GOD EATER ~RED・GODDESS~ (真王)
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アルダノーヴァと破壊神

男は野望を果たすため自らの命を差し出し、偽りの神はそれを糧とした。

女神を守るように包み込んでいた巨腕が動きだす。

人が生きる未来のために命を捧げたシックザールは、スミカたちの最大の敵として立ち塞がった。

『さあ…ノヴァの細胞を元に造られた、この「アルダノーヴァ」の圧倒的な力の前に平伏すがいい!!』

サリエルやザイゴートのように空中に浮いたアルダノーヴァは、シックザールの叫びと共にスミカたちに襲い掛かった。

「散開!!」

スミカが声を張り上げて、第一部隊は花火のように散らばる。

それより一瞬遅くアルダノーヴァの腕が振るわれ、虚空を切り裂いた。

『無駄だ!!』

シックザールの声がそう叫んだ時、女神が手足を細く伸ばしてさながら蜘蛛のように四つん這いになる。

そのまま頭をブンブンと振ると、しなやかな髪から四方八方にカッターが飛ばされた。

『!!』

カッターは正確にスミカたち一人一人に向かって行く。

スミカ、アリサ、ソーマは装甲を備えていたため対処出来たが、サクヤとコウタは回転して躱すしかなかった。

「当たれぇ!!」
「食らえ!!」

コウタとサクヤはすぐに立て直し、バレットを放つ。

サクヤのレーザーは美しい弧を描き、コウタの散弾は互いに交錯しながらアルダノーヴァへと向かっていく。

『甘い!!』

バレットが届くまであと10メートルと迫った時、真っ白な光の柱がシックザールの周囲を囲んだ。

すると、力強く飛んでいたオラクルバレットは勢いを失い、タバコの煙のようにか細くなり、やがて消えた。

「なっ!?」
「なんですって!?」

オラクルが突然消失したことに驚きを隠せない二人。

「がら空きだ!!」

男神の背後からソーマが近づき、神機を喰らわせた。

『がぁっ!?』

シックザールは初めて、自分の身体の肉を噛みちぎられる痛みを味わった。

(これが…人々が今まで受けてきた痛みか…)

バーストしたソーマはそのまま地を蹴り男神を縦に切り裂こうとしたが、小賢しいとばかりに振るわれた男神の巨腕に弾かれてしまう。


ガァンッ!!


「チィッ!」

反動で手に返ってきた痛みに耐え、硬い腕に舌打ちしたソーマ。

それでも、再び男神に向かって飛び上がり、神機を大きく振りかぶるソーマに、シックザールは失望の視線を向ける。

『この程度か、ソーマ!!』

男神は握った拳を構え、ソーマの攻撃を向かえ打つ。

しかし…。


ズバッ!!


『ぐうっ!?』

シックザールがソーマに気を取られている隙を突いて、スミカが男神を背後から斬りつけた。

(女神は何をやっている!?)

アルダノーヴァの男神は、エネルギーを女神に供給し、また、盾となって女神を守るためにある。そして女神もまた、その男神の死角を守るように造られている。

それにも関わらず、背後からの攻撃を受けたことに苛立ったシックザールは女神を見る。

すると女神はアリサ、コウタ、サクヤの三人に一度に攻撃され、身動きが出来ずにいた。

『愚か者どもめ…!!』

斬りかかったスミカとソーマの上を飛び越えて、シックザールは女神へと向かう。

そのまま女神に寄り添った男神は、両腕を広げて女神と共に高く昇っていく。

『見よ!!圧倒的な力を!!』

女神が頭の上にある天使の輪のような物を掲げ、その中心が輝き出した。

その瞬間、エイジスは強烈な光に包まれた。

「う…!」

「ぉおぉおぉおぉ…!」

「な、何…!?」

「う、うう…!」

「ぐ…クソ…!」

五人が反応を見せると、それぞれの身体がふらつき始めた。

今、スミカたちの眼から見える世界は、上下に不規則に激しく揺れていたのだ。

エイジス自体が揺れているわけではないが、どうやらこの光には、人間の平衡感覚を狂わせる力があるようだ。

常人の力を遥かに超えたゴッドイーターですら立つだけでも精一杯だった。

そんな彼らに休む暇も与えず、男神が両腕を振りかざすと床から光の柱が次々と立ち上がる。

「くっ!」

自分の足元が輝き出し、アリサは必死になってその場から飛びのいた。

光はアリサのブーツの先を掠めるだけで済んだが、あと一歩遅れていたら危なかった。

「ぐああああぁぁぁぁ!!」

「!!」

アリサは突如聞こえた叫び声に振り向く。


誰かがやられた…誰…いや…私はこの声を知っている。

そんな思考をしたアリサは、宙を舞う一人の人間の姿を捉えた。

「コウタ!!」


ドシャッ!


