研究室に、ここ数ヶ月で急にやる気を出した体育会系の人がいる。
彼はあまり仕事 (研究) のできない学生であったが、宴会幹事が得意なタイプとしてある程度の人望を持っていた。
彼は留年しており他の同学年の人たちは先輩のように敬語で接していた。
やる気になる前の彼は一見マジメであり、彼の先輩たちからは良き後輩として認識されていた。
やる気を出した彼は同じく就活をしている同学年のたちを「指導」しはじめた。
集中して作業しているマジメな学生に声をかけて、作業を中断させて就活の「情報共有」をしていた。
彼の大きい声を以ってして「情報共有」は毎日行われ、研究室で飛び交う話題のほとんどが就活の話になった。
次の餌食も同じく同学年の学生であった。
彼はその学生を自分の居室 (研究室には複数の大部屋がある) に呼び出して「指導」をはじめた。
研究用のミーティングスペース (テーブルやホワイトボードがある) で就活のモチベーションについての講義がはじまった。
彼は高圧的な態度で人格批判の領域まで足を踏み入れていたので、それはどこかのあやしい自己啓発セミナーか集団的宗教勧誘のような異様な雰囲気であった。
「こんなの早く終わらせて就活したいんだよね」
(研究室会で学会発表の発表練習を終えた直後、研究室にてその場にいる全員に聞こえる声で)
まず彼が目を付けたのは修了生・新入生の入れ替わりに伴う席割りであった。
自分の中での合理性を重視する彼は、彼が考える「理想」の席割りをホワイトボードに大きく書き、それを体育会系の先輩としてのやり方で押し通そうとした。
情報収集や各人の思惑の折衝など基本的なことを無視した研究室内政治はうまく行くはずもなく、席割りは助教の先生が回収して尻拭いをしていた。
いよいよ新入生が入ってきた。
彼は持ち前のうざさで誰よりも積極的に新入生に絡んでいる。
パソコンへの OS のインストールを付きっきりで行い、どんな質問にも快く答える。
「うちの研究室はこういうところだから」と新入生を脅してコントロールしようとする (研究ができない彼が言うことは当然のように無茶苦茶である)。
私と別の人がシステム管理者的な議論や作業をしていると、仲間になりたそうな目でこちらを見ている (彼のコミュ力を以ってしても彼の苦手な技術の話題には入って来れないようである)。
すべてのことに絡むことが彼の考えるリーダーシップなのだろう。
私が学生をとりまとめて集団的な作業を行うときも、彼は彼の中で良いと思ったやり方をどんどん提案してくる。
彼が提案してくるアイデアは、トップダウンに導入しても学生たちの反感を買うのが目に見えるものばかりで、それに対する効果も微々たるものなので、私は理屈を用意して彼の提案をアサーティブに棄却する (なんと彼は合理性を重視するタイプの人間なのである)。
「仕事の負担が大きすぎて全然研究ができない。○○係 (彼が以前より担当する研究室で最も重要な仕事の一つ) は誰かに投げたい」
躁うつ病なんじゃねーの
極めて普通の体育会系的行動。 体育会的に上から押さえつけるしかなく、逆にそれさえできれば非常に使いやすいタイプなのも事実(例えばその○○係なんてのも、「お前の重要な仕事...