GOD EATER ~RED・GODDESS~ (真王)
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スミカの秘密その一
お酒は二十歳になってから
「……非番、ね……」
誰に言うまでもなく、自室で1人呟きを漏らすスミカ。
先程、リンドウから今日は非番だからゆっくりしてろ、と言われてしまったのだが……。
「……何しようかな」
任務を行う事しか考えてなかったので、こうして暇になると何をしていいのかわからない。
コウタが薦めているバガラリーでも見ようか、そう思ったがあいにく彼は任務でいない。
さて困った、何をしようかと頭を抱えていると、部屋の隅にあるダンボール箱に目がいった。
「あっ……」
そういえば、この間使った配給チケットで貰った配給品の中身を見ていなかったなと思い出し、スミカはダンボール箱を開ける。
すると、中に入っていたのは……。
「…………ビール?」
そう、アルコールであるビールだった。
……無論、スミカはまだ17歳で未成年だ。ビールを頼むわけがない。
ということは――配給の方で何か手違いがあったようだ。
「はぁ……」
ため息が出た、もう少ししっかりしてもらいたいものである。
とはいえ、今更言っても仕方のない事であり、また今はこの配給ビールをどうするかを考えなくてはならない。
とはいえ先程も説明したがスミカは19歳、未成年がビールを飲むわけにはいかないわけで。
箱一杯に詰まったビールを眺めつつ、どうしようと考えること暫し。
「…………そうだ」
そういえば、知り合いで酒が好きな人が居たなと思い出し、スミカは箱を持って部屋を出る。
――向かうは、熟練した神機使いの部屋があるベテラン区画
ある一室の前に立ち、左手で箱を持ち直しつつ扉をノックした。
「リンドウさん。スミカです」
扉越しにそう言うと、中から「おぅ、開いてるから入ってもいいぞー」というやや間延びした声が聞こえてきた。
許可を貰ったので、失礼しますと一言口にしてから、スミカは部屋に入り……顔をしかめた。
「………リンドウさん、飲んでますね?」
入った瞬間に、アルコールの匂いがスミカの鼻孔を刺激し、おもわず棘のある言い方をしてしまった。
しかしリンドウは気にした様子もなく、「飲んでるぜー」と答えつつ、右手に持つ配給ビールを口に含む。
「んっ? おい新入り、そりゃなんだ?」
「実は配給の方で手違いがありまして……リンドウさん、貰ってくれませんか?」
そう言って、スミカは中身の配給ビールをリンドウに見せる。
瞬間、彼の表情があからさまに嬉しそうなものに変わった。
「……俺はいい部下を持ったもんだな、隊長冥利に尽きるぜ」
「………よかったですね」
あまりにも現金すぎる発言に、さすがのスミカも顔を引きつらせ、箱を冷蔵庫の傍に降ろす。
まあ何はともあれ無事にビールを消費できるから気にしないでおこう、そう思いながらスミカは部屋を出ようとして。
「ちょっと待て新入り、せっかくだからちょっと飲もうや」
まだ開けてないビールを持ちながら、リンドウがそう言ってきた。
「……リンドウさん、私酒飲める年だと思います?」
「こまけえ事は気にすんなって、それにお前17だろ? ならもう成人みたいなもんだ」
「そういう問題じゃありませんよ、それにいつ緊急のミッションが入るかわからないのに……」
「大丈夫大丈夫、何とかなるって」
「…………」
どうやら酔っ払っているようだ、今日はなんだか態度がしつこい。
このまま帰ってもいいのだが……上官相手にそんな態度をとるわけにはいかない。
「……ちょっとだけですからね?」
結局、スミカの方から折れソファーに座り込んだ。
それを見て気を良くしたのか、いつもとは少し違う、子供っぽい無邪気な笑みを見せながらビールを手渡すリンドウ。
自分より9歳も年上の彼だが、なんだかこの笑顔を見ると自分より年下に見える。
そんな事を考えながら、スミカはビールの蓋を開け口に含み……
「……ヒック」
「ははっ、まあ初めて飲むんだから当たり前だよな。だけどその苦味が良くなってくるんだ」
「………」
「そういや、近々極東支部に新しい神機使いが来るぞ。しかもお前さんと同じ新型だしかも支部長がロシア支部から引き抜いたらしいんだよ……あんまり大きな声じゃ言えないんだが、ロシア支部は支部長によって掌握されてるんだとよ。それよか新入り、新しい新型は可愛い女の子らしいぜ?。歳は15、お前やコウタと結構お似合いだな・・・・・・っておい新入り。なんか返事してくれよ」
一方的にしゃべるリンドウは返事しないスミカを促す。
スミカは黙ってリンドウに手を差し伸べる。
「ん?何だその手?」
「・・・つげ」
「ん?」
スミカは近くの酒瓶を握って、
「酒が足りないって言ってるのよ!!さっさと注がんかいぼけぇ!!」
ガシャーン!!
