◇阪神3−0巨人
チームの連続無失点も、今季初の勝ち越しも頭になかった。対巨人2試合連続無失点で迎えた3戦目にマウンドに送られた阪神・榎田の頭にあったのは「回の先頭打者を出さずに、1イニング1イニングをしっかり投げること」だけだったという。4日のプロ初先発となった中日戦は負け投手となったものの、8イニング1失点。手応えをつかんでの2試合目だったが、注意とは裏腹にいきなり長野に左前に弾き返される。
脇谷にバントで送られ失点のピンチ。だが、ここから坂本を中飛、村田を投直とすると波に乗る。初回の鳥谷の適時打による先制点を背に8回2死までこの1安打に封じ込む。完封も見えた直後に実松に二塁打、代打の阿部に四球を与えたところで福原にマウンドを譲ったが、堂々の働きで甲子園のファンからの熱い拍手を一身に浴びた。
「正直できすぎだと思う。初回に先頭のランナー出したけど、そこをゼロで切り抜けられたのがかえってよかった」。投球の軸にしたのが、カーブとスライダーの中間の曲がり方をするスラーブ。これでタイミングを外し、後は真っすぐ、シンカーを自在に操った。
3年前にプロ入りした時から望んでいた先発での初勝利。伝統の一戦で史上初の同一カード3連戦すべてで無失点の快挙を達成した一員となった。回り道とも言える2年間のセットアッパーでも、この経験を生かした。「ランナーを出したときには中継ぎの気持ちでいっている」。シビアな場面も切り抜け養われた精神力も技巧派左腕の大きな武器だ。 (中山隆志)
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