GOD EATER ~RED・GODDESS~ (真王)
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まずはアナグラと仲良く・・・
あいさつまわり
スミカの容態は赤毛であほ毛が飛び出ており、後ろに黄色く大きいリボンでポニーテールにしている。
スタイル抜群でフェンリルから支給された深い赤に染められた軍服を身に纏っている。
案内表示が終点を告げたのは、適合テスト前にいたエントランスだった。
丸くて比較的広い空間は、いくつものパイプやコードが入り組んでおり、やや無骨な印象を与える。
隅に邪魔にならないように置かれたソファ。
天井にグルリと囲むように設置された電光掲示板には、次々と文字が走る。
中央のスペースにはカウンターのような場所があり、受け付けらしき女性がいた。
そのカウンターの両脇には、緩やかな弧を描いた階段があり、上りきった先には大人数が座れるソファと広いテーブル…更に、いくつもの円形を組み合わせたような形のパソコン、通称『ターミナル』と呼ばれる機械が四つ並び、その間には大きなゲートがあった。
とりあえず適当に座って待っていようと思ったスミカは、男の子が一人、すぐ横のソファに座っていることに気がつく。
オレンジと黒のツートンカラーで統一されたボトムスと靴。シャツには、蜘蛛の巣の模様がプリントされている。
背中には蜘蛛のトライバルマークがあしらわれ、被っている帽子やマフラーはストライプ柄で揃えられている。
(あの服…確か外部居住区で人気のブランドだったっけ…同い年…いや、15くらいかな?)
そんな思考を巡らしながら自分もソファに腰掛けると、その男の子が話し掛けてきた。
「ねぇ、ガム食べる?」
スミカが「あ、うん」と言ってガムを貰おうとする前に、少年がすぐに訂正した。
「あ、切れてた。今食べてるので最後だったみたい。ゴメンゴメン」
「あ、そう」
スミカはそう答えると少しの沈黙が訪れる。それを先に破ったのは少年の方だった。
「あんたも適合者なの?」
「まあね」
スミカが頷くと、少年は彼をジロジロと見た。
「俺と同じか少し年上っぽいけど…でもまあ、一瞬とはいえ俺の方が先輩ってことで!」
無邪気な顔でそんなことを言う少年に、自然とスミカも笑顔になる。
「俺、藤木コウタっていうんだ。よろしくぅ!」
「私、スミカ。よろしく、コウタくん」
互いの自己紹介が終わったとき、ハイヒールの鳴る音が近づいてきた。
音のする方へ顔を向けると、見る者を圧倒するような真っ白い服に身を包んだ女性がこちらへやってくる。
多分上司…それも厳しいタイプのだと悟ったスミカはソファから立ち上がる。
やがてその女性は自分達の前で足を止めるとまだ座ったままのコウタに顔を向けた。
「立て」
「へ?」
「立てと言っている、立たんか!」
そう言われてコウタは素早く立ち上がり姿勢を正す。
「時間がないので手短に話す。私の名は『雨宮ツバキ』…お前達の教練担当者だ」
ツバキと名乗った女性は、凛とした声で無駄を省いた説明を始める。
「今後の予定はメディカルチェックを受けた後、基礎体力の強化、戦術理論の習得、各種兵装の扱いなどのカリキュラムをこなしてもらう。今までは守られる側だったかも知れんが、これからは守る側だ…つまらないことで死にたくなければ私の命令にはすべてYESで答えろ、いいな?」
「はい!」
「分かったら返事をしろ!」
「はぃっ!!」
またもやコウタが怒られ、若干恐怖の入り混じった返事をする。
(この先大丈夫かな?)
