980円の靴足袋で滑るリング対策もバッチリの佐藤=東京新宿区の協栄ジムで(竹下陽二撮影)
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来月3日にタイ・シーサケット県で3度目の防衛戦を行うWBC世界スーパーフライ級王者佐藤洋太(29)が11日、“賢治スピリッツ”で必勝を誓った。同級8位で地元タイのシーサケット・ソールンビサイ(26)=タイ=と対戦するが、日本人ボクサーにとって、タイは過去17戦16敗1分の鬼門。防衛戦においては、1960年代に伝説のファイティング原田とカミソリパンチの海老原博幸も地元判定に泣いた。不利な戦いは必至だが、佐藤は同じ岩手県出身の偉大なる詩人、宮沢賢治の精神で乗り切る。
佐藤が、およそらしくないストイックなセリフを吐いた。
「雨にも負けず 風にも負けず 欲はなく決して怒らず いつも静かに笑っている 賢治の精神ですよ」
タイでは日本人が勝ったことがない。あの海老原も原田も地元判定に泣いた。宿泊している部屋の隣でどんちゃん騒ぎをされたり、電話がひっきりなしで鳴って、睡眠妨害されたり。いやがらせは枚挙にいとまがない。それは、昔の話で最近はなくなったというのがタイ関係者の話だが、用心に越したことはない。
計量の時、細工をされる可能性があるから、リミットより500グラム余計に減量する。夜はiPodでロックを聞きながら寝るから騒音も問題ない。猛暑のタイではセコンドが水をバショバショまくから、リングが滑りやすくなる。だから、ホームセンターで大工さん用の980円の足袋靴を買った。滑るリング対策もバッチリだ。でも、何が起きるか予想不能なのが、タイでの戦い。
「何があっても笑っていられるか。ボクの器が試される。タイだからって、よそいきのボクシングはしない。自分のボクシングを貫く。マジメにやったらダメ。ガード下げて、ニヤニヤ、ヘラヘラ笑って…。フルラウンド圧倒して判定負けもあるかも。それでも、決して、怒らず…です」
地元判定にも負けず 不正計量にも負けず 猛暑にも負けず…。佐藤は“賢治の精神”でタイで勝つ。
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