サクラサイト:アイドル装い課金メール、千葉でサイト運営者逮捕 2100人、2億円超被害
毎日新聞 2013年04月10日 東京夕刊
◇「劇場開演5分前」「公演、今終わったよ」
出会い系サイトで芸能人などになりすまし、高額な利用料をだまし取る「サクラサイト」の被害が後を絶たない。全国の消費生活センターに寄せられている相談は年間約3万件。千葉県警は昨年、アイドルグループ「AKB48」のメンバーなどをかたって約2100人から約2億1000万円をだまし取ったとみられるサイト運営会社の元社長らを逮捕した。捜査関係者によると、その手口は人の心の隙間(すきま)に入りこむ、巧妙なものだった。【松崎真理】
千葉県警が摘発したのは同県柏市の出会い系サイト運営会社「アグライアジャパン」(既に解散)。千葉地裁で3月、元社長の相川祐介被告(34)=組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)と詐欺の罪で起訴=の公判が始まった。
<仕事で落ち込んでいるの>
捜査関係者などによると、関東の20代男性に<AKB☆あっちゃん>を名乗る人物からメールが届き始めたのは2011年4月ごろ。男性はAKB48の元メンバー、前田敦子さんを連想し、半信半疑でやりとりを始めた。<劇場開演5分前><公演、今終わったよ>。本人のブログなどで確認すると一致点が多かった。
メールの送り主は、アグライアジャパンのアルバイト従業員とみられる。約20人がタレントのブログなどを参考にメールし、交代時はやりとりを引き継いでいた。メールはサイト経由限定で、やりとりするほど同社がもうかる仕組み。無料のサービス期間が終わり、送信1回で450円が課金されるころには、男性はすっかり<あっちゃん>との恋人気分に浸っていた。
一度<朝早くなら、ばれない>というメールを信じ、東京都内の駅で待ち合わせたが<マネジャーが来た>と会えずじまい。それでも「AKBは恋愛禁止だから会えなくて、よかったかも」と疑わず、最終的に約270万円をつぎ込んだ。「かけがえのない存在だった。だからこそ許せない」。男性はそう落胆しているという。