「ウボッ!?」
リンドウの頭に殴った。
「イデデデ、し、新入り一体どうし・・・」
「あ”あ”ん?誰が新入りだぁ!?あたしのことは、スミカ様とお呼び!!」
「ええええ!?おまっ、こんな酒弱かったのか!?」
スミカの豹変っプリにリンドウは驚くばかり。
「リンドウ?あんた上官の癖に部下の扱い方がなってないんじゃないかしらぁ?最も、お酒で潜在能力を解放しちゃうあたしのような人にねぇ?・・・ヒック」
「え~?俺、なんかまずいことしちゃった?;」
「まずくないわぁ。ただあたしの心が最高にハイって感じなのぉ。だから・・・」
「ま、まてまてまて!話せばわk」
「だめな上官様をたっぷりしつけてあげるわぁ!!!」
―――数時間後
「……スミカ、いるかな?」
新人区画を歩く、タンクトップにもんぺを身につけた少女――楠リッカ。
頬をオイルで汚し、頭には遮光用と思われるゴーグルを付け、彼女はスミカの部屋へと向かっていた。
というのも、新しい刀身パーツを使用した感想が貰いたいからだ。
整備班である彼女にとって、神機にはいつでも最高の力を発揮してほしいと思っている。
故に、スミカのように様々な装備を使う者には、いつも以上に気を配らなければならないのだ。
……決して、リッカが彼女に会いたいからという理由ではない、おそらく。
「………スミカ?」
扉をノックし、返事を待つが……返ってこない。
部屋に居ないのか、そう思いつつ何気なく扉に触れたら……開いてしまった。
不用心だなぁと呟きながら、リッカが部屋に入ると……彼女はいなかった。
「どこにいるんだろう?」
そうあたりを探していると、
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「ひゃわっ!?な、なに!?」
下の階のベテラン区域から悲鳴が上がった。
今の声はこの極東支部のエース、リンドウの声だ。
「り、リンドウさんに何かあったんだ!」
リッカはエレベーターでリンドウの部屋に向かう。
ベテラン区域に着くと、オナジク悲鳴で駆けつけたゴッドイーターたちがいる。
「もしかして君たちも?」
「ああ、リンドウさんの声が聞こえたんだ」
「よ、よし、あけるぞ」
こうして見に来たゴッドイーター+αたちはパンドラの箱ならぬパンドラの扉を開けてしまった。
扉の先には、
「豚親父の癖して人間の言葉つかってんじゃないわよぉ!!あはははははははははは!!」
「ゴボボ!お、お願いだからやめろ・・・いや、やめてください!!」
「何か言ったかしらぁ?酒飲み隊長さぁぁぁん!!?」
馬乗り状態でリンドウに無理やり酒樽を飲ませるスミカ。
はっきりいってすごい・・・とてもシュールな光景だ。
「リンドウ!?あ、あなた何をしているの!!」
そこでサクヤが声を上げる。
「あらぁ?あたしはただこのお酒好きの豚にたっぷり死に切れないほどのお酒を飲ませてあげているけどぉ?」
「サ、サクヤ、ゴボッ!た、たすけてくれ!」
「ス、スミカ!?一体どうしたんだよ!?どうしちまったんだよ!」
「あらぁコウタ君?あたしはいたって正常よぉ?」
「正常にみねぇよ!!しかも私からあたしに代わってるし!!」
スミカの一人称は私であるが、今のスミカはあたしといっている。
「だからぁ、大丈夫よぉ。この隊長さんが勧めてくれたお酒を飲んで今気持ち方かぶっちゃってぇ・・・」
「つまりリンドウさんが原因かよ!!」
「す、すまん!こいつがこんなに酒に弱いこと知らなくて!」
原因はリンドウの酒だった。
「はぁぁ、だめぇ、あたし我慢できない。リンドウだけじゃ全然欲求不満になっちゃうから・・・ねぇ?」
酔っ払ったスミカはコウタたちに目を向けた。
「Σひっ!?」
「ななななななんだ?ふふふふるえがとまらん!」
「すす、スキあらば全員撤退を・・・」
「逃げたら倍のおもてなしをしてあげるわぁ・・・」
『つんだぁぁぁぁ!!!これ確実につんだーー!!』
もはや逃げられるすべはない。
「あたしのことはぁ、スミカ様とお呼びィ!!」
「う、うわあああああああああああああああああああ!!!」
「い、いやあああああああああああああああああああ!!!」
「・・・これは一体どういうことなんだ?」
「やはり新型・・・いや、スミカ君自体が面白いね」
様子を見に来たツバキは驚愕通り越してあきれ、サカキは面白そうな顔で見ている。
視線の先には
「くか~、すぴ~・・・にへへ」
期限よさそうにお肌がつやつやして寝ているスミカと、
『ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ(無限ループ)』
部屋の隅っこでネガティブゾーン内でうずくまっているゴッドイーター+αたちが何度も謝っていた。
こうしてこの極東支部内で、新たな条約が生まれた。
『スミカ=グレンにお酒を飲ませるな』と。