垂直に打ち上げられたコウタはそのまま直下し、華奢な身体を床に打ち付けた。

「ぐ…うう…!」

激しい光が収まり、感覚が元に戻るとスミカたちはコウタに駆け寄る。

「コウタ君!!」

スミカがコウタに手を伸ばしたが、それはシックザールに制止された。

「!」

コウタの喉元に鋭く伸ばした女神の手を当て、スミカの前に立ち塞がったシックザールは静かに口を開く。

『また、私の前から命が消えていく…』

男神から彼の声が聞こえてくる。女神と違って人間の顔がない男神は表情が読めない。語るシックザールの真意も分からないまま話は続く。

『計画の成就のために、私は多くの人間を犠牲にした………その中には、アーク計画に参加する資格を持った優秀な人間も数多くいた…』

一歩でも動けばコウタは殺される。膠着状態のまま、ただシックザールの言葉がエイジスに静かに響く。

『藤木コウタくん…家族を守るために尽力してくれた君は、箱舟に乗るべき人間だと私は思っている…』

男神はコウタの方へ身体を向けて、シックザールの声を放つ。

『アリサ・イリーニチナ・アミエーラくん…君も、計画の妨害を企てたリンドウくんを始末するのに非常に役立ってくれた…アーク計画は、君無しでは語れないだろう…箱舟のチケットを放棄してしまうとは、本当に残念だ』

シックザールの言葉に激昂するアリサだが、コウタの命のために…それを身のうちに留める。

『橘サクヤくん…君が仕留めてくれた、ディアウス・ピターのコアは、ノヴァの成長に大きく役立ったよ…君もまた、次世代へと歩みを進めるべき人間なのだが…やはり、リンドウくんの跡を追うのか…愚かな選択をしたものだ』

怒りの感情を顔にあらわにするサクヤから視線を外して、シックザールが次に目をやったのは…。

『ソーマ…私は「息子だから」などという理由で、お前に特別枠を与えたわけではない…』

そう言ったシックザールは、シオを一瞥する。

『お前があのアラガミをしっかり繋ぎ止めておいてくれたことで、計画は成功した…その見返りとして用意した席を、お前は棒に振るというのか?』

シックザールの問い掛けに激昂したソーマが怒鳴り散らす。

「ふざけるな!!元から俺にはそんなもん必要ねえ!!」
『…お前はアラガミのいない世界で生きたいとは思わないのか?』
「俺をアラガミにしたのはてめえだ!!」



…てめえにアラガミにされた俺が、てめえが創ったアラガミのいない世界で生きるだと…?

俺が求めていたのはそんな世界(もの)なんかじゃねえ…!

今なら認めてやる………俺が本当に求めていたのは………!!



フン、と鼻を鳴らし、シックザールはスミカに向き直る。

『君までも、「カルネアデスの板」を手放すというのかね?』
「ええ、そうです」

意に介する風もなく、スミカは即座に答えた。

『アーク計画がなくとも、君たちは多くの命の犠牲があった上で、この世界に成り立っている…志半ばに倒れたものたちや、自ら命を差し出したものたちの分まで、生きようとは思わないのか?』
「支部長、あなたは間違っている」

シックザールの言葉をそのまま繋ぐようにしてスミカが口を開いた。

「確かに私たちは、たくさんの人達の命のおかげで今生きています…でも、彼らの命は、この星を守るために捧げられた!アーク計画は、「人類という種を残す」という点では決して間違ってるとは言えない…。さっきも言いましたが彼らが命を差し出してまで守ろうとしたこの星を捨てて、自分だけのうのうと生きるなんてできない!」

