GOD EATER ~RED・GODDESS~ (真王)
<< 前の話 次の話 >> しおりを挟む/しおりを解除
サカキの依頼

「いや〜ゴメンゴメン。君が拾ってくれたのか、助かったよ」

サカキはすまなそにしてスミカに言った。

スミカは例のディスクをサカキの元へ届けに来ていたのだ。

「もちろん中身は見ないでおいてくれたよね?…何の事は無い、若き日の思い出さ」

苦笑いを浮かべるスミカなど気にもとめずに話し続けるサカキ。

「そうだ、ちょうどいい!実は…君にお願いがあってね」

ディスクを机にしまったサカキはスミカに向き直る。

「とあるアラガミのコアを入手してきて欲しい。出張中の支部長に頼まれてる仕事なんだ」
「はあ…」

サカキから直接任務を依頼されるなんて珍しいなと考えにふけるスミカ。

「支部長や教官にはもちろん、他の皆にも口外無用だよ?」

サカキはいつの間にかスミカの目の前に来ていて、ズイっと顔を近づける。

「は、はぁ…」

顔をひくつかせながらスミカは答えた。

「実はソーマにだけは以前から同じようなお願いをしてるんだ。彼と二人で何とかしてほしい」
「わ、わかりました」

スミカの返事を聞いたサカキは姿勢を直す。

「…そういえば、君はリーダーになったんだっけね?おめでとう」

一週間過ぎてんだけど…と心の中で呟くスミカ。

「君は、『マーナガルム計画』って、聞いたことあるかな?」
「名前程度は…」
「お世辞にもエレガントとは言い難い実験だった…。大切な友人たちも失っちゃったしね…」

サカキは当時を思い出しているのか、遠い目で話す。

「その負の遺産を、残されたソーマは一人で背負っているのかもしれないんだ…私自身も…彼からは恨まれても仕方のないことをしてきた一人さ…」

サカキはまたズイっと顔をスミカに近づける。

「よかったら、彼と仲良くしてやってくれ…頼むよ」

サカキの言葉にスミカが頷いた。








用事を済ませたスミカはエントランスに戻ると、ヒバリに呼ばれた。

「あ、スミカさん!サカキ博士が依頼されたミッションが届いていますよ?」
「うん、ソーマと二人で組んどいて」
「了解しました、ではお気をつけて!」

スミカはヒバリに軽く手を振ったあと、出撃ゲートへと歩いていった。









それから約40分後、スミカとソーマは贖罪の街にやってきた。

「…面倒な仕事引き受けやがって…」
「サカキ博士の依頼だからね…。仮にも上司だし」

この任務の討伐対象は、ボルグ・カムランとヴァジュラだ。この二体のコアを持ち帰るのがサカキからの依頼だ。

「私はボルグ・カムランを叩く、ソーマはヴァジュラを頼むわ」
「チっ…さっさと終わらせるぞ!」

ソーマは街に降り立つと、観察班からの報告でヴァジュラがいる西の側のエリアへ向かった。

スミカはそれと反対側…ボルグ・カムランがいるはずの東側のエリアへ向かった。

スミカはしばらく探索していると、不規則なようで規則的な足音が聞こえてきた。

(いた…)

ボルグ・カムランが廃墟の中へ侵入していくのを見たスミカは気づかれないようにそっと後を追った。

物陰に隠れて様子を窺うと、ボルグ・カムランは廃材を捕喰していた。

回り込んで近づき、神機を構え、尻尾の甲殻の間にねじ込むように突き出して捕喰した。

突然の攻撃に尻尾を振り回して、無理矢理距離を取ったボルグ・カムランは立ち上がり、スミカを捕捉する。

すると盾を合わせ、尻尾の針を突き出して突進してきた。

スミカはスライドしてそれをかわすと、一旦建物の外に出た。

ボルグ・カムランを外に誘導すると、神機を構えて向かって行く。

しかし、振り下ろされた神機は盾によりガードされ、尻尾を振りかぶる。

「やるねっ!」

繰り出された尻尾による回転攻撃をジャンプしてかわす。

スミカはスタングレネードを使った。そして、素早くボルグ・カムランの懐に飛び込み、再び捕喰した。バキバキという音をたて、甲殻を神機がむしり取る。

「いくよ!」

スミカは防御力の下がった脚に剣で猛攻撃をしかけた。

ひたすら同じ部位を斬られ続けたボルグ・カムランは体勢を崩して倒れ込む。

その後スミカは盾を集中的に攻撃する。弾かれてもやめずにひたすら痛め付けた結果、ついに盾を破壊する。

ボルグ・カムランが体勢を立て直すと、いい加減頭にきたのかオラクル細胞が活性化する。

(バーストの残り時間も少ない…決める!)

跳び上がって上から降ってくるボルグ・カムランをやり過ごしたスミカは、足に力を込めて一気に詰め寄る。

スミカは神機を振りかぶるが、ボルグ・カムランは破壊された盾を合わせてガードしようとする。

しかし…。

「紅蓮流、明鏡止水」

いつの間にかスミカがボルグ・カムランの真後ろにいた。
敵を見失ったボルグ・カムランはあたりを探して、真後ろにいたことに気付いて尻尾で攻撃しようとすると、

「…散」

ザンっ!!

ボルグ・カムランの全身から鮮血が吹き出ていく。
悲鳴を上げたボルグ・カムランは事ぎれた。

「………終わったか」

突然後ろから声がして、振り向くとソーマが神機を肩に担いでたっていた。

「そっちは?」

スミカがソーマに聞き返す。

「…とっくに片付いた…」
「そう」

スミカはボルグ・カムランを捕喰し終えると、携帯を取り出す。

「ミッション完了、帰投する!」









翌日、スミカはけたたましい音を鳴らす目覚まし時計に叩き起こされた。

(目覚ましなんてあった?この部屋…?)

眼を擦りながら、スミカはムクっと起き上がる。

『7時だよ!ラボに集合!!』

どう聞いてもサカキのものとしか思えない声が部屋に響き、スミカは苦笑い。

「博士、面白ければ何でもいいんだね」

スミカは仕方なくベッドから降りると、すぐさま着替えてラボラトリ区画へ向かう。









「やあ、毎度毎度呼び出してすまない」

変な目覚ましに起こされた後、サカキは部屋にやって来たスミカを迎え入れた。

「今日はちょっと、特別なお願いがあってね…」
「また…ですか…?」
「まあ、内容はいつも通り、アラガミの討伐なんだけど…この任務にはサクヤくん、アリサくん…それに、コウタくんを連れていってもらう」

その言葉にスミカは怪訝な顔をする。

「みんなを?」
「ああ、他のメンバーを駆り出すことについては心配いらないよ。ちょっぴり細工して、通常任務に偽装してあるんだ。用件は以上、結果を楽しみにしてるよ」
「・・・了解しました」
(『偽装』って…なにするきなんだろう…?)

不信に思いつつスミカは部屋を出た。

扉が閉まると同時に、サカキは小さな笑みを零す。

「さてと、こちらもお出迎えの準備をしておかなくちゃね…」