一般に「遅れた封建時代」だったと考えられている江戸時代には、実は高度な市場経済システムが成立しており、さまざまな業種で多様な市場競争が繰り広げられていた事実を明らかにすることにある。
もちろん、ちょっとした工夫や他人にはないアイデアで勝負するといった活動も、この競争に含まれる。
現代の感覚では競争制限と既得権益の擁護の権化だと思われがちな問屋株仲間が、競争のルール(市場取引の信頼性)を管理していた事実も示す。
当時の株式上場やM&Aといったものに焦点を当てる。
プロローグー市場経済システムと競争が経済発展をもたらした
1 なぜ、江戸時代なのか?
江戸時代の経済システムへの問題意識
三つの切り口
2 発達していた市場経済システム
- 江戸時代への誤解
- 市場経済システムの前提
- 誤解を解くにあたっての視点―歴史的な視点の再検討
- 江戸時代の企業価値―永続性の重視
- 江戸時代から続く「DNA」
第1章 江戸時代の経済ダイナミズム―市場経済システムの高度な発達
1 有効需要の創造システム
- なぜ市場経済が発展したのか
- 水運網の整備
- 公儀直轄地の機能分担
2 米経済から貨幣経済ヘ
- 市場の意味―市場を創る
- 米本位経済VS貨幣経済―金・銀・銭による貨幣経済
- 変動相場制と市中金利― 両替と為替
- 武士と町人の逆転―米本位経済から貨幣経済へ
3 信用と情報の時代
- 市場取引での信用
- 信用と預金
- 相場と情報
4 経済発展の条件
- 大航海時代の日本
- 経済システムの成立条件―地域性・情報の非対称性の調整
第2章
1 誤解された江戸時代の企業
- 商人の移り変わり
- 変化した官民関係
2 問屋株仲間の実際
- 競争と問屋株仲間
- 総合政策としての諸問屋再興
3市場競争の姿
- 競争の性格は同じだった
- 菱垣廻船VS樽廻船
- 紅花の争奪戦
- 新興企業VS既存企業―新たな市場開拓への動き
第3章 競争を勝ち抜くために―競争を通じた企業の発展と継続
1 現在に通じる経営手法
2 江戸時代の株式上場
- 江戸時代の市場デビュー
- 株の譲渡は「公選」だった
- 「弘メ」で完成した株の譲渡
3 江戸時代はM&Aの時代
- M&Aとしての株の譲渡
- 業界が主導したM&A
- 多角化のためのM&A
- 異業種から両替への進出のためのM&A
- 提携の実際
4 競争と協調、事業永続のためのCSRの発達
- 永続性を確保するための社会的責任
- 江戸時代のCSRとは
第4章 官と民の付き合い方
1 社会の安定をもたらした地域・業界の自治的機能
- 公儀永続のために打たれた手
2 「官と官」・「官と民」の競争
- 大名同士の競争
- 官僚組織における競争・教育における競争
- 官と民との競争
3 都市の持続的発展のための経営システム
- 江戸の都市経営と上水事業
- 上水経営のガパナンス
- 独立採算と受益者負担
- 水道経営の連続と非連続
エピローグ 競争と公のバランス
1 江戸時代と現代
- 戦前までの連続性
- 実体経済に基づいた「公」
- 統制経済までの道のり
- 国家総動員体制は社会主義だった?
- 戦後の日本も市場経済システムの国ではなかった
2 市場経済システムの見直しに向けて
- 「完璧な経済システム」はあり得ない
- 資本主義の修正
- 価値観が多様でないと市場は成立しない
- 持続可能で競争のはたらく経済システム
感想
M&Aも株式上場もすでに江戸時代に存在していたという驚き。世界最古級の資本主義を独自に日本はつくりあげていて、いまもその資本主義は続いている。
まけるな日本式、という感じでしょうか。
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