スミカは剣の切っ先をシックザールへと向ける。

「私たちは!犠牲になった人達の分まで、最後まで『この世界』で生きていきます!!」

まるで誓いを立てるようなスミカの言葉に、シックザールは笑みを含んだ溜め息をつく。

『フ…君はつくづく、「彼女」に似ているな…』
「?…何の話です?」

シックザールの言葉の意味が分からずスミカが怪訝な顔で尋ねた。

『メイヤ・ブランメル』
「!!」

スミカの目は見開かれ、アリサ、サクヤ、ソーマは「何の話だ?」といった視線を彼に向ける。

『忘れるはずもないだろう…彼女は君の命の恩人だ…私としても、リンドウくんと同様…失うには実に惜しい人材だと思っていた』

シックザールを見つめるスミカの表情を、そこから滲み出る彼の感情をアリサはなんとか理解しようとした。

しかし、スミカをじっと見つめて出した結論は『分からない』だった。

「・・・まさかと思いますが」

ようやく紡いだスミカの言葉は、空間を伝ってシックザールに届く。

『ああ…彼女を殺したのも、私だ。アーク計画に感づかれてしまってね…まあ、彼女が消えた代わりに今度はリンドウくんが計画を捜査していたみたいだが…』

神機の柄をギリギリと音を立てそうなほど強く握りしめるスミカを見て、シックザールは更に、混乱を招く発言をする。

『私が殺したいほど憎いか?スミカ=グレンくん…いや…「紅崎スミカ」くん…』
「えっ?」
「何…?」

サクヤとソーマが声を漏らす。



少しの沈黙がエイジスに訪れるが、すぐにそれは破られた。

「…驚きましたね…その名前を知っている人はもう誰も生きていないと思っていたんですが…」

スミカの言葉に、今度はアリサたちが驚愕した。

『メイヤくんから直接、話を聞かせてもらったよ…彼女は「まるで妹ができたようで嬉しい」と言うほど、君のことを愛していた…戦場でたった一人生き残った君を引き取ったメイヤくんは、その深い慈愛の心で君との間に強い絆を作り上げた…実に美しいと思ったよ…』

シックザールの声が芝居めいた口調でエイジス中に流れていく。

『だが、私の計画が大輪の花を咲かせるためには、どうしても余計な蕾は摘み取っておかなければならなかったのだ…』

メイヤという人物がどんな人なのかは分からない…だが、この男がスミカの大切な人まで奪い取ったことは分かった…。

そう思った瞬間、アリサはシックザールに対してさらなる怒りを燃やすが、対照的に落ち着いた口調のスミカにその炎を消火されることになった。

「憎くないわけではないですよ?ただ、どれだけ怒りに身を任せて暴れようが、メイヤが帰ってくるわけじゃない…それに私はあくまで『スミカ=グレン』…『紅崎スミカ』じゃない」

以前、雪が降り積もる寺院でスミカに言われたことを思い出すアリサ。

(憎しみを込めた剣は、自分も他人も傷つける…)

自分に言い聞かせると、アリサは頭を左右に振って迷いを払う。

(たとえこの人が『紅崎スミカ』だったとしても、スミカさんであることに変わりはない!)

サクヤもソーマも、アリサと同じようなことを考えて頭を切り替えていた。

スミカは剣をシックザールに向けたまま話し続ける。

「あなたがメイヤ殺害の犯人なら、なおさらアーク計画は止めないといけませんね…それがメイヤの意思であり、私の意思です。だから…もう何を言っても無駄ですよ、支部長」

スミカの体が変化する。

スミカの体から赤い刺青らしきものが浮き出てきて、全身が真っ白に染まり、目が獣のような金色となっていた。

それだけではない。両腕から二本ずつスミカよりも大きい腕が出現し、十個の顔がある首輪を身につけていた。

「あなたのそのくだらないものを私が破壊してあげます」

スミカが姿を変えたこの姿は、アラガミ変化完全型。

「あのストーカーによって力を得た破壊神・カーリーの力・見せてあげる!」
『くっ、図に乗るな!』

シックザールはスミカに攻撃するが、スミカはたやすく受け止め、

「吹っ飛べ!!」
『ぐわあああああああああ!!』

日本の巨大な手がシックザールをぶん殴る。
壁に激突したシックザールはふらつく。

『くっ!………っ!?』

シックザールは迎え撃とうとしたが、体が動かないことに驚愕する。

自分の身体を見ると、腕や脚が金の糸のようなものに縛られていた。

再び顔を上げると、その者は凄い勢いで近づいてくる。

『な…に…っ!?』

これで終わりにしてあげる。

「紅蓮流、奥義!」

ザンッ!

スミカはアルダノーヴァを切った。

きったはずだが何も起こらない。

『はったりのつもりか!』
「いえ、あなたの終わりよ」

スミカは神機を振り、

「明鏡止水・・・絶!」

ズザザザザザザザザザザザザザザザザザン!!!!!!!

『グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

何万という斬撃がシックザールを切り刻んだ。

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