県都の課題:青森市長選/中 中心市街地活性化 巨額投資も見通し甘く /青森
毎日新聞 2013年04月04日 地方版
◇民間は改装経て、震災前の水準に
「目に見えて客が減っているのに、店舗も客層もバラバラ。尻に火が付いた状態だ」。青森市新町の再開発ビル「アウガ」の生鮮市場で鮮魚店を経営する田中一徳さん(54)には危機感が強い。
01年にオープンしたアウガは、駅前再開発を進める青森市が中心市街地活性化の拠点として建設。生鮮市場やアパレルなどの商業施設と、図書館などの公共施設が同居する全国でも珍しい複合ビルとして注目を集めた。
しかし、運営する市の第三セクター「青森駅前再開発ビル」が経営に失敗。来館者数は06年度の636万人をピークに10年度は515万人と121万人減った。過大な売り上げ目標や景気低迷が影響し、毎年数千万円の赤字を出してきた。09年には純資産が230万円と債務超過寸前になったことも発覚し、経営陣交代につながった。市の負担額は建設費で約170億円、同社への貸し付けで約24億円だ。
その後、同社は地権者へ支払う賃料値下げ(年間約3000万円)や経費削減(同約4000万円)を進め、12年度末に事実上初めての黒字となる見通し。額は600万程度だが、11年に大手百貨店から転任した同社の木村勝治常務(69)は「ひどい経営状況だったが、社としてうみを出した」と振り返る。
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アウガ低迷の背景には市の見通しの甘さもある。07年から始まった第1期中心市街地活性化基本計画では、アウガ以外にも47億円を投じて15事業を実施し、歩行者通行量を5年間で05年時の約1・3倍の7万6000人、観光施設の来客数を約1・8倍の約130万人とする目標を掲げた。しかし実績は通行量4万3000人、来客数110万人と遠く及ばず、市商店街振興課も「見積もりが過大だった」と認める。
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一方、民間では成果を出す施設もある。3月に6年ぶりに改装したJR青森駅ビルの「ラビナ」は、若い女性をターゲットに2、3階のファッションフロアに8店舗を新規出店。市内初出店の「スターバックスコーヒー」の初日には最大約200人が行列を作った。来店者数も震災前の水準に戻りつつあり、空き区画もすべて埋まりそうだ。運営するJR東日本青森商業開発の藤間勉営業部長(42)は「何も変えず『空き店舗に入って』と言っても厳しい。フロアの明確な方向性を出すことが重要」と話す。