アレ待チろまん

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『電気泳動で脳を透明化する技術』が凄い!Natureに出た衝撃の論文に世界中の科学者が沸く

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2013年4月11日のNature誌に発表された画期的な論文を見て世界中の研究者が驚いています。

丸ごとの脳を透明化出来たと言うこの研究内容、いったいなにが凄いのでしょうか。簡単にご説明致します。


透明化した脳で見れる神経回路の美しさ!


「脳って白くてピンクで、透明化しても意味有るの?」と思われるかもしれません。近年の研究によって脳内の神経細胞に色を付ける技術が飛躍的に進みました。この論文では一部の神経細胞にGFPが発現した脳を透明化しています。

まずは以下の動画をご覧下さい。脳内に存在する精緻な神経回路の美しさに息を呑むと思います。

最先端の科学研究はこのように神経細胞を見ることを可能にしました。では研究グループはどうやって脳を透明化したのでしょう?


脳を透明化する手法『CLARITY』


筆者らは生物系ならどの研究室にでもある実験機器を使って脳の透明化を成し遂げました。使ったのはSDS-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)という実験手法です*1

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1.脳をアクリルアミドに浸す (4℃)
2.アクリルアミドを重合させる (37℃)
3.電圧をかけて脂質を取り除く (タンパク質は残る)

非常に簡単かつ誰でも出来る手法、これはまさにコロンブスの卵です。


脳の透明化は脳神経研究の進展に重要だ!


脳を可視化する手法はこれまでにも開発されてきました。理化学研究所のグループから『脳を透明化する手法Scale』と言う研究成果が発表されて話題になりました*2。CLARITYは先行文献の問題点を改善し、さらに実験上の大きなメリットを与えました。

CLARITYの長所
1.手法が簡便である
2.脳の構造を大きく変化させない
3.そのまま免疫染色が可能

研究の意義
この論文では、実際に人の脳組織にCLARITYを応用しています。病理学的・組織学的研究に大きなインパクトを与えるでしょう。また他の組織も同様の手法により透明化できれば、発生学の研究も飛躍的に進むと予想されます。


CLARITYを開発した研究グループはアメリカの国家プロジェクトに参加する


つい先日アメリカが『Brain Activity Map Project (脳活動地図計画)』と言う大型予算を費やした大規模科学プロジェクトを発表したことが話題になりました。CLARITYを開発したKarl Deisseroth教授は既に声をかけられています*3。この研究グループは「神経活動を光で制御する技術」の先駆者として非常に有名です*4

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Professor Karl Deisseroth


終わりに
『脳を透明化して神経回路を可視化し、神経細胞を光で刺激して神経回路を研究する』この研究グループは今後どのような仕事を成し遂げるのでしょうか。非常に楽しみです。


PS.NatureのRights&Permissionsの手続きはしてます

PS2.脳が透明な動物が出来たって話ではないです。念のために書いておく。