GOD EATER ~RED・GODDESS~ (真王)
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シオの服の材料探し
無事シオを研究室に連れ戻すことに成功したスミカたちは、シオに着せる服について話し合っていた。
「それにしても、シオは一体どんな服ならちゃんと着てくれるんだろうね…」
サカキの言葉に考え込む第一部隊。
「……………わかった!」
真っ先に沈黙を破ったのはスミカだった。
「わかったって…何がわかったんだ?」
コウタがスミカに聞き返す。
「考えてもみて…普通の人間の服はちくちくして嫌がるのに、フェンリルの旗は平気で着てるんだよ?」
その言葉に、更に疑問の表情を浮かべるコウタ、アリサ、サクヤ、ソーマ。
サカキはスミカの言わんとすることがわかったようだ。
「フェンリルの旗は全て、アラガミの素材からできているんだ。言い方は悪いけど、世界にその力を誇示するためにね。つまり、シオの服を全てアラガミの素材で構成すれば、彼女は嫌がらずに服を着てくれる…と、いうことなんだね?スミカくん」
「ええ、まあ」
サカキの言葉にスミカが頷く。
「そっか!それなら確かに着てくれそうだな!」
「ええ!じゃあ早速、素材を集めましょう!」
コウタとアリサも納得したようだ。サクヤも「なるほど…」とサカキの言葉を理解した。
「博士、どの素材が要りますか?」
スミカがサカキに尋ねると、少し考えてサカキが口を開く。
「そうだねぇ…どうせなら徹底して作り込もう!肌触りを良くするために、ヴァジュラの毛…服にしなやかさを加えるためにコンゴウの尻尾…ああ、そうだ!防御力も備えよう!クアドリガの装甲も頼む。あとはサリエルの羽くらいかな…おっと、そうだ!硬い素材に通す針がいるな…ボルグ・カムランの針も頼むよ!」
「わかりました!…ところで、誰が作るんですか?」
スミカが一番肝心なことを聞いた。かなり重要なその言葉に全員固まる………が、ここで少し考えたサカキが口を開く。
「…リッカくんに頼もう」
「でも、博士…なんて言って説明するんですか?」
そう、それも外せない重大事項なのだ。
ゴッドイーターが着る服には偏食因子が使われているが、アラガミの素材をまるまる使われたことなど一度もない。
それにリッカにお願いするにしても、「ちょっとアラガミ素材で服を作ってくれ」などと頼むだけでかなり怪しい。
人工の素材で作られた服を着るスミカたちがお願いするのは不可解なことこの上ない。
サカキから頼むにしても、普段はもっと高度なオラクル細胞の研究をしている彼が、いきなりリッカのところへ来て「アラガミ素材で服を………」などと言うのは違和感がある。
そもそもそんな服「誰が」着るのか…その説明も困難を極めた。
「・・・私が試しに着てみたい、で済ませてみたら?」
「わかった…とにかく君たちは素材を頼む」
サカキの言葉に全員頷き、研究室を後にした。
「アラガミの素材で…服を…?でも…一体何のために?」
休憩していたらいきなりサカキに呼び出され、呼ばれるまま研究室へ行ったら訳のわからない依頼を受けたリッカ。
「まあ、無理なら別にいいんだが…」
「いえ…不可能ではないと思います!それに、肌に密着させるためにオラクル細胞を改良するという作業は、新しい技術開発に役立つと思います!」
「おお!じゃあ引き受けてくれるのかい?」
サカキの言葉にリッカは頷く。が…。
「ところで、誰が着るんですか?」
リッカの疑問にサカキがびきっ!と固まる。
「い、いやぁ〜…ははは…まいったな…」
頭を掻いて困った表情でどもるサカキ。
が、スミカに言われたことを思い出し、それをいおうとすると
「ハカセー!」
その時突然、奥の部屋から無邪気そうな女の子の声が研究室中に響いた。
「?…奥に誰かいるんですか?」
リッカが奥の扉を覗くように首を傾げる。
「いや!今のは…め、目覚まし時計さ!」
「ハカセー!だれかそこにいるのー?」
「……………目覚まし………ですか………?」
リッカのジト目に睨まれ、サカキは脂汗を浮かべる。
「……………っ!」
リッカは突然、奥の扉に向かって走り出した。
しかしサカキも予想していたらしく、とても着物を着ているとは思えないスピードで立ち上がり、左手を伸ばしてリッカを阻止にかかる。
リッカは構わずサカキの左手が伸びた方へ突っ込む。
(なんだとっ!?)
