| 韓商連直轄を圧倒的多数で承認した第66回定期中央委員会(2月22日)
| | 各地方韓商の総会では「民団と一体で」が強調された(6月、神奈川韓商) |
韓商連の私物化狙う
正常化へ着々と道筋を整えてきた在日韓国商工会議所(韓商連、洪采植会長)。全国的に再び一体感を高めるなかで、「一般社団法人」の取得を掲げることで、民団からの「傘下団体脱退」をもくろんだ韓商連旧執行部の実態に憤りが広がっている。旧執行部が起こした混乱は一体なんだったのか。記者座談会を通じて真相に迫った。(文中の敬称は省略)
「独裁型」へ改編目論む…傘下団体の枠を破り暴走 ■□混乱はなぜ起こったか
◆直轄制度の導入を企図 A 韓商連の混乱は3年前にさかのぼる。旧韓商連が勝手に定款を改定したので、民団中央が差し戻した。それがきっかけだった。韓商連が地方韓商を直轄できる制度を新設する、きわめて重要な内容だった。 B 民団が差し戻したのは当然だ。このような重要な問題はもちろん、いかなる定款変更も中央委員会の承認を得なければならない。 C もともと韓商連は連合組織体だ。それを中央集権型の組織に変えようとした。 B 連合組織体の本質的な部分に手をつけ、自分の思いどおりにできるよう定款の変更をもくろんだわけだ。しかし、手続き上もさることながら、内容そのものが問題だった。独裁型の組織にし、私物化しようとする意図が見え見えだった。民団として到底許せるものではなかった。それを拒否されたために民団から抜け出すことを考えたのは明らかだ。 A まったくその通りだ。「傘下団体脱退」について昨年12月8日、当時の会長・朴忠弘が中央団長の鄭進に初めて口頭で告げた。口頭ではなく文書で出すよう求め、同12日に「一般社団法人格取得」に関する文書が提出された。改めて明らかになったのは、傘下団体脱退についての討議が韓商連全体で行われていなかったことだ。 C 昨年12月26日の中央執行委員会で、傘下団体からの離脱は、民団規約に違背するだけでなく、同胞社会の分裂をもたらす由々しき事態であるとして、「認定できない」と確認された。 B ところが、旧韓商連はなりふり構わず暴走した。執行委員会の決定に従わず、強引に臨時理事会で相反する決議を行ったため、一気に民団組織全体に緊張感が走った。 ◆各地方から「離脱反対」 C 東京や神奈川、愛知など地方韓商から「傘下団体離脱反対」を表明する動きが相次いだ。まさしく地方組織の混乱と分裂が起こり始めた。 A こうなると、民団として座視することはできない。1月24日の中央執行委員会で処分を一任された常任委員会が2月15日に協議した結果、韓商連の直轄措置を決定した。 C 旧執行部はまさか中央委員会(2月22日)前に直轄されるとは思いもよらなかったようだ。2月15日に公館から調停案が出されたため、過信していたのではないだろうか。 B それにしても、直轄後、日本の官憲を韓国中央会館に誘導したり、裁判ざたを起こすなど、見苦しいほど突っ走った。 A 直轄措置に関しては中央委員会で最終判断される。結果は、圧倒的多数で承認された。そこでの決議はなによりも重い。 B その後、朴忠弘、崔鐘太、金淳次(旧韓商連副会長)、慎三範(同)の4人が除名処分となったね。 A 崔鐘太にとって、直轄も除名も予想外の処置だったに違いない。過去の事案では、監察委員会から呼び出された人はほとんどが事情聴取に応じてきたが、今回に限っては文書の受取拒否、2回の事情聴取にも応じないという不誠実さ。これでは情状酌量の余地がない。
本音を隠すカモフラージュ…何より「離脱」ありき ■□「法令遵守」その意味とは ◆法の改正で手続き簡便 B 一般社団法人の設立についてよく分からない人が多いようだが。 A 以前は許認可制だったので、法人格取得にはそれなりに意義もあっただろう。2008年12月に行政改革の一環として新たな法律に改正され、登記制に変わった。一定の要件を満たせば、簡便に手続きできるようになった。一般社団法人の場合、6万円の登録免許税を払って登記すれば、誰でも設立できる。 以前の社団法人のように、公益性のある法人として認められるものとは違う。それは「公益社団法人」として別にある。 C 韓商連の旧役員は、法人格の取得によってブランド力が向上するだとか、信用力が向上するだとか宣伝しているが、単なる飾り物にすぎない。半面、法人化にともなう法的制約は多々ある。なのに仰々しく祝賀会を開くなど、別に意図があるとしか思えない。 B 名称にごまかされてきたのは疑いない。そもそも社会的な信用力は名称ではなく、その組織がどれだけの実績を有するかで社会から判断される。われわれの場合、在日同胞や祖国、日本社会への実質的な貢献が重要だ。 A 彼らが一般社団法人化を推進した狙いについて、今一度検討してみよう。傘下団体からの脱退を正面から提起すれば、反発が大きいと予測したと思う。そこで社団法人格の取得に際して、コンプライアンス(法令遵守)の観点で傘下団体からの離脱が必要だと詭弁を弄した。ごまかしの名分を掲げることで、自分たちが意図したものをカモフラージュした。 ◆関知しない経済産業省 B この件に関して、1992年に「韓国商工会」から「韓国商工会議所」に名称変更した事実を思い起こしたい。東京韓商を例にとれば、本来は「在日韓国商工会議所東京」とすべきところを「東京韓国商工会議所」としてきたのに、この20年間、黙認されてきた事実を忘れてはならない。