「比例法」には、これに続く3つの方法があり、それぞれ独自性があって、どの一つの方法でも対象の形をとらえることができます。同時に(1)から(2)へ、(2)から(3)へと方法の系列は必然的なつながりもある体系を成しています。
この4つの方法は実践的には、画因(モチーフ)の種類に即してそれぞれ適用されていきます。 例えばある情況では(1)の方法よりも(3)の方法、あるいは(4)の方法が適用し易い、といったこともあるでしょう。またある個性にとっては方法(1)よりも(3)の方が肌に合っている、ということも考えられます。しかし「基本」としては「いかなるモチーフによる、いかなる表現」にも対応しなければならないことから、方法の全体を体系的に学びます。
いずれにしても、この「比例法」は、空間感覚をつくり、直観力と構成力をつくることを目的とする方法論です。これに熟達すると棒など無しに直観的に対象の形象を読みとるようになります。
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デッサンは「ものをそれらしく描写することだ」と勘違いして5年10年試行錯誤している例を多く見ますが、これでは近代以後の構成的な世界の展開は望むべくもありません。これと「基本のデッサン」とはまったく次元の異なるものです。基本としてのデッサンは「特定のモチーフによる構成表現を通じて、創造的な眼と精神と手をつくることなのです」。
つまり「一を知って十を識る」が基本の内容です。
● デッサンの方法は「対象の読みかた、その記しかた」つまり造形の「読み書き」にほかなりません。
したがって対象を読む眼(感覚と知性)が豊かになれば、その描きかたも豊かになっていきます。 |