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BSE対策 自治体は全頭検査を打ち切れ(4月12日付・読売社説)

 国が自治体に求めている国産牛のBSE(牛海綿状脳症)検査の基準が7月にも緩和される。

 内閣府・食品安全委員会の専門調査会が、検査対象を現行の「月齢31か月以上」から「48か月超」へ引き上げる答申案を了承した。

 国内外で確認されたほとんどのBSE感染牛が48か月超だったデータなどから、検査基準を緩めても、「人の健康への影響は無視できる」と結論付けた。

 科学的知見と最近の状況を踏まえた妥当な判断である。

 BSEが猛威を振るった欧州では、日本の新基準より緩い72か月超だった検査対象を、さらに絞り込む方向になっている。

 国内で1年間に食肉処理される約120万頭の大半は20〜30か月台だ。新基準の導入後、ほとんどが検査対象外になるだろう。

 2001年9月に国内で初めて発見されたBSEは、牛の餌に混ぜられた肉骨粉の使用を禁止する飼料規制によって世界的に激減した。日本では02年1月に生まれた牛を最後に見つかっていない。

 BSEの発生状況を監視する国際獣疫事務局も来月、日本をBSEのリスクが無視できる国として正式決定する見通しだ。

 これで国内のBSE問題は、ほぼ終息したと言えよう。

 気がかりなのは、自治体が実施している全頭検査である。

 国の基準が段階的に緩和された後も、食肉検査を受け持つ都道府県などは、安全性に問題のない若い牛も含めて検査対象にしてきた。厚生労働省も依然、年約5億円の補助金を出している。

 多くの自治体は「消費者の安心のため」と理由を説明する。だが、実際は、他自治体に先行して全頭検査を終了すれば、風評被害で地元産牛肉の販売不振につながることを恐れているのだろう。

 BSE対策で異例の全頭検査を実施しているのは日本だけだ。これを継続することは、かえって、日本の牛肉は安全ではない、といった誤解を与えかねない。

 大切な予算と人員をつぎ込んでまで、全頭検査にこだわる必要はもはやない。自治体は、全頭検査を早期に終了すべきである。

 厚労省は、全頭検査を終了しても安全性に問題がないことを消費者に十分説明することが求められる。自治体が独自に行う検査への補助金も打ち切るべきだ。

 政府が2月から見直した外国産牛の輸入規制についても、科学的なリスク評価に基づき、さらなる緩和を検討してもらいたい。

2013年4月12日01時42分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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