問題があるならば、すでに行政指導を受けてきたはずだ。コンプライアンスの問題などどこにもなく、ただただ傘下団体から外れるための口実にすぎない。 C こうした事実を確認するため、民団中央の実務者が旧韓商連の役員とともに経済産業省の担当課長らと面談した。それによれば、名称に関しては「1国1会議所」の原則が適用されるが、それ以外は商工会議所の適用を受けないという。 A あくまでも経産省は、「外国の商工会議所に対して、日本の商工会議所のような強制力はなく、ただ代表者や定款を変更したときだけ届け出るよう求めている」という傍観者的な立場だ。傘下団体離脱問題についても、「それはあなたがたの内部問題だから、われわれは関知しない」と回答した。 B 外国商工会議所に対しては名称使用の乱立を防止するだけで、「定款や事業計画等の中身まで吟味するものではない」と明言した。問題は、コンプライアンス云々を言い出しながら、韓商連の定款を都合のいいように変えようとしただけでなく、民団の規約まで踏みにじった点、許されるものではないということだ。 C 有志で別のグループや団体を結成することはいっこうに構わない。さまざまな団体の設立が同胞社会の多様化、活性化につながると思う。ところが今回、傘下団体である韓商連を看板ごと持っていこうとしたから、問題が広がった。この1点だけはどうしても許されない行為だ。
民団との絆より深く…組織活性化へ気運高まる ■□「雨降って地固まる」 C 韓商連の直轄後に結成された「組織正常化委員会」(委員長・洪采植)が中心となり、5月18日に定期総会を開催するまでにこぎつけた。出席者からは、「全国商工人のため一致団結しなければ」との強い思いが感じられた。 B 総会では洪采植を新会長に選出したのにともない、民団中央本部団長の呉公太が「直轄解除」を宣言したときは、出席者全員が胸をなでおろしていた。 課題は山積しているものの、正常化へ加速できるとの自信を深めたと思う。 ◆押しかけた除名処分者 A その後、各地方で韓商の総会が順次開かれたが、どの会長も「民団とは一心同体」であることを強調していたのが印象深い。 B 騒乱が起こったのは大阪韓商の総会だけだ。民団大阪本部が処分を受けた者を参加させないよう再三警告したものの、総会当日、除名処分者らがそろって、入口での制止を振り切って強引に会場に入った。民団大阪本部団長の鄭鉉権が毅然と「総会は無効」と宣言した。 C その後の今月5日、大阪民団、韓商の関係者はもちろん、顧問や婦人会、支部団長らが一堂に会して意見交換する場を持ち、「地方韓商は地方民団の傘下団体であり、同胞社会発展のためにこれまで通り協力していく」ことを確認したのは意義深い。 ◆新設や再開再建の動き B この5、6年間で韓商連の組織自体がガタガタになった。資金の使途も不明で、消滅寸前というのが実態だった。しかし、今回の一連の騒動は組織をてこ入れするきっかけになった。 一部になお問題はあるものの、地方で新設や再建の動きが見られる。本来あるべき組織の出発点になったといえよう。栃木、千葉、福岡が再加入し、北海道が再開、福島や滋賀では新会長を選出して活性化に向けた気運が高まっている。 A 民団と韓商との絆を深めた地方も多かったのではないか。 ◆次代育成へ青商に注目 C 民団全体から見ると、もともと崔鐘太一派の基盤は弱かった。彼自身もそうだが、世代交代が進んで、民団の歴史や内容をよく知らない者が韓商連や地方韓商の運営を担った。まず離脱ありきの私物化路線を見抜けなかったことが、大きな混乱を引き起こす一因になったといえる。 B 韓商を担う次世代に関心を向けるべきだ。今回の騒動を教訓にし、近年、さまざまな活動を展開している青年商工会(青商)のメンバーを、次世代育成の一環としてもっと表舞台に出していいと思う。青商自体の役割を明確にしながら、民団との距離を縮める関係を築き、早くから経験を積ませるべきではないか。 ◆直轄後の主な出来事 2月15日 | 民団中央常任委員会で韓商連の直轄措置を決定 | 2月15日 | 旧韓商連の通報で警察官4人来館 | 2月20日 | 「一般社団法人在日韓国商工会議所」を設立登記 | 2月22日 | 第66回定期中央委員会で直轄措置を圧倒的多数で承認 | 3月16日 | 「正常化」に関する韓商連顧問懇談会 | 3月27日 | 正常化委員会第1回会議 | 3月28日 | 旧韓商連が東京地裁に事務所明け渡し「仮処分命令」申立 | 4月20日 | 全国会長団会議 | 4月24日 | 旧韓商連の「総会」強行 | 5月18日 | 第50期定期総会、新会長に洪采植。直轄解除される | 5月29日 | 民団中央監察委員会、朴忠弘を除名処分 | 6月5日 | 民団中央常任委員会で旧韓商連の一般社団法人を「反民団組織」と規定 | 6月5日 | 中央監察委員会、事情聴取に出頭しない金淳次、慎三範を除名、康正亨を停権3年処分 | 6月11日 | 中央監察委員会、崔鐘太を除名処分 | 6月13日 | 大阪韓商の第59期総会、除名者乱入で民団大阪本部団長が「無効宣言」 | 6月15日 | 旧韓商連、事務所明け渡し仮処分申立を取り下げ | 6月18日 | 旧韓商連、東京地裁に「名称使用禁止」等の仮処分命令申立 | 7月5日 | 民団大阪・大阪韓商が共催で「意見交換会」 | (2012.7.25) |