リッカの行動に驚くが、サカキはそのまま手を伸ばしリッカを掴もうとした。
と、ここでリッカは右回りに急旋回する。
そしてサカキの右側を通り抜けようとしたとき…。
(くっ…こんなこともあろうと…!)
サカキは右手をリッカに伸ばすと、袖の中からマジックハンドが飛び出した。
ものすごい勢いで伸びていき、リッカの右手を掴む。
「!」
「ふっふ…私を甘く見ていたようだねリッカくん」
ニヤリと不敵に笑うサカキ。しかしその笑みはすぐに驚愕の表情に彩られる。
バン!
「なっ…!」
リッカの手袋が突然破裂したのだ。その光景にサカキはハッとする。
(そうか!整備士が着けているあの作業手袋は、万が一オラクル細胞の捕喰を受けた時のために破裂するようにできていたんだ!)
リッカは文字通り、マジックハンドの魔の手から逃れると、扉に手をかけて勢いよく開いた。
「んー?…だれだー?」
「……………」
「……………」
「いや〜!今日も疲れたね〜」
疲れを感じさせない声でそう言ったのはコウタだ。
「うん、早くさっぱりしたいよ」
顔についた汚れを擦りながらスミカも頷く。
「………そういえば、博士はリッカさんにちゃんとお願いできたんでしょうか?」
ふとアリサはシオの服のことを思い出して呟く。
「大丈夫よ、きっと!アリサちゃん、シャワー浴びてゴハンにしましょ!」
前向きに考えるサクヤは、笑顔でアリサを誘う。
「じゃあ皆、一通り落ち着いたら、またサカキ博士のところに行こう」
スミカの言葉に頷いて第一部隊は一旦別れた。
それからシャワーや昼食を終えた第一部隊の五人は、サカキの研究室で目を点にして固まっていた。
床にはシオが座り込み…その後ろには腕を組んでニヤニヤしながら仁王立ちしているリッカ…。
その隣でサカキが、少々困ったような顔で立っていた。
「おつかれさま〜!今日の任務はどうだった〜?」
非常に明るい、楽しそうな声で沈黙を破ったのはリッカ。
「いや…任務は滞りなかったけど…それより、なんでリッカがここに…?」
スミカの疑問の声にサカキが一歩前に進み出た。
「いや〜ゴメン、ゴメン!結局、リッカくんにも共犯者になってもらうことになっちゃったんだ」
サカキの言葉に脱力する第一部隊。
「安心して!ちゃんと秘密にしとくよ!これでも口は固い方だからさ…それで、肝心の服のことだけど、ついさっき完成したよ!」
「マジで!?」
コウタの驚きの声にリッカは頷く。
「ホラ!この中に入ってるよ!」
そう言ってリッカはシオの服が入っているという箱を取り出した。
「あ、私にやらせてリッカちゃん!」
「はいは〜い」
名乗り出たサクヤがリッカから箱を受け取ると、シオを連れて奥の部屋へ入っていった。
「それにしても…私に隠れて随分と楽しいことしてたみたいだね?スミカ?」
ニヤニヤした笑みを再び浮かべ、スミカを横目で見るリッカ。
「…」
スミカはあちゃ~…と視線をそらす。
「リッカさん…これには事情が…」
「い〜よっ!『アラガミを連れ込んだ』…なんて誰にも言えないもんね」
アリサのよく使われる言い訳を聞く前にリッカが制止した。
「だいたいの事情はサカキ博士から聞いたよ…シオちゃんだっけ?私もビックリした…アラガミが人間にまでなれるなんて…」
奥の部屋を見てリッカはため息をついた。
すると、まだ不安なような、申し訳ないような、いろんな感情が混ぜ合わさったスミカの表情に気づき、クスと笑う。
「だ〜いじょうぶだってば!そんな心配そうな顔しないでよ。ただ…」
「?」
「仕方ない理由があったにせよ、私に二度までもお楽しみイベントがあったことを隠していたのは、ちょっと許せないなぁ〜?」
「…」
リッカのジト目に苦笑いのスミカ。
「黙ってた罰として、スミカには後で『冷やしカレードリンク』でも奢ってもらおうかな?」