とスミカは思う。一通りの説明が終わったところで、ツバキが手に持っていたファイルを確認した。
「まずはスミカ=グレン、お前からだ!榊博士の研究室に一五○○までに集まるように…それまでこの支部を見回っておけ。今日からお前達が世話になる、通称『アナグラ』だ。挨拶の一つでもしておくように」
「はい!」
するとツバキの後ろから声がした。
「あ、ツバキさん!ちょうどよかった!ミッションの報告書の件で話が…」
そう言ったのは赤いジャケットに白いチノパンの二十歳くらいの男性だった。
隣には青いジャケットを着た銀髪の勇猛そうな男性と、緑のワンピースを着た薄桃色の髪の女の子もいる。
「ああ、お前達か…ちょうどよかった。今日から極東支部に配属になった新人を二人紹介する」
「新人ですか!じゃあ名乗るときは自分から!俺は第二部隊、防衛班班長の大森タツミだ。よろしくな!」
爽やか、かつ快活な声でタツミは自己紹介する。
「俺はブレンダン・バーデル。同じく第二部隊に所属している。頼りにしてるぞ」
と、ブレンダンは挨拶する。低くてしっかりしている声は、逆にいざという時本当に頼りになりそうなイメージを与える。
「あの、わたし台場カノンっていいますっ!お菓子作ったりするのが好きなので、お二人にも今度作ってあげますね」
カノンは可愛らしい挨拶で二人に(この時だけは)いい印象を与えた。
「本日付けで入隊となりました、スミカ=グレンです。皆さんに少しでも早く追いつくために一生懸命頑張ります」
「おう!頼むぜ。新戦力はいつでも大歓迎だ」
スミカの挨拶にタツミが答える。本当に気さくな人なんだな、とスミカは思った。
「俺、藤木コウタ!よろしくお願いしまっす!」
「フ、明るくて元気なやつだな。今時珍しい」
ブレンダンは穏やかな表情でコウタを見る。
確かに今、人類は絶滅の危機に直面している。死ぬ可能性が高いこの世界で、これだけ明るい人間は逆に珍しいだろう。
「まあとにかく死ぬなよ?絶対生き残るんだ!いいな?」
『ハイ!』
二人が返事をしたのを見てツバキが口を開く。
「よし。…ところで書類に関する話とはなんだ?」
「ああ、そうでした!今日のアラガミとの戦闘で破損した第4外壁のことなんですけど……」
なんだか難しい話になってきたのでスミカとコウタはその場を離れた。
「はぁ〜…怖かった〜…」
ツバキから離れた場所でうなだれるコウタ。
「大丈夫?」
「まあね。でもよかったよ〜…厳しい人ばかりってわけじゃないみたいだし」
「う~ん、タツミさん達のことか…確かにね」
「でもさ〜…やっぱり後輩いびりとかする先輩もいると思うんだよな〜」
「あれ?お前ら見ない顔だな?」
『え?』
二人が振り返ると、帽子を斜めに被ってパーカーを着た少年と、首に直接ネクタイを巻いた金髪の青年、そして胸元を大胆に露出させ、眼帯を装着した銀髪の女性の三人が立っていた。
「お前ら新人か?」
金髪の青年が質問したのでスミカが答える。
「本日付けで入隊した、スミカ=グレンです」
「俺、藤木コウタ!よろしく!」
二人が挨拶したところで、コウタの挨拶を聞いた帽子の少年が一歩前に出てコウタと向き合う。
「お前先輩に対する口の聞き方がなってねぇな」
「え?」
「先輩に対して今の口の聞き方が馴れ馴れし過ぎるっつってんだよ!」
「やめなさい…シュン。あなた本当は後輩ができて嬉しいんでしょう?素直じゃないわね…」
横から入ったのは眼帯の女性だった。シュンと呼ばれた少年は苛立たしげに女性を睨む。
「うるせぇっ!…ったく、まあいいや。俺は第三部隊所属の小川シュンだ。ま、せいぜい死なねーように気をつけな!」
そう言ってシュンは行ってしまった。
「まったく、生意気なのはお前も同じだろっての…。同じく第三部隊所属のカレル・シュナイダーだ。よろしくな…言っておくが、俺より活躍するのはやめろよ?配給の低い任務しか回ってこなくなるからな」
そう言い残しカレルも行ってしまった。
「な…なんなんだあの二人…」
二人…特にコウタの方は唖然とした表情で固まっていた。
「気にしないで。あの二人はいつものことよ…私はジーナ・ディキンソンよ。ジーナってよんでちょうだい」
「は、ハイ」
大人の女性らしい色っぽい声にコウタは思わず緊張してしまう。
「ツンデレと金欲ですね」
「それあの二人の前で言ってはだめよ?」
ジーナがスミカに注意をする。
「あ、あの…ジーナさん…」
「何?」
コウタの口調は、さっきまで使ってなかった敬語まで使うようになった。
「失礼なこと聞きますけど…あの…その…どうしてそんなに胸を開いてるんですか…?」
「ああ、これね…私なりの価値観ってやつかしら…戦っているときはこの世に私とアラガミだけ…私はアラガミと命で向き合っているだけ…その間を隔てるものは私には必要ないのよ…」
ジーナの独特の感性に、コウタはまたも呆気に取られていた。
「開放感ってやつですか?」
「あらわかる?」
なぜかスミカとジーナが意気投合。
「あ…二人共行っちゃったから、ミッションの報告私がしなくちゃいけないのね…悪いけどもう行かなくちゃ。じゃあ、あなたたちも頑張ってね」
そう言い残しジーナは立ち去って行く。
「…スミカ、そろそろ時間じゃないか?」
「あ、そうだね。じゃあ行ってくるよ(一五○○までに集合だったね…少し急いだ方がいいかな?)」
時間を確認したスミカは足早に、榊博士の研究室へと向かった。