これは刺さった。
正直な話、一番ダメージがあった。


僕はニューヨーク時代、とにかく仲間たちに恵まれていた。

詳しくはNY時代のブログを見ていただければわかるのだが、
仲間たちとの生活だけで、僕のブログは一項目ある。
最高の仲間たちだった。

せめて、詫び一つ入れられないのか?

「社員の動揺を抑えるためだ」

社長の言うこともわかるような分からないような…。
でも、このまま僕が無言でいなくなるのって余計に怖くないか?



結果、その週の土曜日早朝、
誰も絶対に出社しない時刻にW君監視の下、
荷物整理をして、
FCI
をあとにした。

僕の2年間のFCIの生活は、そんな風に終わった。




フライトの後でもある。
社長室を後にしたが、
もう、ふらっふら。
体力的にも精神的にも、相当にこれはきつい。

家に帰る。
家族が黙って寄ってきてくれる。
嫁さん、泣きながら抱きしめてくれる。

次男はいつも通りDSをしながら
「ねーお土産はー?」
と聞いてくる。

あるよ?いろんな意味で土産話が。


夜、家族に自分の口から説明。

長男は憤慨していた。
アメリカの補習校で、将来の夢、
「アナウンサー」と書いてくれた長男。
もう、絶対に目指してはくれないだろうな…。

長女のウメ子(4歳)は一緒に泣いていた。
とりあえず、




ノリで泣いていたと思われる。




直後に
「コウメちゃん、お茶漬けー」
と言って梅茶漬けを食べてたし。





そうだ。

僕も何か食べないと。
ご飯でもレンジでチンして、
いいな、僕もお茶漬けでも…。



これが食べられない…



驚くことに、
永谷園のふりかけをかけてるのに食べられない!

永谷園、関係ないが
とにかく、力が出ない。

だめだ。

こんなんじゃ!

ねむれない!

ダメだ!

これじゃ倒れちまう!!





何なんだ?このかわいそうな感じ?
僕らしくもない!
偉そうで尊大で、女子アナに毒づいて、
へらへら笑って…

みんなから文句言われてんのに、
気にも留めない。
そんな打たれ強い自分、大好き!

そんな感じじゃないか、長谷川って!






そうだ。
ゴルフ!!
僕はアメリカに行ってゴルフが大好きになったんだ。

少しでも運動すれば、
ご飯も食べられる。
きっと夜も寝られるぞ!



打ちっぱなしに行く。
打つぞ!
100球だ!
思いっきりナイスショットして、気を紛らわすんだ!




50球打った段階で、
完全に体が動かなくなった。
うずくまる様にして、倒れこんだ。

隣のおじさんに残りのボールをあげて去る。

「おいおい、お前、大丈夫か?」

と心配するおじさん。
はい。大丈夫じゃないですね。諸般の事情により。




ネットを見てみる。
うわ…ものすごい…
打たれ強いっつったって、さすがにこれは…ちょっと…


その中でもショックだったのが
ウィキペディアだった。

誰でも編集することのできるこのサイトは
僕を攻撃する最高の場となっていた。

僕の好感度を上げるような書き込みは即時削除される。

反面、僕を中傷するような書き込みは完全に維持される。

今までもずっとそうだったが、
だが、かつては一つ、実はウィキペディアの中で
ちょっと嬉しい記述があって、

僕はあるアイドルグループを応援していたのだが、
昔、僕のウィキペディアには
「このグループのファンだ」
と書かれていて、結構それが嬉しかったりしていた。




…あ…AKBとかじゃないです。
僕、アイドルとか、好きじゃないんで。
まぁ、いいや、この話はもう。




ファンの人が書き込んでくれていたのだろう。

なんだか受け入れてもらってる感じで嬉しかった。





事件から2日後。

当然、その書き込みは削除されていた。
そうだ。
僕は世間ではもう、横領犯だ…。
僕みたいな存在は、逆にみんなに迷惑かける。ファンだなんて、言えない立場になったんだ…。


FCI
HPを見てみる。
おいおい…
僕が出ている作品、
僕が出演しているインタビュー
僕がスタッフとともに作っていた企画まで消去されてる!

なんだ?これ!?
なんでこんなにエキセントリックな反応になる??

この作品はディレクターたちの作品だぞ!!?
僕がナレーションを当てている作品まで消してるのか?!

なんで、彼らの作品が消されなくちゃいけない?
ディレクターたちは何も悪くないだろ!!


FCI
内では、即日、
全スタッフに指令が出ていた。

「長谷川に対して連絡を取ることを一切禁ずる」






夜、寝られない。

何も手に付かない。

僕の人生で、一番つらく、厳しい5日間。



しかし、



あの日から5日後。
僕の目に、あるものが飛び込んできた。



僕は、
何が一番大切なのか、やっと、やっと知ることが出来たのだ。