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美術体系シリーズ
デッサン
講座
<第4回>
構成力をつくるデッサン技法の体系──

編著 関根英二;ルボー主宰

形象(ストリュクチュール)は、「分量と関係構造」です。
 比例法は対象の形を、大きさと位相の関係としてとらえていく方法で、これを通じて空間感覚や構成感覚が鋭くなっていきます。
 この比例法の体系は、「いくつかの分量の集まり(1)、それらの種類と脈絡(2)、それらの具体的組成(3)、そしてそれら相互の作用場(1)」とまとめることができます。前回の講座─比例法(1)─は、この方法の最も基礎的な、外延的なもののとらえかたを解説しました。今回はその続きで(2)(3)(4)を解説していきます。
 前回は「いくつかの分量の集まり──」つまりV(垂直)・H(水平)、系統別にそれぞれの最大値を基準値10として、各部の大きさを10:9、10:8‥‥と枚挙していきました。それによって像の枠組がおおよそとらえられています。
 しかし、単純な(1)の方法ですが、垂直・水平系の誤差も含まれますし、外延の基準からは測りにくい場合(下図)もあって、若干の経験を要します。
 そこで見方を変えて次の方法の(2)そして(3)(4)とより実践的な方法にすゝみ、多角的に形を問いかけていきます。
 無論、これらの方法も前回の(1)なしには「始まらない」し、(2)があって(3)、(3)があって(4)が可能になるのです。──これが体系性です。
比例法(2)分量の種類と脈絡(相関性)の統一
※分量の種類;大中小、V系(上中下)、H系(左中右)、斜系

 比例法(2)は、(1)のようにV・Hを別個にではなく統一した単位系で、そして外延限界から個々の分量を枚挙するのではなく、その骨格を中心軸からの拡がりとして見ていこうとするものです。
 これによって、全体を構成する分量の種類と相関性が秩序づけられていきます。
 さて、対象の垂直系・水平系の最大値VとHはその中点で直交すると、分量と方位の公準系となります。
 像の形象特性に沿って、V・Hいずれか大きい方の基準値を選びます。(この像の場合はV)その中点と上下の両端点との二等分点をとると、V、3/4、1/2、1/4のスケールをもつ単位系ができます。つまり4、3、2、1です。この目盛りは、練りゴムで測り棒にマークするのも一つの手です。
 このものさしを垂直・水平系の主要各部の分量のクラス(大中小)に沿って適用し、測定していきます。
 その対象が中心線をまたぐ分量であれば、その中心線からの延長の比──垂直系なら上下にどれだけ、水平系なら左右にどれだけ──として配分して位置づけます。
 また、この像の外郭はほとんど斜線系ですが、その傾きは、両端点に垂直線・水平線を図のように当てれば、V系とH系の分量比としてとらえることができます。
●こうしてV系列・H系列を統一した分量の位階秩序ができ、各部の傾きなど全体の骨格が与えられます。

比例法(3)具体的な規準系(ものさし)による組成的統一
※組成=成分と組織

 まず全体の個性は、主部と従属部、あるいはいくつかの主要素(部分)の集まり、とみることができます。この図のように単純な場は上・中・下でもよし、上下でもいいでしょう。この見方は静物・風景でも同じです。
 この方法では1)、2)のように垂直・水平の系にとらわれず、対象の実際に即して、斜系など任意に規準体を設け、これに類比する分量から展開していきます。
 a)大局的な主軸となるような分量を規準体(ものさし)として、その内部の組織や周辺各部上・中・下あるいは左・右などの主な分量を価値づけます。図では両腕を結ぶ胸部の大きさ又は上体の主軸が具体的な規準となっていきます。この傾きは方法(2)でとらえています。
 b) a)によって価値づけられた上中下各部の主たる分量はローカルな規準体となります。これは、単位系(2)ともなり、その中点で直交する規準系をつくることもできます。これによってその周辺あるいはその内部の分量と関係のしくみを比較し拡充していけます。(──因果依属という)
 像の実際を構成する曲線的な部分は、図のように折線に純化し、その両端を結ぶ長さを底辺(規準)と見て、これと高さの比によって、その組成を概括していきます。
 こうして全体的組成、主な各部の組成が拡充統一されていきます。
 一般的には、主と従(賓)という価値は、主題や場の個性に沿って、分量の大小に関係なく任意に定められます。同様にいわゆる「中心画像」というのも空間の中心とは無関係の「価値」です。
 しかし、この比例法は分量と関係構造を内容としていますから、まず大域的な規準体は周辺に展開しやすい「支配的な」分量を選びます。

比例法(4)対比と相互作用──場のバランス
※対比(コントラスト)は、多く色価の用語として用いられ、大対比(対照)・中対比(異色)・小対比(同類)などのクラスがあります。これは次回の「色価編」で解説しますが、専門的には色だけではなく、形にも用い、分量対比、図形対比などといいます。
 像の全体をつくっているのは分量のバランスです。
 例えば、V(縦)系・H(横)系の分量比、上部と下部の
横幅や位置のバランス、左と右の縦の分量や傾きのバランス、主要各部の組成(伸びやかな部分、小きざみな変化、そしてそれらの連関性など──)、直線的な部分と曲線的なリズムとの対比など、幾重もの相互作用の場です。
 こうした多様な分量の対比が、像の個性を形づくっているのです。


 分量というのは相対的ですから、すべては対比のバランスなのです。この第4の方法は、(1)から(3)までの分量の見方を綜合し、さらに実践的にしたもので、(3)までと異なり、曲線的なものは曲線のまゝで、その対比を直観的にとらえようと試みます。
 順序はいずれも大対比(対照性)から中・小対比へとすゝめます。したがって互いに矛盾し対立する分量の綜合で、いわゆる静的な均衡ではなく、動的均衡(ダイナミック・バランスという)の世界です。
●この比例法のデッサンは、本来輪郭をたどることではなく、その空間的特性を読むことが主です。こまかい表情にとらわれず、大きな形象特性をつかむことが大切です。
「端的に、強く大きく、全的に」

 「形を正確につかむ」ということの最も基本的な方法を体系的に解説しました。
 この比例法の体系──「いくつかの分量の集まり、それらの種類と相関性、それらの具体的組成、それら相互の作用場」──は前に述べたように「ものの見方」であり「ものの形成の方法」です。実践的には対象の特性と主体(作者)の特性によって適宜使い分けられていくでしょうが、方法の体系は自然的な「ものごとの生成のシステム」なのです。
 したがって、これに続く「関係法」の次元になっても、また次回の「色価の見方と構成の方法」でもまったく同相です。方法の(1)(2)(3)(4)の論理を実践を通じてしっかりとつかんでおいて下さい。

●次回は「色価・バルール」へ進めます。
下記(ブルー)のシリーズを公開しています。
第1回;素描技法を体系的に学ぶ
第2回-前編-;デッサン技法全体の概観
第2回-後編-;デッサン技法全体の概観
第3回;<比例法>形象(前編)
第4回;<比例法>形象(後編)-top

第5回;<色価>バルール
第6回;<比例法>色価(前編)
第7回;<比例法>色価(後編)
第8回;<点関係法>形象

第9回;<点関係法>色価

第10回;<線関係法>形象
第11回;<線関係法>色価
第12回;<面関係法>形象
第13回;<面関係法>色価
第14回;<体制法;概観

第15回;<線体制法>
第16回;<面体制法>

第17回;<構成法;概観>
第18回;<点構成法>



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