GOD EATER ~RED・GODDESS~ (真王)
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ソーマとシオ

スミカとアリサ、そしてコウタは、今日もサカキの研究室を訪れていた。

その理由はやはり、シオの成長具合が気になる…といったところだ。

部屋に入ると、床にお尻からぺたっと座っているシオが挨拶した。

「おっす!」
「オッス!」

シオとコウタの二人は手を挙げて挨拶するが、アリサが早速コウタにツッコむ。

「何その下品な挨拶…そんなの覚えさせないで下さい」

ピシャリと言われたコウタは文句をたれる。

「えー、いいじゃんよー」
「じゃんよー」

シオもコウタに続くからアリサが優しく冷たさを孕んだ言葉で言い聞かせる。

「シオちゃん、駄目だよ?バカがうつっちゃうよ?」
「ひでぇ…」

コウタがうなだれるのを無視して、アリサはシオの側に屈んで正しい挨拶を教える。

「シオちゃん、『こんにちは』!」
「んー?…こんにちはっ!」
「うん!えらいえらい!」

正しい挨拶が言えたことにアリサが気を良くし、シオの頭を撫でて褒めた。

シオはえへへ、と嬉しそうに顔を綻ばせ、四つん這いでぺたぺたとスミカの足元に来た。そして座りなおし、スミカを見上げる。

「ありさ、えらいってー!えらいの、いいことだな?どうだろな?」
「うん、いいことだよー」

スミカも笑顔でシオの頭を撫でる。…少々変わった感触だった。

シオは楽しそうに笑いながら床をころりころりと回っていた。

「大分いろんな言葉、覚えてきましたね〜」

コウタがサカキの方を向いて話す。

「そうだね。君たちがこうやって、相手をしてくれているのもあるけど…それにしても、中々に飲み込みが早いねこの子は…。知性を持ちながら、喰うか喰われるかの世界を生き抜いてきたんだ…飢えているんだと思うよ?コミュニケーションというやつにね…」









「はあ〜…シオちゃんって本当に可愛いですよね〜!『妹』ってあんな感じなんでしょうか〜?」

廊下を歩きながらアリサはうっとりとした表情で話す。

「アリサ、顔緩みっぱなしだったよね」

スミカの言う通り、アリサは研究室にいる間は始終楽しんでいた。

シオの天真爛漫な言動に癒されて、ここ最近のアリサの肌はツヤが出ている。

「え?そう見えましたか〜?」

…まだ少し、あの空間で味わった空気が抜けていないようだ。

スミカとコウタはやれやれと溜め息をついて、アリサを引っ張っていった。








そして、シオがアナグラにやって来てから五日が経過した。

スミカは毎日研究室に顔を出していたが、この日改めてサカキに呼び出された。

なんだろう?と研究室に行くと、ソーマも来ていた。

(アリサとコウタとサクヤさんは…どうやら呼ばれていないみたいだな…)

スミカがソファーに座っているサカキの方まで行くと、サカキが口を開いた。

「やあ!頑張っているようだね〜!君のお陰で、シオの知識知能は…ほぼ成人のそれと言って良いほどに成長したよ」

サカキは横に立っているシオを見ながら話す。

「したよ〜!ありがとね、ありがとー!」

と、ソーマとスミカにそれぞれぺこり、ぺこりと頭を下げる。

「口調は相変わらずだけどね…さて、今日呼んだのは、別に君を驚かせるためではないんだ…」
(いつも驚かせるために呼んでいたの…?)

そうだとしたらかなり精神的にくるなと思いつつ、サカキの話に耳を傾ける。

「実に切実な問題…シオの食糧確保だ。今まで君に依頼して集めていたコアを貯蔵しておいたんだけど…つい、先日それも尽きてしまってね」
(あれだけ集めたコアが!?…まあアラガミだし…仕方がないか)

心の中で落胆するが表情には出さず、用件を聞くスミカ。…つくづく切ない。

「君たちには、シオをデートに連れていってほしい…ってことなんだ。フルコースのディナーをよろしく頼むよ!」
「たのむよー」

サカキとシオのお願いにソーマがめんどくさそうに口を開く。

「ふざけるな…なんで俺まで…」
「わかりました!任せて下さい」

そんなことをしなきゃならねえんだ、と言おうとする前にスミカが了承してしまった。

「おい!…勝手に受けるな」
「おおっ!『リーダー権限』ってやつだね!これは逆らえないな?ソーマ?」
「バカ野郎が…安請け合いしやがって…」
「何かいった?」
「チっ…」

