが、領有権問題を理由に、経済をはじめお互いの利益を損なうことは得策ではない。

 海洋監視船などが連日のように日本領海に入っても、中国の主張を国際的に強化することにはならない。

 日本政府が尖閣を国有化して以降、もつれた糸をほどく努力が両国に求められる。

 中国は5月の日中韓首脳会談に難色を示しているという。対話の機会を閉ざすべきではない。

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