リッカはニヤリと笑いながらスミカを見た。
自分にのみ罰を与えられたことに疑問を感じながらも、今回の件や就任祝いのことを黙っていたのを、冷やしカレードリンク一本で済ませられるなら幸いだと、スミカはその条件を承諾した。
「あ、箱買いでお願いね?」
「・・・」
リッカから無情なる御達示を受けたその時、奥の部屋の扉がシュっと開いた。
「おまたせ!」
サクヤがシオを連れて部屋から出てきた。
シオの姿を見たサクヤ以外の第一部隊の人間は、ポカンとした表情で彼女を見つめていた。
純白を基調としたドレスを着たシオは、例えるならユリの花、あるいは天使。
胸元には白いバラがあしらわれ、背中にはブーケを思わせるフリルの翼。どちらも緑色のリボンで可愛くデコレーションされている。
足は素足のままだが左側の足首に緑色のリボンが結ばれていた。
また、服装に影響されたのか髪に似せて変えていた肉体も形が変わり、綺麗に整えられている。
「きゃあ〜〜!!可愛いじゃないですか〜〜!!」
アリサが一気にハイテンションになり、リッカは両手を腰に当て胸を張った。
「本当に普通の女の子みたいよね〜」
サクヤもシオの様子にニッコリとしている。
「おっ?おっ?えへへへ…」
可愛いと言われたシオはニヤつきながら照れ笑いした。
「おおっ!可愛いじゃん!ねえ、ソーマ!?」
コウタがソーマに話を振るが、その時コウタは「失敗したかな」とすぐに思い直す。
あのソーマのことだ、またいつものように流される…と思っていたが、結果は違うものになった。
「…まあ…そうだな」
「おお…予想外のリアクション…」
意外にもちゃんとした返事が返ってきたことに驚くコウタ。
「どうスミカ?私の作った服の出来は?」
「リッカってやっぱり手先器用なんだね…」
「えへへ〜そうかな〜?」
大評判になった自信作の服に満面の笑みを浮かべるリッカ。
「うん、すごく似合ってて可愛いよシオ!」
「いやあ、私も驚いた!実に素晴らしい」
スミカとサカキにも褒められ、この部屋にいる人間全員に可愛いと言われたシオは、うれしくて仕方なかった。
「なんか…きぶんいい…」
そう言うとシオは突然胸の前で両手を組み、目を閉じて歌い始めた。
歌詞をなぞっているのではなく、鼻歌のような歌い方だったが、彼女の澄んだ歌声はすんなりと耳に届く。
シオが歌いだした時、ソーマはすぐにハッとした。
(この歌は…)
ソーマも含め、第一部隊、リッカ、サカキはみな口が半開きになってシオの歌を聞いていた。
やがてシオが歌い終わると、組んでいた手を解き目を開いた。
「これ、しってるか!?『うた』っていうんだよ!」
「………ほう」
「すごい…」
「すごいじゃないシオ!」
シオの言葉にソーマ、アリサ、サクヤが次々と口を開く。
「なんだ?これ…えらいか?」
シオがスミカを見て尋ねたので、スミカも「うん!えらいよシオ!」と頷く。
「えへへへ…そっか!えらかったか!なんか、きぶんいいな!」
「それにしても…歌なんてどこで覚えたの?」
「んー?そーまといっしょにきいたんだよ!」
サクヤの質問にシオが答え、それを聞いたコウタが驚いた。
「ナヌっ!?」
「あら〜〜〜!あらあらあら?」
「へぇ〜…そうだったんですか〜…」
サクヤとアリサがニヤついてソーマの方を見た。
「し、知らん………」
たまらずソーマは赤くした顔を背ける。
「え〜?…でもシオちゃんは『ソーマと一緒に聴いた』って言ってるよ〜?」
「うむ、実に興味深い…」
「なんだよ〜…いつの間に仲良くなっちゃってんの?」
今度はリッカとサカキ、それにコウタがソーマに追い打ちをかけるように言った。
「チッ…やっぱり一人が一番だぜ…」
ソーマがそう呟いたのを見たスミカは静かに思った。
(なんか照れてる表情が新鮮でかわいい…いい兆候ね)
スミカはソーマを見てニヤニヤするのだった。