ソーマが断る前に素早く了解してよかったと、ホッとするスミカ。

「では改めて…よろしく頼んだよ、二人とも」

サカキがそう言うと、シオがお礼を言った。

「ありがとー!…ねえ、はかせ、でーとってなにー?」
「楽しいことだよー」
「たのしいこと…イタダキマスだな!?」
(意味が違うよシオちゃん)

二人の会話はなんだかほのぼのしていて、これからしんどい思いをするスミカとソーマの肩にのしかかった。









「とりゃあー!!」
「うおっ!!シオすげえ!!」

その後コウタを連れて、スミカとソーマ、シオたちは愚者の空母に来ていた。

今戦っているのはコンゴウ堕天種二体だが、そのうち一体はシオ一人で圧倒しており、それにコウタが驚きの声を上げた。

シオは「それ、おもしろそうだなー」と、スミカの神機を真似て手の形を変化させた『神機らしきもの』を武器に、コンゴウを翻弄している。

ちなみに、スミカが戦闘中に神機を変型させるのを見て、最初は剣だけ真似ていたのが銃と変型動作まで再現してしまった。

やがて、加減を知らない子供が扱った玩具のようにコンゴウはボロボロになり、力尽きた。

「つ、強い…」

シオはただ単に強いから生き残ったんじゃないか?と苦笑いしながら思うスミカだった。









「それじゃあ…イタダキマス!!」

倒れた二体のコンゴウが並び、シオが早速食べようとした。

「あ…そーだ!そーま!すみか!いっしょにたべよー!」

ソーマの方を向いて食事に誘う。それにコウタが困ったような口調で答える。

「…おいおいシオ。俺達人間はアラガミを食ったりしないんだよー?・・・スミカはノーコメント」
「コウタ君?」
「えー?…でも、そーまのあらがみは『たべたい』っていってるよ?」
「え?」

シオのその言葉に、ソーマの胸の内で、激しい何かが弾けた。

「ふざけるな!!テメェみたいな…バケモノと一緒にするんじゃねえ!!」
「お、おい…」

ソーマの激しい怒りや深い悲しみが混ざったような動揺にコウタが驚く。

「…いいからもう、俺に…関わるな…」

ソーマは突き放すように言うと、神機を担いで一人で歩いていき、その跡を追うように歩くシオが話しかけた。

「シオ…ずっとひとりだったよ…?」

シオの言葉にソーマの足が止まった。それに合わせてシオも止まる。

「だれもいなかった…だから…うーんと、だから…だから…そーまをみつけて、うれしかった…みんなをみつけて…うれしかった!」

一生懸命言葉を探してソーマに語りかけるシオ。

「うーんと、だから、だから、えーと…」

しかし、彼女の伝えたい言葉を構成するには、彼女自身がまだ幼な過ぎた。

「おい!待てよソーマ!」

再び歩き出したソーマにコウタが声を張り上げるが、無視されてしまった。

「なんなんだよアイツ!」

コウタがじだんだを踏むとスミカが側に来た。

「コウタ君、そっとしておこう……」
「スミカ…なんか知ってんの?」
「うん、ソーマはね…」









それからスミカは、サカキが落としたディスクを拾い、その中に収められていた過去について話した。

シオは甲板の縁に座って海を眺めている。

「そっか…よくわかんないけど、要するにアイツがゴッドイーターや神機の技術のオリジナル…ってことだよね…そんで、自分が生まれたことで母親まで殺しちまったって思ってんのか…」

大まかに理解したコウタはソーマが行ってしまった方を見て呟く。

「そんなもん、ずっと一人で背負って…カッコつけてんじゃねえよ…」

夕日を見つめて話すスミカはどこか心配そうな表情だった。

「ソーマが心を開いてくれない限りは、ね…シオ!そろそろ帰るよ〜!」

スミカがシオを呼ぶと、シオはすぐに立ち上がってこちらにやって来たが、なんだか淋しそうだった。

(あ〜あ…これからなんて声かけりゃいいんだよ…)

はあ、と溜め息をついたコウタは、自分のことを話してくれないソーマを軽く恨んだ。