京都府医大:幹細胞移植、動物実験経ず臨床

毎日新聞 2013年04月11日 02時30分

 京都府立医大のチームが2004年2月、有効性・安全性を確認する動物実験を経ずに、急性心筋梗塞(こうそく)の患者の幹細胞を患者自身に移植する臨床試験をした疑いがあることが分かった。責任者の松原弘明・元教授(56)=2月末に辞職=が、論文不正疑惑に関する大学の調査委員会に対して経過を証言した。松原元教授は慢性心筋梗塞での動物実験を参考にしたと主張したが、急性と慢性とは別の病態で、調査委は報告書で「医療倫理上、重大な問題が含まれている可能性がある」と指摘している。【八田浩輔】

 問題の臨床試験は、学内の倫理委員会の審査を経て04年2月14日に行われたとされる。急性心筋梗塞になった40代(当時)の男性患者の血液から、血管のもとになる幹細胞を採取。心臓の血管を再生するため、足からカテーテルを通して冠動脈に直接注入した。チームは当日に記者会見し、「世界初」の臨床試験であることと、事前にブタを使った実験で効果を確かめたと説明。毎日新聞など各紙が報道した。男性は約2週間後に退院したという。

 しかし11年、大学などに外部から「松原教授がかかわった複数の論文で改ざんの疑いがある」との趣旨の指摘があり、大学は調査委を設けて調査していた。

 調査委の報告書によれば、松原元教授が臨床試験の「参考にした」とする動物実験の論文は、関西医大に在籍していた02年に米専門誌に発表(04年に修正)していた。自身のチームが、慢性の心筋梗塞のブタに血液中の幹細胞を移植して心機能が改善するかを検討した内容だった。

 調査委は、この論文について、血管の断面図を写した画像に血管が増えたように見せる「改ざんがあった」と判定した。

 松原元教授は調査委の聴取に対し、「急性」では動物実験をしていなかったことを認め、「本来なら動物実験をすべきであったかもしれないが、安全性には問題ないであろうと判断した」と弁明したとされる。

 07年に日本循環器学会誌に掲載された論文によると、チームは計18人に同様の臨床試験を実施。「効果があり、問題はなかった」と結論付けている。

 松原元教授を巡っては、元教授のチームが発表した降圧剤「バルサルタン」の効果に関する論文3本が、「重大な問題がある」として掲載誌から撤回された問題でも大学側が調査中だ。

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